最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
ルーカス君と二人きりで、この王都を出るというのなら……正直また断っただろう。
でもここには、私の友達のアンナやソフィア……それに一応ナーサだっている。
彼女達と共にこの王都を脱出できるなら………別に学園に残された人たちはどうでもいいんじゃないだろうか?
ソフィアは私達を守る為に学園に残ってくれている訳だし、異論は無いだろう。
心が優しいアンナは……自分達だけ助かる事に、心を痛めるかもしれないが………そこは納得してもらうしかない。
酷いと言われるかも知れないが………自分とその友人だけが助かろうと思う事が、そんなに悪い事なのだろうか……?
私がルーカス君の言葉に揺れていると………私の肩をフローラ姫がそっと叩いた。
「!!……あ……ご……ごめんなさい………」
「ふふ。何を謝っているの?……私は貴女の背中を押そうと思っただけよ?」
「………え?」
振り返ると、フローラ姫は穏やかな笑顔を作って言葉を続けた。
「貴女達は、あの絶望的な学園生活で本当に頑張ってくれていた。自分達に出来る事を精一杯ね?だから……貴女達はもう十分頑張ったわ?彼……ルーカス君の話が本当かどうかは、その邪神教とやらが現れるまで待って確認するとして………もし彼の話が本当なら、貴女達は逃げなさい?」
「ふ……フローラ姫………」
「こら!ここでは一応ライラでしょ?………まぁ正直ソフィアには残って欲しいけど……ふふ!貴女達の護衛も必要だろうし、そこは我慢するわ!」
わざと明るくそう言うと、フローラ姫はウインクをする。
そしてそれで分かってしまった。
……この人は、この王都に………学園に残るつもりなのだと…………。
そんなフローラ姫を見て………私は決意する!
「………ルーカス君」
「うん。……じゃあ準備しよう。正直もう時間が余り無いんだ!邪神教の連中はもう今にも現れるだろうし………」
「違います、ルーカス君」
「………ティファ?」
首を傾げるルーカス君に、私ははっきりと答えた。
「私は王都から逃げません!最後の瞬間まで………逃げずに戦います!自分に何ができるのか分からないけど……最後の最後まで!戦い抜いて見せます!」
「な……ティ……ティファ!?」
アンナ達には本当に申し訳ないと思う。
せっかくこの王都から脱出する機会を……私が奪ってしまったのだから。
でもきっと………!
「うんうん!ティファの言う通り!!私達はただの学生だけど……だからこそ!最後まで学園の皆の為に頑張ろう!!ね!?ソフィ!ナーサ!!」
「………私はどっちでもいいよ?ティファ達がそう決めたのなら、それについてくだけ」
「ええーー。勝手に決めないでくれる?せっかく逃げるチャンスだったのにぃ!!……ったく!!」
「あはは!そんな事言ってぇ!!」
「っちょ!?なに抱き着いてんのよ!?やめなさいよ!!」
口でも文句を言っているナーサも、顔が笑っている……!
そんな私達を見て、フローラ姫が感心した様に口を開いた。
「貴女達………本当に最高ね!!もし王都が元に戻って、まだ私が王族なら……絶対に貴女達に褒美を与えるから、楽しみにしてなさい!?」
そう言って笑顔を作るフローラ姫を見て、私は選択を間違っていなかったと、改めて思う!!
