最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第217話 動き出す物語(ティファ視点)

 ルーカス君と二人きりで、この王都を出るというのなら……正直また断っただろう。

 

 でもここには、私の友達のアンナやソフィア……それに一応ナーサだっている。

 彼女達と共にこの王都を脱出できるなら………別に学園に残された人たちはどうでもいいんじゃないだろうか?

 

 ソフィアは私達を守る為に学園に残ってくれている訳だし、異論は無いだろう。

 心が優しいアンナは……自分達だけ助かる事に、心を痛めるかもしれないが………そこは納得してもらうしかない。

 

 酷いと言われるかも知れないが………自分とその友人だけが助かろうと思う事が、そんなに悪い事なのだろうか……?

 

 

 私がルーカス君の言葉に揺れていると………私の肩をフローラ姫がそっと叩いた。

 

「!!……あ……ご……ごめんなさい………」

「ふふ。何を謝っているの?……私は貴女の背中を押そうと思っただけよ?」

「………え?」

 

 振り返ると、フローラ姫は穏やかな笑顔を作って言葉を続けた。

 

「貴女達は、あの絶望的な学園生活で本当に頑張ってくれていた。自分達に出来る事を精一杯ね?だから……貴女達はもう十分頑張ったわ?彼……ルーカス君の話が本当かどうかは、その邪神教とやらが現れるまで待って確認するとして………もし彼の話が本当なら、貴女達は逃げなさい?」

「ふ……フローラ姫………」

「こら!ここでは一応ライラでしょ?………まぁ正直ソフィアには残って欲しいけど……ふふ!貴女達の護衛も必要だろうし、そこは我慢するわ!」

 

 わざと明るくそう言うと、フローラ姫はウインクをする。

 

 そしてそれで分かってしまった。

 ……この人は、この王都に………学園に残るつもりなのだと…………。

 

 そんなフローラ姫を見て………私は決意する!

 

「………ルーカス君」

「うん。……じゃあ準備しよう。正直もう時間が余り無いんだ!邪神教の連中はもう今にも現れるだろうし………」

「違います、ルーカス君」

「………ティファ?」

 

 首を傾げるルーカス君に、私ははっきりと答えた。

 

「私は王都から逃げません!最後の瞬間まで………逃げずに戦います!自分に何ができるのか分からないけど……最後の最後まで!戦い抜いて見せます!」

「な……ティ……ティファ!?」

 

 アンナ達には本当に申し訳ないと思う。

 せっかくこの王都から脱出する機会を……私が奪ってしまったのだから。

 

 でもきっと………!

 

「うんうん!ティファの言う通り!!私達はただの学生だけど……だからこそ!最後まで学園の皆の為に頑張ろう!!ね!?ソフィ!ナーサ!!」

「………私はどっちでもいいよ?ティファ達がそう決めたのなら、それについてくだけ」

「ええーー。勝手に決めないでくれる?せっかく逃げるチャンスだったのにぃ!!……ったく!!」

「あはは!そんな事言ってぇ!!」

「っちょ!?なに抱き着いてんのよ!?やめなさいよ!!」

 

 口でも文句を言っているナーサも、顔が笑っている……!

 

 そんな私達を見て、フローラ姫が感心した様に口を開いた。

 

「貴女達………本当に最高ね!!もし王都が元に戻って、まだ私が王族なら……絶対に貴女達に褒美を与えるから、楽しみにしてなさい!?」

 

 そう言って笑顔を作るフローラ姫を見て、私は選択を間違っていなかったと、改めて思う!!

