最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第205話 聖王騎士協会での攻防(ティファ視点)

 コウ達が王城へ行くため聖王協会を後にして程なくして、突然周りの騎士達が胸を押さえて蹲ってしまって……そして、おかしくなってしまった。

 

「あぎぎ!?オレは……マチガッてイなーーーーい!!」

「あはははっは!!全部周りが悪いのよ!!?私は……私はぁああ!!レグロス様ぁあああ!!!」

「ふふ……ふふふふ。そうだ……私は……正しいんだ!!ウリィィイイイイイ!!」

 

 口々に可笑しなことを叫び始めた後、突然武器を取って辺りを破壊し始めたのだ!!

 

「テぃ……ティファ……これって……なんか不味いんじゃない……?普通じゃないよ……ね?」

 

 アンナが私の服の袖を引っ張りながら、おずおずと口にするが……アンナの言う通り、どう見ても聖王騎士達は普通の状態じゃない。

 

 ここは……一旦この場から逃げるべきか……。

 

 私がそう思案していると、何かを叫びながら、フラフラと歩いている金髪の騎士と目が合った。……首に掛かった豪華なペンダントが、彼を最上位の騎士だと証明している。

 

「ふふふふ。貴女もそう思いますよね??ねぇ……私は……正しいいいぃいイイイイ!!!」

 

 そんな最上位に位置する筈の聖騎士は、訳の分からない事を叫びながら、あろうことか剣を振り上げ私達に向かって振り下ろそうとして………突然地面から生えてきた赤い茨に拘束された!

 

「大丈夫か!?お嬢さんがた!!」

 

 突然の出来事に、何も反応できずに目を白黒させていると……私達の背後から、赤髪の騎士が息を切らせながら現れたのだ。

 

 咄嗟に身構える私たちだが、どうやら赤髪の騎士は正気を失ってはおらず、目の焦点もあっており……私達を守るように、正気を失った他の騎士達の前に立ちはだかったのだ。

 

「俺の名はバルフレッド!の連中と違って、俺は一応正気を保ってるみたいだ!!!……他の連中は呪いの様なものでおかしくなっちまったみたいだが、俺ぁ呪いの類が効かないんでね!!なにせ守護霊が女神アフロディーテだからなぁ!!」

 

 そう言うと、バルフレッドは床を強く殴る。

 すると更に赤い茨が増え、周りの騎士達を更に強く拘束するのだった。

 

「正気を失っても、連中強さだけは変わらないみたいだが………冷静な判断力は失ってるみたいでな!こうして不意の拘束には対応しきれないみたいだ!!」

 

 そうして周りの騎士達を茨で雁字搦めにすると、バルフレッドは私達に手を差し出して言った。

 

「とりあえず此処の連中は抑えた!!急いで協会を出るぞ!!他にも正気を失った連中が大勢いるからな!!全員なんて相手にしてらんねぇ!!」

「は……はい!皆……行きましょう!」

 

 私は縮こまっている皆を催促して、バルフレッドの手を取る。

 

 バルフレッドは私達が動けそうなのを確認して、大きく頷くと、私の手を引いて駆け出そうとして……

 

「ぐわはははっはああああ!!!楽しいなぁあああ!!なぁ!?モスマンオーーーーー!!!!」

 

 マンモスの様な怪物に跨った、大剣を持った巨体な男が、壁を破って部屋に侵入してきたのだ!!

 

「ガンドロフの旦那!!?あんた程の騎士までおかしくなっちまったのかよ!?!くそ!!ガンドロフの旦那も、その守護霊も……デカすぎて茨で拘束なんて出来ねぇ!!おいお嬢さんがた!!ここはともかく……!!」

「ぐわははははああはははあはははは!!!?どうしたバルフレッドォォォ!??!?!逃げるな逃げるなぁあああ!!あっそぼうぞぉおおおお!!?」

 

 ガンドロフと呼ばれた大柄の騎士は、跨っていたマンモスから飛び立つと、そのまま勢いよくバルフレッドに向かって大剣を振り下ろす!!

 バルフレッドはその斬撃を慌てて飛びのいて避けるが……後ろにいた私達はそうはいかない。

 

 ガンドロフの斬撃の衝撃波で、私達は吹き飛ばされてしまう!!

 

「あ!!やべぇ!!お嬢さんがた!!」

 

 バルフレッドが慌てたような声を上げるがどうすることも出来ない。

 私達はそのまま壁に激突して……して…………ん??

 

 そのまま壁に激突するであろう私達だったが、何故かふわりと体が軽くなると……壁に激突することなく、その場に着地した。

 

 …………一体なぜ??

