最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
「ふむ……悪くは無いな?むしろ……実に良い。……大したものだな?パイモンよ……」
「それはそれは……。ご満足いただけたようで何よりですよ!」
邪神アズライールは、王都の惨状を見て……実に満足そうに頷くと、笑いながら僕を褒めた。
正直この為に頑張って来たのだ。こちらとしても、褒めてもらわなければ頑張った甲斐がない。
今僕らは邪神様を復活させた祭壇を後にし、王城を目指していた。
メンバーは、邪神様、僕、そして僕の使い魔の二匹の魔獣のベバルとアバラム……んで、ヨハネ君とシスタちゃんだ。
因みにヨハネ君は無理やり歩かせてるけど、シスタちゃんは眠ったまま……というか仮死状態なので、ベバルに背負って貰っている。
なんで仮死状態のシスタちゃんをわざわざ連れて来てるのかって……?
それは……なんと言うか、やっぱり偽物の体で作り出した憑代では限界があるらしく、あと数十年もすれば……邪神様の肉体が崩壊しちゃうかもしれないらしい。
んで、やっぱりちゃんとした憑代であるシスタちゃんに乗り移らなきゃいけないので……シスタちゃんは大切に保管して、数年の間にはちゃんと乗り移れるようにするらしい。……どうやって乗り移るのかは、今から考えるらしいけど!!
んじゃ何でヨハネ君は殺さずにつれて来たのかって……?……それは………
「見ろ、ヨハネよ。お前が小賢しくも
「ぐう……!」
「はは。私としては、こうやって一気に愚民どもを絶望させるのは趣味では無いが……こういうのも悪くはないかもなぁ?一気に絶望に叩き墜とす……ふうむ。悪くない悪くない……!ははは」
ヨハネ君の首根っこを掴み、目を逸らそうとするヨハネ君に無理やり街の惨状を見せつけ、楽しそうに嗤いながら邪神様は続ける。
「お前が涙ぐましい努力で積み上げてきた仮初の平和も、愚民どもの安寧も……ははは、こうして踏みにじられるために積み上げてきたと思うと、こみ上げるものがあるな?本当に……あの時お前が余計な事をしたおかげだ!お前も褒めてつかわそう……聖王ヨハネよ……ははは」
そう言って邪神様はヨハネ君の首根っこを掴んだまま、無造作に街の方へと投げると……ヨハネ君はまるでおもちゃの様に街へと飛んで行って、そのままゴロゴロと転がって、動かなくなっちゃった。
動かなくなったヨハネ君に邪神様は近づいて行き……そしてニヤリと嗤うと、回復魔法を掛けてあげる。
「……はぁっ!!ああ……こ……殺して……くれ!もう……私をぉ!!」
「ははは!何を言っている?お前は昔から私の忠実な部下だったじゃないか?そんな忠臣を殺せなど……お前はなんて残酷な事を言うのだ?はははは」
うっわーーー。まじで邪神様趣味悪!!
流石の僕もドン引きでそれを見ていると、ふと気がづいた様に邪神様は僕に言った。
「そう言えばパイモンよ……。聖王騎士達に施したあの呪い……。あれは私の力を流用したものだな?」
「うえ!?そ……そうですけど……。もしかして……怒っちゃいました!?勝手に邪神様の力を使った事……」
そう。
ヨハネ君含む聖王騎士協会の人達に掛けた呪いは……神器に封印されていた、邪神様の力をちょいと拝借して掛けた呪いなのだ。
発動させれば自分の意思とは反して、自分の欲望や正義に溺れて……周りが見えなくなり、無差別の正義感の元、破壊を繰り返すという呪いなのだが……そんな強力な呪いを、彼らに気付かれずに掛けるなんて、僕一人の力では不可能だった。
でも邪神様の封じられた神器から、少しだけ溢れる力を集めてそれに魔力を流して流用してやれば、あら不思議!!あっという間にこんなすごい呪いを彼らに掛ける事が出来たのだ!!
でもそれって勝手に邪神様の力を使った事になるから……やっぱり邪神様怒ってるのかな!?
そう思い、戦々恐々としていると……邪神様はそんな僕を見て、一瞬きょとんとし……そして笑いながら言った。
「はは。いや違う違う。怒ってなどおらんよ?むしろ褒めておるのだ」
「へ?褒めて……ですか?」
「うむ。神器に封じられていた私の微弱な力を集めて流用するなど、普通の魔術師には出来ない芸当だよ。それをこんな広範囲に発動させるとは……お前は本当に大したものだ……パイモンよ?」
「うえ?え……えへへ。あ……ありがとうございます!」
うわー!自分よりめっちゃ格上の人に褒められるのって、なんだか嬉しいな!!本当に……頑張った甲斐があったよ!!