 

 そんな私に、ルカース君は声を荒げる。

 

「な……何を言ってるんだ!?ティファ!!君たちは本当に邪神様の恐ろしさを理解していない!!あの方は、逆らった人間を簡単に殺してくれないんだ!!殺してくれと懇願するような……深い絶望を与える!!現に捕まった連合軍の人達は、今日見せしめに大衆の前で……拷問された後、処刑されるんだ!!」

 

 いったん言葉を切り、目を伏せて……声を震わせながら、ルーカス君は言葉を続けた。

 

「王都は終わりだ………。だから………」

「……でも逃げたところで……きっと少しだけ、ほんの数年寿命が延びるだけですよ……」

「!!!……ティ……ティファ………!」

 

 ルーカス君の言葉を私は否定すると、ゆるゆると首を振って言葉を続けた。

 

「邪神が王都を完全に掌握したら、次はきっとこの国全体に目を向けます。その時また……今度は国外に逃げるんですか?どこへ?」

「それ……は………」

「それなら私は、この場所でその時を迎えます。……友達達と一緒に。だから、ここで出来る事を精一杯頑張ります……!」

 

 私がそう決意を言葉にする。

 そんな私に、ルーカス君は目を見開いて………諦めた様に笑みを作った。

 

「君は………本当に変わらないね………。小さい時から……頑固でひたむきだ……」

「……ふふ。頑固は余計ですよ?」

「……はは。……………はぁぁ……分かったよ……ティファ。いい加減、俺も逃げるのは疲れた。……それは家族という柵からも……俺自身の奥底から溢れ出る屑っぷりからも………!」

「ルーカス君………」

 

 ルーカス君はそう言うと、今度は優しい笑みを作って……そう、この学園で再会して一度も見た事のない……幼かったあの頃の様な笑みを作って言葉を続けた。

 

「俺も君達と最後まで戦う。だって最後は………好きな人と一緒にいたいからね」

「……!!」

 

 そう言って優しく微笑みかけるルーカス君に、私は状況も忘れて頬が朱くなるのを抑えられなかった。

 状況が状況だし、こんな所でそんな事を言われても……!!

 

 ルーカス君の言葉に固まった私を見て、フローラ姫は苦笑いして、ルーカス君に言った。

 

「はいはい!そういう青春は後でね?ともかく……協力してくれるって事でいいのよね?ルーカス君?」

「……ああ。君達に協力するよ……」

「そう!!ならよかった!!じゃあ早速だけど、今捕まっている連合軍の………!!」

 

 フローラ姫が目を見開いて、言葉を止める。

 

 何だろうと思いフローラ姫の視線を追うと……ルーカス君の奥に、黒いフードで顔を隠した三人の黒づくめ達が私達を見据えていた!!

 

 ルーカス君も、フローラ姫の視線に気づき後ろを振り向き……驚いたように目を見開く。

 

 あれが……邪神教という人達なのだろうか?だとしたらなぜここに!?

 

「お………驚いたな?……思ったより早くお越しになったみたいだね?でも……この裏路地に用はないはずだ……ぐべぇえ!!?」

「ルーカス君!!?」

 

 ルーカス君が言葉の途中で突風に吹き飛ばされて壁に激突する!!

 こんな突風を発生させることが出来るのは……この中ではソフィアしかいない!!……でもなぜ!?なんでソフィアはいきなりルーカス君を攻撃したの!?

 

 しかし、私やアンナ達が驚いて声を上げるよりも早く………ソフィアは私達を見据えて、黙っている邪神教へと駆け出していた!!

 

 ………そして………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コウ!!!!!」

 

 三人の黒づくめの中の中心に立っている、小柄な人に………抱き着いたのだ!!……って!!コウ!!?

 

「ええ!!?コウ!!?」

「はああ!?え!?ちょっとソフィア!!?」

 

 アンナとナーサが驚きの声を上げる中、そんな事はお構いなしにソフィアは涙を流しながら強く……強く、黒づくめの人を抱きしめる。

 

 そんなソフィアを、黒づくめの人は優しく抱きしめ………そしてフードを外した。

 

 そして露わになったのは……美しい青い瞳を持った、銀髪の少女……!!間違いない!!彼女は!!!

 

「コウ!!」

「コウぅうう!!」

「コウ!!あんた!!なんで!!!」

 

 私達も急いでコウに駆け寄って、ソフィアごとコウを抱きしめる!!

 

 そんな私達にコウは少しだけ困ったような笑みを作って……口を開いた。

 

「皆。心配かけてごめんね?でも……皆が無事で、本当に良かった……!」

 

 そう言って目尻に涙をためるコウを見て………私はようやく、この王都で止まっていた時間が動き出したような………そんな気がしたのだった………!

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