そんな私に、ルカース君は声を荒げる。
「な……何を言ってるんだ!?ティファ!!君たちは本当に邪神様の恐ろしさを理解していない!!あの方は、逆らった人間を簡単に殺してくれないんだ!!殺してくれと懇願するような……深い絶望を与える!!現に捕まった連合軍の人達は、今日見せしめに大衆の前で……拷問された後、処刑されるんだ!!」
いったん言葉を切り、目を伏せて……声を震わせながら、ルーカス君は言葉を続けた。
「王都は終わりだ………。だから………」
「……でも逃げたところで……きっと少しだけ、ほんの数年寿命が延びるだけですよ……」
「!!!……ティ……ティファ………!」
ルーカス君の言葉を私は否定すると、ゆるゆると首を振って言葉を続けた。
「邪神が王都を完全に掌握したら、次はきっとこの国全体に目を向けます。その時また……今度は国外に逃げるんですか?どこへ?」
「それ……は………」
「それなら私は、この場所でその時を迎えます。……友達達と一緒に。だから、ここで出来る事を精一杯頑張ります……!」
私がそう決意を言葉にする。
そんな私に、ルーカス君は目を見開いて………諦めた様に笑みを作った。
「君は………本当に変わらないね………。小さい時から……頑固でひたむきだ……」
「……ふふ。頑固は余計ですよ?」
「……はは。……………はぁぁ……分かったよ……ティファ。いい加減、俺も逃げるのは疲れた。……それは家族という柵からも……俺自身の奥底から溢れ出る屑っぷりからも………!」
「ルーカス君………」
ルーカス君はそう言うと、今度は優しい笑みを作って……そう、この学園で再会して一度も見た事のない……幼かったあの頃の様な笑みを作って言葉を続けた。
「俺も君達と最後まで戦う。だって最後は………好きな人と一緒にいたいからね」
「……!!」
そう言って優しく微笑みかけるルーカス君に、私は状況も忘れて頬が朱くなるのを抑えられなかった。
状況が状況だし、こんな所でそんな事を言われても……!!
ルーカス君の言葉に固まった私を見て、フローラ姫は苦笑いして、ルーカス君に言った。
「はいはい!そういう青春は後でね?ともかく……協力してくれるって事でいいのよね?ルーカス君?」
「……ああ。君達に協力するよ……」
「そう!!ならよかった!!じゃあ早速だけど、今捕まっている連合軍の………!!」
フローラ姫が目を見開いて、言葉を止める。
何だろうと思いフローラ姫の視線を追うと……ルーカス君の奥に、黒いフードで顔を隠した三人の黒づくめ達が私達を見据えていた!!
ルーカス君も、フローラ姫の視線に気づき後ろを振り向き……驚いたように目を見開く。
あれが……邪神教という人達なのだろうか?だとしたらなぜここに!?
「お………驚いたな?……思ったより早くお越しになったみたいだね?でも……この裏路地に用はないはずだ……ぐべぇえ!!?」
「ルーカス君!!?」
ルーカス君が言葉の途中で突風に吹き飛ばされて壁に激突する!!
こんな突風を発生させることが出来るのは……この中ではソフィアしかいない!!……でもなぜ!?なんでソフィアはいきなりルーカス君を攻撃したの!?
しかし、私やアンナ達が驚いて声を上げるよりも早く………ソフィアは私達を見据えて、黙っている邪神教へと駆け出していた!!
………そして………!!
「コウ!!!!!」
三人の黒づくめの中の中心に立っている、小柄な人に………抱き着いたのだ!!……って!!コウ!!?
「ええ!!?コウ!!?」
「はああ!?え!?ちょっとソフィア!!?」
アンナとナーサが驚きの声を上げる中、そんな事はお構いなしにソフィアは涙を流しながら強く……強く、黒づくめの人を抱きしめる。
そんなソフィアを、黒づくめの人は優しく抱きしめ………そしてフードを外した。
そして露わになったのは……美しい青い瞳を持った、銀髪の少女……!!間違いない!!彼女は!!!
「コウ!!」
「コウぅうう!!」
「コウ!!あんた!!なんで!!!」
私達も急いでコウに駆け寄って、ソフィアごとコウを抱きしめる!!
そんな私達にコウは少しだけ困ったような笑みを作って……口を開いた。
「皆。心配かけてごめんね?でも……皆が無事で、本当に良かった……!」
そう言って目尻に涙をためるコウを見て………私はようやく、この王都で止まっていた時間が動き出したような………そんな気がしたのだった………!