最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
『めっちゃ失敗しちゃった!!邪神復活した!!俺封印されちゃう!!後はよろしく!!』
隣にいたフローラ様に受け止めて貰えなかったら、そのままバターン、っと地面に倒れていただろう。
「コウ様!?大丈夫ですか!?」
「だ……大丈夫です……。ありがとうございます……フローラ様……」
フローラ様の問いかけに、何とか答えながら……私はこの緊急事態に頭を悩ませていた。
◆
私は
といっても、結局は分身なので
元々
それが関係しているのかしていないのか分からないが……何故か、合体した時に分身である私の記憶が本体に引き継がれないのだ。
正直この仕様には本当に困っていて、分身したら私は
このせいで私がどんな事をしたのか本体が分からないので……私自身、滅多なことが出来ないのだ。だって突拍子もない事しちゃうと、後で本体がその事を問い詰められた時……分かんなくなっちゃって、周りから変な目で見られる可能性がある。
本体だって結局は私なのだから、変な目で見られるなんてごめんだしね?
だから分身した時は極力大人しくしていたのだが………今回はそうも言ってられない状況の様だ。だって……
もう!!本当になにやってんの!?
シスタさん助ける所か、邪神は復活して……自分は封印されちゃってんじゃん!!
なんて心の中で愚痴っても状況は変わらないので、私はとりあえずフローラ姫にお礼を言って立ち上がると、心配そうに私を見ているフローラ姫含む周りの人達に言った。
「皆さん……非常に言いにくいんですけど、邪神が「じゃしぃいいいんんん!!!!」うえぇ??」
私の言葉を遮るように、フローラ様の寝室の窓をブチ破いて、侵入してくる変質者!!その変質者の正体は……!!
「貴方は!!レグロス様!!?」
侍女の人が驚きの声を上げる。
そうだ……彼は聖王様と一緒に居た騎士の人。そういえばさっき呪いのせいでおかしくなった所をソフィアにぶっ飛ばされてたけど、もう復活した様だ。
そして……どう見ても様子がおかしい。……これは……!
「っは。聖王騎士達が乱心したとは聞いていましたが、まさかレグロス様までとは……」
ヒサギさんがレグロスを、冷たい目で見ながら吐き捨てる様に言う。
……ふつう驚くべき所なのに、この人めっちゃ冷静だな………!
レグロスの瞳孔は焦点が合っておらず、口も半開きになって……さっきからブツブツと「じゃしん……じゃしん……」と呟いている。
そして焦点の合っていない瞳で部屋をぐるりと見渡して……その瞳が私を捕らえた……!
舐め回す様に私を見つめる視線に、とてつもなく嫌な予感がする……!!
「じゃ……しーーーーーーん!!!!」
やっぱりーーー!!!
レグロスは叫び声と共に剣を振り上げ、私に向かってそのまま振り落ろす!!
焦点もあっておらず、どう見ても正気じゃ無いのに……その剣捌きだけは衰えていないのか、あ……と驚く暇も無く、レグロスの剣は私を捕らえて、ゆっくりと降りてきて……
「キーーーーーー!!!」
「コウ様!!!」
「っち!」
鞄の中で大人しくしてくれていた、キーちゃんの叫び声と、フローラ様の叫び声を遠くに感じながら……私は目を見開いていると……激しい金属音と共にレグロスの剣は私の横すれすれを通って、そのまま地面に剣が突き刺さる!!
……こっわ!!あぶな!!今走馬灯の様にレグロスの剣がゆっくり見えたんだけど!!?
てゆーかなんでレグロスの剣は逸れたの!?
驚きながら状況を確認すると、どうやらレグロスの剣は、誰かが投擲したナイフによって逸らされていた様だ!!……そんな神業出来るの誰!!?
だが……悠長に状況を確認している暇なんて無い!!
私は鞄からキーちゃんを抱き上げると、そのまま急いで部屋から飛び出した!!
「コウ様!!?」
私の背にフローラ姫の声が響くが……今は正直それに答えている暇はない!!
私の予想通りレグロスは、逃げ出した私を追って「すぐに部屋から飛び出て来たからだ!!