そんな喜びを嚙みしめている僕に、邪神様はさらに上機嫌に告げる。
「ふむ。そんなお前に……褒美をやらねばな?……よかろう。お前が先程打診してきた、魔王軍に参列してほしいという事……いいぞ?魔王と肩を並べてやろうではないか」
「ほ……本当ですか!!?」
確かに王城へ向かう道中、僕は邪神様に、魔王軍に参列してくれたら嬉しいんですけどぉ……って、何となくお願いしたけど……まさかこんなにあっさり受けてくれるとは思わなかった!!マジで……僕の頑張りって、今日めっちゃ報われたな!!嬉しい!!
邪神様は、今にも小躍りしそうなほど喜んでいる僕を見て、満足そうに頷くと……更に言葉を続けようとして………。
「じゃああぁぁぁっぁししししんんん!!!」
「ちぃ!!!」
城の大きな窓ガラスをブチ破って、二人の男が飛び出して来た!
一人は正気を失っているレグロス君、そしてもう一人は……!!
「……ほう?あれは……
邪神様はそれを見て楽しそうに嗤うと、弓の勇者エイシャに向けて手を翳す。
「『
「うお!!?」
そして重力魔法を発動させると、勇者エイシャは突然の横やりに驚きの声を上げるが……その圧倒的重力に耐え切れず膝を折るのであった。
……あれ?エイシャ君って今、国王様に頼んで自国に戻って貰ってなかったっけ?何時の間にこっちに戻ってきたんだろ?
……まぁどっちでもいいか!どうせ勇者じゃ邪神様には勝てないし!!
「くくく。初めましてだな?勇者君?」
「お……お前は……!!」
勇者エイシャは苦しそうに声を上げるが、そんな勇者に邪神様はゆっくりと近づいて行き口を開いた。
「私は邪神アズライール。……お前は勇者君で間違い無いかな?それとも……違うのかな?だって……この程度の重力魔法で動けなくなるなど……「エイシャ……様……!!」……ほう?」
邪神様の言葉の最中に、勇者に向けて声を掛ける少女。
割れた大きな窓ガラスから、勇者の守護霊であろうケンタウロスに支えられて、勇者を覗くその姿は………肩や腕、足などから出血しており、見ていてとても痛々しい!!
彼女は……アイドルで
そしてそんなコウちゃんを見つめ、一瞬驚いた顔をした邪神様は……次の瞬間、今まで見た事も無い程顔を邪悪に歪めると、お腹を抱えながら大笑いし始めた!!
「く……くふふ……!!あ……あひゃひゃははははははっは!!!!!なんだ!!?え!!?なんだ!!?し……死んだのか!!?やはりあの小娘は……!!!私を封じる神器を作ったあの小娘は……!!!あひゃはははははは!!!!くくくくくははは!!!」
「じゃ……邪神様……?」
「誰に殺されたんだ!!?え!?力尽きるまではまだ時間があっただろう!!?次の世代に何も残さずに……死んでしまったのか!!?だから……あんな幼体の
邪神様は、涙すら流しながら大笑いすると、そんな邪神様を見て呆然としているコウちゃんに向かって声を掛けた。
「くくはは!!アナスタシアの記憶を読んでいた時から、少し疑問に思っていたのだ!!しかし……可哀想に!!まだお前は右も左も解らん、百年も生きていない
「!!!コウを逃がせ!!!」
勇者エイシャが、重力魔法から逃れようと悶えながらも、コウちゃんを支えるケンタウロスに叫ぶが……ちょっともう遅いんじゃない?
「『
「あぐう!!?」
「ほら……こうなってしまうだろう!?くくく」
「キーーーーー!!?」
「
「コウ!!!」
引力の魔法で一気にコウちゃんを引き寄せると、邪神様はそのままコウちゃんの首を強く絞める。
……てゆーか、コウちゃんが抱きしめてた魔物って、ヴェネアちゃんじゃね?
……まぁ……いいや。
ともかく、首を絞められたコウちゃんは苦悶の声を上げる。
全身から血をダラダラと流しながら、今度は邪神様に首を絞められて……流石の
……僕としては、コウちゃんは敵だけど、痛々しい姿すぎて……もうちょっと勇者君頑張ろうよ、と思ってしまう。
そんな僕の思いも空しく、勇者君は重力魔法で動けない。
小さな魔物になってるヴェネアちゃんも、引き剥がされて……いつの間にか邪神様に踏みつけられてる。
これは詰みですね。お疲れ様でした……!!
そう思い心の中で南無三と唱えた瞬間!!
「じゃあああああああああああしししししししいんんんんんんんん!!!!!!」
邪神様に向かって、正気を失っているはずのレグロス君がその刃を振り下ろしたのだった!!
何やってるの!?レグロス君!!