最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
エイシャが私を抱きかかえ、眉を寄せてまた謝ってくる。
「コウ……遅くなって本当にすまない……」
そう言って目を伏せるエイシャに、私は慌てて答えた。
うわーーー!!
なんか久しぶりのエイシャの顔見たけど、やっぱり超イケメン………って!!そんな事考えてる場合じゃ無かった!!
「私は大丈夫です!!見た目より頑丈なので!!それより……助けてくれてありがとうございます!!」
「いや……。こんなに怪我をさせては、間に合っていないのも同じだ……。だが安心してくれ、すぐにマリフィセントが「じゃしいいいいんん!!!」……っち!!」
エイシャの言葉を遮るように、レグロスが私に襲い掛かる!
エイシャは舌打ちすると、私を抱きかかえたまま一足飛びにバックステップする。そして私を自身の守護霊のケンタウロスに預けて弓を構えた!
「コウ!俺の守護霊から離れない様に!マリフィセントが到着するまではもう少しかかるだろう!すまないが、それまでは自己回復で何とか持ちこたえてくれ!!」
そう言うとエイシャは矢をレグロスに射放ちながら、レグロスに言った。
「レグロス!!お前程の騎士が、暴走して我を失うなど笑止千万!!たとえそれが自分の意に反した他人の仕業だとしても、聖王騎士団を束ねる筈のお前がそんな有様でどうする!!?」
「じゃ……じゃぁあああしぃいいいんん!!」
「っち!!やはり言葉は通じないか!!この阿呆が!!!」
エイシャはレグロスを正気に戻すため、説得(?)をしたい様だが……そんなエイシャの言葉を意にも介さず、更にピラニアを召喚する。
そして剣を両手で構えると、レグロスが纏っていた魔力が形を変えていった!形を変えた魔力は……まるでライオンの様な形になっていく!!
「じゃしぃいいん!!し……ねぇえええ!!『王獅子斬・烈破』!!!」
そしてそのライオン型の魔力を纏ったまま、召喚したピラニア達と共にエイシャを襲うのだ!!……ていうか、必殺技の名前とかは流暢に喋れるの!!?なんで!!?
そんな私の阿呆な考えなどお構いなしに、レグロスの魔力はどんどん濃くなっていく!!エイシャに目の前まで迫った時には、ライオン型の魔力でレグロスが見えなくなる程、色濃くなっていた!!
そしてライオンの牙と、ピラニアの無数の牙でエイシャに襲い掛かるが……エイシャは慌てる事無く、弓を構えて解き放った。
「『
「じゃぁあ!!?」
エイシャから解き放たれた矢は、ライオン型の魔力を纏ったレグロスをいとも簡単に貫き………少し遅れて、王城の廊下を軋ませる程の衝撃波が発生して、今度はピラニア達を吹き飛ばした!!
「おおおおお?!」
「……獅子王レグロスよ、正気のお前なら、この俺と戦おうなどと思わなかった筈だ」
エイシャは静かにそう呟くと、更に矢をレグロスへと打ち込む。
さっきのエイシャの技でライオン型の魔力を破壊されたレグロスは、その矢を避ける事も儘ならず、そのままエイシャの矢はレグロスの右肩へと刺さった。
しかし……!!
「じゃぁああ!!」
「っち!!やはりこの程度では止まらんか!!」
矢を受けながらも、レグロスは止まることなく剣を振るう!
エイシャはそれを聖弓で受け止めるが……次の瞬間、衝撃波で完全に吹き飛ばされていなかったピラニア数匹が、エイシャの脇腹や腕に噛みついた!!
「エイシャ様!!」
「っつ!!」
エイシャが苦悶の表情を浮かべるが……レグロスはお構いなしに剣の力を強め、聖弓で剣を止めているエイシャを力で押しつぶそうとする!!
「じゃああぁああいいい!!」
しかし……次の瞬間、レグロスの剣は空を切っていた。……何故ならエイシャは瞬間移動を発動させ、その場から消え去っていたからだ!!