「キーちゃん!!いつもの頼める!?」
「キー!」
キーちゃんは私の腕の中で、任せろ!!って感じで鳴いてすぐさま煙幕を吐いてくれる!!
よし!!これで少しは時間を稼げるはず!!
とりあえずフローラ様達から離れて、どう対処するか考えないと……!!
そう思い足を速めようとした瞬間、私の左肩辺りが突然、焼けるように熱く感じた。
何だろうと左肩を見ると……私の左肩は抉れるように無くなっており、そこから……骨が見えるのだ。
「あ……ぐぅ!?」
「キーーー!!?」
そして遅れる様にやってくる激痛と、一気に噴出する出血で……私はよろけてしまう。
そうだ……思い出した。
あのレグロスという男、昨日の夜聖騎士団を率いて黒騎士と戦ったリーダーだったのだ。
あの時は夜だったし、
つまり今、私の肩を抉り食ったのは……!
「いづッ……!!!」
「キィ!!!」
そして次の瞬間、今度は私の右足のふくらはぎ部分が、半分抉り食われていた。
あの男!!
今更ながらアイツの容姿の事言うけど!!ライオンみたいな髪型しておきながら、召喚するのがピラニアってどーいう事!!?そこは召喚獣もライオンとかにしといてよ!?絶対あいつの仇名『ピラニア王(笑)』とかでしょ!!?
なんて阿保な事思いながらも、激痛で涙を流しながら、抉り食われた足を引きずり私はとにかく逃げる!!
多分煙幕の中で視界が閉ざされてしまったから、アイツはピラニアを大量に召喚して……空飛ぶピラニア達は、煙幕の中適当に進んで、ぶつかった物に食らいついているのではないだろうか?……てゆーか絶対にそうだと思う。
………ああ!?だとすると!!?
キーちゃんの煙幕はだいぶ広く張って貰ってるので、もしかしたらフローラ様達もピラニアの餌食になっちゃってるんじゃない!!?だとすると私の大失態だ!!
フローラ様達を巻き込まない為に逃げたのに、これじゃあ本末転倒だ!!どうしよう……!!
そう思って足を止めたのが……私の運の尽きだった。
次の瞬間、脇腹、右腕の前腕部、そして背中の辺りから一気に激痛が走る……!!
「………あ……!!」
「キィィ!!」
咄嗟にキーちゃんだけは守ろうと、血が流れる腕で強くキーちゃんを抱きしめて、私は蹲る様にするが……これは多分非常にまずい。
ともかく血を流し過ぎだ。
今ので計五か所?抉り食われちゃったせいで、もう立ってるのもやっと……まぁ今は蹲ってるけど、もう意識を保つのもやっとなのだ。
これは……本当にまずい……!!
このままじゃ普通に死んじゃう!!
「じゃ……しぃいいいいん………!!」
そして、視界が閉ざされた煙幕の中……ゆっくり、ゆっくりとレグロスが私に近づいてくる。
はぁぁ……。これは……もう……どうしようもない……なぁ……。
「ごめんね……?キーちゃん………」
「キィ……」
ここから逆転する手は私には無い。
シェンが言っていた、
つまり……私も詰みなのだ。……封印された
「はぁああ!!じゃしぃいいいいいん!!!!」
煙幕の中、ようやく私を見つけ出して歓喜の声を上げるレグロス。
そしてゆっくりとその剣を振り上げる。
私はぎゅっと目を瞑り、自分の最期を覚悟して…………
「そこまでだ!貴様には心底失望したぞ!!獅子王レグロス!!」
「じゃあしぃ!!!?」
私の周りを浮遊するピラニアごと、一気に制圧する無数の矢によって救われるのだった。
これは……この声は………!!!
そう思った瞬間、私の体はフッと軽くなる。
そう………私を助けてくれた、その御方によって抱きかかえられていたからだ。
「遅くなって……本当に済まなかった………。コウ……」
キーちゃんの煙幕も薄れていき、その男性の顔がはっきりと分かる……。
「エイシャ……さま………」