最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
「お……おお!そうでしたな……。申し訳ありません、コウ様……!邪神の説明でしたな……!」
俺の魂の叫びに、聖王様が今、思い出したかの様に慌てるが……このおじいちゃんホントに大丈夫??俺達一応その事聞くために聖王騎士協会に来たのに、あやうく本筋がスルーされるところだったよ……。
俺が若干ジト目で聖王様を睨むと、聖王様は焦った様子で冷や汗をかきながら、邪神の事について説明してくれた。
ほんと……この説明聞くまでが、やたら長かったなぁ……。
◆
んで、邪神とは何者か、なぜ聖王騎士協会が邪神復活を阻止するためにシスタさんを狙ったのかを、ようやく説明して貰った訳なのだが……なんと言うか、壮大な話だった。
先代国王様が邪神アズライールに乗っ取られて、あわやこの国がやばかった事。
邪神が混沌を望むがゆえに、マフィアとか奴隷とかが盛んになっちゃった事。
そして……その邪神を封じる為に、俺の母親……先代
でも邪神はその魂の一部を、先代国王の親族に移していたので、やむを得ずその一族を皆殺しにするしかなかった事。
そして……シスタさんは、その一族の最後の生き残りで、邪神が取りついている可能性が高い事……。
そんな壮大な話を一緒に聞いたティファ達は、この国の闇を知って……呆然としていた。
そして俺自身も、思った以上に大変な話だったので、何ともやるせない気持ちになっていた。
聖王騎士団がなんでシスタさんを狙ったのかは、一応は理解できた。
できたのだが……なんかこう……もっと上手いやり方はなかったのかな?っと思ってしまう。
んじゃお前なんかいい方法提示してみろよ、って言われた俺だって方法は無い……訳じゃ無いんだな!!これが!!
てゆーか、この話早く黒騎士に言ってくれてれば、方法はあったのに!!
んで、その方法だけど……俺は以前、魔族に取りつかれてたエイシャのお兄さん……フェネクス王子を、解呪魔法でどうにかしたことがあるのだ!!
だから、シスタさんに解析魔法で邪神が取りついているかを確認できれば、もしかしたら解呪魔法で邪神の魂だけ剥がすことが出来たかもしれない!!てゆーか多分できると思う!!
「コウ様……これが本当の我々の罪です……」
改めて説明すると、自分達にもダメージが大きいのか……聖王様と騎士さんが、疲れた様な顔をして項垂れている。
俺はそんな二人にちょっと同情しつつ口を開いた。
「聖王様……お話してくれてありがとうございます。お陰で……聖王様達の苦労が解りました………。でも………」
「ええ……分かっております。どんな理由があろうとも、私達が罪もない人達を虐殺した事に変わりはありません……」
聖王様はそう言うと、疲れたような顔で笑って続ける。
「我々はとんでもない極悪人です。……コウ様が言われた、犯罪者集団というのも……はは、言い得て妙ですな。しかし……おかしなものですなぁ……。こうして改めて自分たちの罪を、貴女様に懺悔出来て……私は少しだけ、胸が軽くなった気がするのです」
「……聖王様………」
「ははは。先ほども言いましたが、この老いぼれにもまだできる事がある………そう思えるのです……。はは、地獄に堕ちるには、まだ少し早いという事ですかな?」
力なく笑う聖王様だが……その目はまだ死んではいない気がする。そんな聖王様を見て、騎士さんも大きく頷くのだ。
そんな二人を見て俺は……今のこの二人になら、頼っても大丈夫かな?……と思い、意を決して口を開いた。
「では……お二人にお願いがあるんです!!」
そんな俺の言葉に、聖王様は驚き目を見開く。
「お願い……ですか?」
「はい!!私を……シスタさんと合わせて下さい!!」
◆
「アナスタシア……。可哀想なアナスタシア………」
誰かの声が聞こえる。
それは父の声の様にも聞こえるし、母の様にも聞こえるし………私が全く知らない声にも聞こえる。
「お前はなんて可哀想なんだ………。身勝手な連中に命を狙われて追い回されて、父を殺され、母を殺され………。なのにまだ奴らはお前の命を狙う。……もう気付いているんだろう?アナスタシア………。このままでは一生、お前は奴らに命を狙われ……そして何れ殺されてしまう……!……お前の両親や……本当の家族達の様に……!」
声は私の耳元でそう囁くと、優しく……優しく私に語りかける。
「だが大丈夫だ……。後は私に任せておけ……。絶望しかない、お前の人生を……私が壊してやろう。お前に降りかかる火の粉は……私が払いのけてやろう……。お前はただ、夢の中で、深く深く眠っていればいい……。全て、私に任せて、絶望しかない現世を切り捨て、希望の夢の中で眠っておけばいいのだよ……」
………夢の世界………。
そこには父も母もいるのだろうか………?
「ああ……。お前が望むものは全て叶う幸せな世界だ。だから………」
……確かにそれもいいかもしれない。
だって両親が居ない世界に未練なんて…………………………めっちゃある!!!
「………………は?」
確かに大好きな両親が死んじゃったのはショックすぎる!!……この際両親が本当の両親じゃ無かったなんて話はもうどうでもいいのだ!!
だって本当の両親なんて知らないし、私を育ててくれたのは間違いなくお父様達だからだ!!
でも!!例え両親が死んでしまったからって……私が全てに絶望するかと言うと、正直そうではない!!
なんか冷たい奴だなぁって思われるかもしれないけど、私の世界は両親だけじゃないからだ!!
「……やめろ……」
ずっと夢だった、フォストニア学園の教師になれて、まだまだこれからだ!!
私には親友のウルカだっているし、なにより………コウちゃん!!!せっかく学園でライブしてくれたのに、私はコウちゃんのライブを半分ぐらいしか見れて無いのだ!!……てゆーかあれも貴方のせいなんじゃない!!?あの時ボーっとしちゃったの!!!
「……やめろと言っている……!」
でもコウちゃんは来年のセントラルステージで復活してくれるって言ってたし、それを見届けるまでは……私は現実に絶望なんて出来ない!!
それに……ウルカに聞いた、半年後の……男性アイドルによるセントラルステージも、ちょっぴり楽しみだったりするし………。
「もう……考えるな!!現実に……絶望……しろぉ!!」
それにそれに!!私がピンチになったら何時も駆けつけてくれる……黒騎士様!!
めっちゃ……めっちゃ不謹慎な事言うと、仕事終わりで襲われた時……もしかしたら、また黒騎士様にお会いできるかも!!なんて思っちゃってたのもちょっぴり事実だ!!
だから正直、夜帰る時は……ちょっとドキドキしてたのも本音だったりする!!てゆーか襲われて、黒騎士様にまた助けて貰う妄想を結構してたりもしちゃってた!!!
「お……おのれぇ……
誰それ!!?
まあともかく……やっぱり私は現実に絶望なんてしていないので、悪いけど貴方の出番は無いです!!
ですのでお帰り願います!!
「お……おおおぉ!?……くそ…!!あれだけの事があったのに……!!まだ絶望が足りないのか!?……しかしアナスタシアよぉ……!!覚えておけ「いーーえ!!覚えません!!てゆーか」…!!」
私は……!!
「私はシスタ!!!シスタ・フランソワ!!!フォストニア学園の学園長の娘……シスタ・フランソワよ!!!」
「あああああああ!!!!アナスタシぁあああ!!!!」
よくわからない奴の断末魔を耳にしながら、私は意識が覚醒していくのを感じた……!!
てゆーか、私はアナスタシアじゃ無いって言ってんだろ!!!