エイシャが目の前から一瞬で消えたため、レグロスはそのままバランスを崩し、剣は床を捕らえてそのまま突き刺さってしまう!!
エイシャは瞬間移動でレグロスの背後を取ると、自分に噛みついているピラニアを腰に下げた剣を抜いて処理すると、そのまま今度は弓を引き、矢を放つ!!
剣が地面に刺さったままのレグロスはその矢を弾くことも躱す事もできず……背に数本の矢が突き刺さった!!
「あじゃじゃあぁあああ!!!」
痛みで叫び声を上げるレグロスだが……エイシャはそんな事お構いなしに、油断なく弓を構える。
これは……流石にエイシャの勝ちなのかな?
そう思い私が息をついた瞬間!!レグロスは一気に剣を引き抜き振り向きざまにエイシャへと投擲する!!
エイシャはそれを必要最低限の動きで躱すと、そのまま矢を撃つが……レグロスはあえてエイシャの矢を胸で受けると、口から血をまき散らしながらライオン型の魔力を纏いエイシャへと突進していく!!
「!!!」
「じゃあししいいん!!」
エイシャへと投げられた剣が後ろの分厚い大きな窓ガラスへと刺さった瞬間、ライオンの魔力を纏いエイシャへと襲い掛かったレグロスは、そのままエイシャへとタックルすると、後ろの窓ガラスへと激突する!!
そして……!!
「じゃああぁぁぁっぁししししんんん!!!」
「ちぃ!!!」
分厚い大きな窓ガラスをぶち抜いて王城の外へと飛び出していったのだ!!
「え…エイシャ様……って!うわあ!!」
「キィィ!!」
私も慌ててそれを追おうとすると……いつの間にか、私とエイシャの守護霊の周りを、無数のピラニアが包囲していたのだ!!腕の中のキーちゃんも、思わず鳴き声を上げてしまう!!
エイシャの守護霊は……私を支えてくれているため、ピラニア達をどうにかするには……最悪私が離れなければいけないかも!!
そう思い守護霊から少し離れようとした時……銃声が鳴り響いた!!………え!!?銃声!!?
「コウ様!!大丈夫ですか!?」
銃声に驚いていると、私達にフローラ様が駆け寄ってくる!!そしてその後ろには……ライフル銃を構えた、使用人のヒサギさんがいた!!
ヒサギさんは手慣れた手つきでライフルのボルトを引くと、ピンっという音と共に薬莢が飛び出し、そしてまたライフルを構え、狙いを外すことなくピラニア達を仕留めていく!!
「………ボルトアクション式ライフル銃『ドライゼン銃』。この大陸で少しだけ流通しているフリントロック式やパーカッションロック式の銃とは異なる、ローレンシアン大陸のプロインセ王国で開発された最新式のライフルです。私が秘密裏に手に入れた、この国では一丁ものの銃ですよ……!くく!」
………ちょっとヒサギさんが何言ってるのかさっぱり分かんねぇです!!
後、私……というか
ま……まぁともかくフローラ様達が無事で良かった!!
「フローラ様!ヒサギさん!ありがとうございます!」
「いえいえ!コウ様は私達を巻き込まないために部屋を飛び出して……って!!なんて酷い怪我!!!だ……大丈夫ですか!?コウ様!!今すぐ王室付きの聖女協会のシスター達を呼び寄せますわ!!」
「だ……大丈夫です!!今は!!それより……!!」
フローラ様が慌てて私に駆け寄るが、私はそれにペコリと頭を下げると……急いでエイシャ達が飛び出していった窓まで行く(エイシャの守護霊に支えられながら!)。
「エイシャ……様……!!」
そして窓から身を乗り出し外を確認すると……。
「……ほう?」
そこで目にしたのは、エイシャを魔法か何かで抑えつける一人の女性だった。
あれは……あの姿は………まさか………シスタ……さん……!?
こうして私は、母から続く因縁を持った悪神……邪神アズライールと、初の邂逅を果たすのであった……。