 

「うぐごおおおお!!?」

「モオォオオオオオ!!!!」

「うわぁ!!?な……なんだぁ!!!?」

 

 そんな疑問が頭をよぎった瞬間、ガンドロフ(と何故かバルフレッド)とその守護霊のマンモス……そして茨で拘束されていた他の騎士達は……突如協会内を襲った突風によって壁に激突し、そのまま壁を壊して外へと吹き飛ばされてしまった!!

 

 これは……!!

 

「はぁ……やれやれ。……大丈夫?ティファ、アンナ……それにナーサと……名前何だっけ?」

 

 そんな言葉と共に、教会の奥から……気だるげに、ソフィアがゆっくりこちらに歩いてくる。

 

「ソフィぃ!!!」

「ソフィ!?あんた!!なんでここに!!?」

「私はライラなんだけど!!?いい加減覚えなさいよ!!?」

 

 そんなソフィアにアンナ達は駆け寄っていく。

 ソフィアは私達を一瞥して無事を確認すると、浅く頷き口を開いた。

 

「皆無事だね?じゃあさっさと此処を出るよ?」

 

 それだけ言うと、ソフィアは踵を返してさっさと歩いだしてしまった。

 私達はそんなソフィアの後を、慌ててついて行くのであった……。

 

◆

 

「なに……これぇ……」

 

 何とか聖王協会から脱出した私達だが……そこで目に飛び込んで来た、街の現状にアンナが崩れ落ちる。

 

 何故なら……街は、あまりにも悲惨な事になっていたからだ。

 至る所で悲鳴が聞こえ、街からは目に見えるだけで相当数の煙が上がっている。

 

 暴走した聖王騎士達は、既にかなりの数が街に解き放たれていた様で……至る所で破壊活動を行っているのだ。

 ある者は逃げ惑う人達を執拗に追いかけ、後ろから剣で切り裂き……ある者は杖から炎を放出して、街を燃やしている。

 

 王都を守護する為の聖王騎士達は……今や王都を破壊する、テロリストへと成り下がっていた。

 

 そして何より……そんな聖王騎士達に呼応する様に、街の一般人達の中にも、いつの間にかおかしくなっている人たちがいて……騎士達に切り刻まれながら……笑い、叫び……ある者は騎士達と同じ様に、街に火を放ったりしている。

 

 私達はいつの間に地獄に迷い込んだのだろうか?

 

 現実逃避して、目を覆いたくなるような街の現状に、私は思考が停止しかけていた。

 

「何してるの?そこでボーっとしてたら、巻き込まれるよ?さっさとついて来て」

 

 呆然としている私達に、ソフィアは何時もと全く変わらない様子で急かしてくるが……ソフィアはこんな街の状態を見て、何も思わないのだろうか?

 

「あ……アンタ……。これ見て……何も思わないの!?よくいつも通りに出来るわね!!?」

 

 そんなソフィアにナーサが食って掛かるが……ソフィアはそんなナーサを、どこ吹く風と受け流すと口を開いた。

 

「慌てて取り乱せば満足?そんな下らない事考えてる暇があったら、自分の身を守る為に少しは動いて?私はコウを置いてまで君達を助けに来たんだから、余計な手間取らせないで」

 

 そう言うと、私達の返事を待たずにソフィアは歩き始める。

 

 そんなソフィアにナーサはまだ納得いっていない様に怒りを露にするが……そんなナーサとソフィアを見て、私は少しだけ冷静さを取り戻していた。

 

 そうだ……!ここで呆然としていても、何も始まらない!

 むしろ、ソフィアの言う通り、コウを置いてまでわざわざ私達を助けに来てくれたらしいソフィアに……これ以上手を煩わせるのも失礼だ!

 

 私は一度大きく深呼吸すると、まだ呆然としているアンナや、困惑しているライラ……そして怒ってソフィアに更に食って掛かろうとするナーサに言った。

 

「皆さん!!ソフィアの言う通りです!!ここで呆然としていても始まりません!!とりあえず、ここを離れて……どこか安全な場所……に……!!そうです!!学園に移動しましょう!!」

 

 わざと大きな声で皆を鼓舞すると、皆はそれぞれ違う反応を示しつつも……とりあえず納得してくれたのは、否定の言葉は唱えなかった。

 

 私はそれに頷くと、ソフィアに言う。

 

「ソフィア……!すみません!私達の護衛……よろしくお願いします!」

「………わかってるよ。……さ、行こうか?」

 

 こうして私達は、地獄と化している王都で、学園を目指して歩き始めたのである……。

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