最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
私達は今、ルーカス君と合流すべく、学園の外へと足を運んでいた。
学園に籠城して、早一週間と六日………私達は久々に学園の外に出た訳だが……街の悲惨さに目を瞑った。
約二週間しか経っていないというのに、街は荒れ果て、まるで廃墟の様になっている。
私達は街の悲惨さに目を背けながら、学園外の人間に見つからない様に身を潜めながら、目的地を目指した。
なぜこんな危険を冒してまで学園から出たのかというと………それはフローラ姫からの指令だからだ。
ルーカス君の使い魔(?)を捕らえて、事の顛末をフローラ姫に説明した私達だったのだが、フローラ姫は逆にそのルーカス君を利用しようと言い出したのだ。
「このまま学園に籠城しても限界は近いわ。それに彼が言う通り、邪神の気まぐれでいつ学園が襲われるかは分からない。それより……捕まって、処刑されるであろう連合軍の人達に接触して……彼らを解放できないかしら?幸いルーカス君は邪神側の人間の様だし……利用しない手は無いんじゃない?」
と、あっけらかんと言ってのけたフローラ姫に、私は開いた口が塞がらなかった。
確かにこのまま籠城を続けても何れは限界がくるだろう。しかし……だからといって、自分達から危険に飛び込んで行くのもまた違う気がするのだ。
私は当然反対しようとしたが……そんな私を制止して、フローラ姫は言葉を続けた。
「それに……正直ヒサギがいるのに、こんな時間が経って何もアクションが無いとは思えないのよね?もしかしたらこの連合軍の敗北も、ヒサギ達の作戦なのかも!」
ヒサギさんというのは、フローラ姫の使用人で、勇者エイシャ様と共に王都を出て行った人だが……正直あの人がどれだけ凄い人だろうと、あの邪神相手にはあまり意味が無い気がする。
そんな私の思いなどお構いなしに、フローラ姫は話を進めると……あ!っと手を打ってニヤリと笑って私達に言った。
「何も貴女達だけに危険を冒せって言ってる訳じゃ無いわ?当然……私も一緒よ?」
「……………は?……え!?」
「ふふ!!ここで皆を待ってるのも大切だと思うけど………やっぱり上に立つものは、自分自身の命も賭けられないとね!!そして私の勘が言ってるわ!!ここは私の命もベットすべき所だって!!」
その後、とんとん拍子で結局私達は学園を出て、ルーカス君に会いに行った訳である。
なので今のメンバーは、私を含め、ソフィア、アンナ、ナーサ……そしてナーサの友達のライラ……の変装をしたフローラ姫だ。
何故フローラ姫が、ライラの格好をしているのかというと、「私は目立つから……学生の格好をしておいた方がいいと思うの!別に私が久しぶりに学生の格好したいとかじゃないわ?確かにまだまだ私だっていけるって証明したくない訳じゃないけど……!そう……これは必要だからよ!?」……との事だ。
そして私達は人目を避け、ルーカス君が指定した場所に辿り着いた訳だが……私達が危惧していた、カーン含む多くの男達と共に待ち伏せ……はしていなかった。
廃墟になっている、王都の住宅の中の腰掛に、一人で座って私達を待っていたからだ。
そして……ルーカス君の顔を見た時、私は少し驚いてしまった。
「……はは。酷い顔だろ?これじゃあ元の色男が台無し………かな?」
そう言って苦笑いするルーカス君の顔は、片目を潰されたのか眼帯をしており、頬には大きな切り傷があり、そして口元も切れたのか……大きな裂け目が出来ていた。
そんなルーカス君になんと声を掛けようかと考えていると………私の前にフローラ姫が出て、ルーカス君に問いかけた。
「酷い怪我の所悪いけど………ここは貴方一人なの?正直意外ね?待ち伏せしてるのかと思ってたけど………」
「……はは。そんな事はしないよ……。だって本当は、ティファと一緒に、二人で王都を出ようと思ってたんだからね……」
「王都を………出る……!?」
その意外な言葉に、フローラ姫は驚きの声を上げるが……そんなフローラ姫を、ルーカス君は訝しげに見て口を開いた。
「君………ライラじゃないよね?一体……」
「そんな事はどうでもいいわ?貴方………どうやってティファさんと王都を出るつもりだったの?」
「……はぁ……。もちろん教えるよ……。でもその前に……」
ルーカス君はそう言うと、未だにルーカス君の黒い鼠を捕まえているソフィアに目をやった。そんなルーカス君にソフィアは一瞬だけ目をやり………気だるげに鼠をルーカス君に投げやる。
ルーカス君は鼠をキャッチすると、目を閉じる。すると黒い鼠はすうっと薄くなっていき、そのまま姿を消した。
そしてルーカス君はポツリと呟くように話始める。
「………………今日、この王都に、邪神教を名乗る集団が現れる」
「邪神教?」
私がルーカス君の言葉に、オウム返しに聞くと、ルーカス君は一度頷いて言葉を続けた。
「連中が何者なのか、正直俺には分からない。どうにも邪神を崇める為に、遠路はるばるこの王都へやって来たらしいんだけど………胡散臭い話だよね?だって邪神は復活してたった二週間程なのに、どうやってその情報を手に入れたのか……とかさ?……でもまぁ邪神様にとってはそれも戯れだと思う。彼らがどんな集団で、何を企んでいようとも………結局邪神様には勝てないんだから」
「…………それで?」
「でもまぁ………これはチャンスだと思ったんだ。邪神教の奴らは、全員黒いフードで顔と姿を隠しててちゃんとした容姿は分からないんだよ。しかも奴ら、かなりの人数で………それこそ数百、数千ぐらいの人数がいる。それが壁のせいで二つしかない門を通る訳だから……同じような格好をして、奴らに紛れ込めれば、王都を脱出できると思ったんだ」
「なるほど……」
確かにルーカス君の話は理にかなっている。
その邪神教とやらに紛れ込めれば、王都から脱出する事も可能かもしれない。
「それでティファと二人で愛の逃避行をしようと企ててたけど………それをティファが拒否したから……無理やりにでも連れて行こうと思った……って事でいいのかしら?」
ルーカス君の話を聞いたフローラ姫が、そうルーカス君に問いかけると……ルーカス君は苦笑いを深くして頷いた。
「そう……だよ……。正直いつまで学園が無事なのか、本当に分からないからね……。このチャンスを逃すと、次のチャンスは無いかも……って思ったんだ」
そしてルーカス君は私を見据えて、改めて言う。
「ティファ………。俺は君を失望させてばかりだけど、本当に君には……君だけは無事に王都から脱出してほしいんだ。もし王都を出たら……その後は、君のお父さんの所に君を連れて行って………その後僕と一緒に居て欲しいなんて言わない。俺にはもうそんな資格は無いからね……」
「……ルーカス君……」
「最悪……今ここにいる人たちぐらいなら、一緒に邪神教に紛れても違和感が無いかもしれない。時間も無いし、一応黒いフードは数着用意している。だからティファ……俺と一緒に、この王都を出て欲しい!」
そう懇願する様に言うルーカス君の言葉に………私の心は大いに揺れるのであった………!