最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
「いやはや本当に感謝しておりますよ!!こうして邪神様にお目にかかれたことも!!我が信徒を邪神様が治める街に迎え入れて下さった事も!!やはり私の天命に狂いは無かった!!貴女こそ真の神!!世界を混沌と暗闇と絶望に墜とす最高の女神様です!!」
邪神様の前で、上機嫌でペラペラと喋る邪神教の教祖、エドワ・ホズームを見ながら、僕はそのうさん臭さにジト目を止められないでいた。だって……見るからに変なんだもん。
仮面を被ってるけど、その仮面自体もめっちゃ変なんだ!!口をすぼめて曲げたような表情の変なおっさんの仮面を被ってる!!
でもそんな僕の視線などお構いなしにエドワは更に言葉を重ねる。
「我が信徒たちは、これから六ヶ所に分かれて邪神様への祈りを捧げます!邪神様に捧げる生贄を祭壇に立たせ、その周りを信徒たちが囲み………その周りを、この邪鉱石で囲み………そして祈りを捧げるのです!!絶望の歌を添えて!!」
「……くくく。私の魔力にも何も反応しない石が邪鉱石とやらか?……お前は本当に可笑しな奴だ!ははは!」
「いえいえ!!本当にこれは、邪神様のお眼鏡にかなうと思いますよ!?なんたって貴女が一度封印されてしまった後に発見された、それこそ最近の代物ですから!!」
「ほう?それはそれは……一体その石がどんな力を発揮するか、本当に楽しみじゃないか……。ははははは!」
邪神様がエドワの話に上機嫌に答えるが……あの石一体何なんだろ?……なーんかどっかで見た事ある気がするんだけど………どこだろ?
てゆーか本当にどうしてこうなった!!
僕はエドワと、その弟子という仮面(こっちは普通。能面みたいな仮面)で顔を隠して、無言を貫く男と、もう一人……こっちは女性かな?を睨みながら、なぜこうなったのかを思い出していた……!!
◆
邪神様は黒騎士や勇者エイシャ、そして
呪いにより暴走していた聖王騎士達をそのまま手先とし、民衆達へと差し向け、王都を出ようと逃げる者にたいして、王都を囲う巨大な壁を作り出した。
絶望と狂気というのは伝染するもので、狂ってしまった聖王騎士達に呼応する様に、街の人間達もまた絶望と狂気を振りまき、そしてそれに適応できない者はフォストニア学園へと逃げ込んだ。
僕的に、邪神様は直ぐにフォストニア学園を潰すんだろうと思ってたけど……フォストニア学園で籠城する者達から溢れる、高濃度の絶望は邪神様にとっては最高のスパイスらしく、彼らが限界になるまでは、放っておくそうだ。……相変わらず悪趣味である。
あ!!因みにレグロス君だけは暴走後に力尽きて普通に死にました。南無三。
どうにも邪神様に対する圧倒的憎悪が、呪いとうまくかみ合い過ぎて限界突破しちゃったみたい!!まぁそれだけじゃ無くて、邪神様に両腕奪われちゃって出血多量な所もあると思うけど……まぁどっちでもいいや!!ばいばい、レグロス君!!来世に期待!!
……と!言いたい所だけど!!レグロス君にはまだまだ働いて欲しいので!!死体をいじくりまわして改造人間にしちゃいました!!やったねヨハネ君!!友達がふえ……復活したよ!!
それと聖王のヨハネ君だけど………彼の方はまだ生きてます。といっても、もう廃人みたいになってるけどね!
邪神様復活、聖王騎士団の暴走、そして王都の陥落と、今まで彼が頑張ってきたことが全て無駄になる所か……何一つ意味のない、それこそ邪神様を愉しませるだけの結果に終わっちゃったヨハネ君は、レグロス君の死が最後のきっかけになって……そのまま心が壊れちゃいました!!
今では王座の端の方で、体育座りして……一人でずっとブツブツ喋ってるだけの可哀想な老人になっちゃった!!………でも半分は自業自得かな?
だって彼やレグロス君達がやって来た、モンルミエール一族の皆殺しは……正直褒められたものではないし、そのしっぺ返しが来てると思うと……彼らに殺されたモンルミエール一族も溜飲を下げる思いなんじゃないだろうか?……知らんけど!!
んで、そんなヨハネ君なのだが……もう廃人なので、絶望もしないし、正直邪神様的には用済みなので、処分されるかと思ったんだけど………そんな廃人になっちゃったヨハネ君を、邪神様は大層お気に入りの様で、よく暇になってはヨハネ君の所に行って、頭を撫でたり、頬ずりしたりしてる。
メイドに聞いた話だと、何と夜には自分の寝床にヨハネ君を連れて行って、一緒に寝ているそうだ!!
…………邪神様はそんなにおじいちゃん趣味だったのだろうか?
んで、あんまりにもヨハネ君に入れ込むので、気になって邪神様に聞いてみたんだけど………
「ん?ああ……。ヨハネは私が封印される前から気に入っていてな?……くく!この男、腹の中では、父親の仇である私を恨んでいるのに、それをおくびにも出さず私に尽くしていてな……。その姿が余りにも健気で可愛くて………ついつい心を許してしまったのだ。まぁそのせいで油断して、前は封印されてしまったのだがな!ははははは!」
ぶつぶつと訳の分からない事を呟いて、虚ろな目をしているヨハネ君の頭を撫でながら、上機嫌に邪神様はそう言っていたが………それって最早恋では?……あ!!でも封印される前の邪神様の肉体は、確か男性だったな!!………今が女性の体で良かったよ……。主に見た目的な意味で(超偏見)。
てなわけでヨハネ君は健在(?)です。
あと前国王の醜い豚こと、ハッシュ君は今日もブヒブヒ元気に働いてます。
国王の座を降ろされ、大臣に降格したハッシュ君だけどその事に特に文句を言う訳でも無く、大臣としてちゃぁんと働いてくれている。
まぁ国民達が絶望に喘いでる姿には、思う所がない訳じゃ無いみたいだけど……正直ハッシュ君にどうこうできる訳も無いし、見て見ぬ振りをしている様だ。
ただ問題なのが………ハッシュ君の子供達なんだよねー。
ハッシュ君の子供の、長男のイリスタ君と次男のジョージ君は……まぁ腹に一物抱えながらもハッシュ君をサポートしつつ、働いてくれてるんだけど………問題が末っ子のフローラちゃんだ。
あの子の行動は突拍子も無くて、いつも困ってたんだけど……案の定というか、邪神様がこの城を治めた時、いつの間にかこの城から居なくなってた。
そして何より怖いのが………彼女お抱えの使用人のヒサギである。
彼に関しては最初はあんま興味なかったんだけど………初めて目が合った時から、僕は彼の事を警戒していた。
なんて言うか………どう見ても堅気じゃないのだ!!あの目!!僕をジッと見ていたあの瞳……何も感情が読めない所か、なんか……こう………獲物を品定めしてるっていうか………ともかくめっちゃ怖い!!
あいつ魔力持たない普通の人間ですよね!?なんでそんな奴を怖がらなきゃいけないの!!?って思ってみても……やっぱり怖いものは怖い。
なので邪神様がこの城収めた時に、どさくさに紛れて殺しちゃお!!って思ってたのに……気付いた時にはフローラちゃん共々いなくなってた!!ヤダコワイ!!
◆
さてはて、そんなアクシデント(?)はありつつも、比較的穏やか(?)に邪神様は事を運んでいた訳なんだけど………つい先日、王都を除くエルセリオ王国の街と、隣の国のラヴァダイ王国の連合軍がついに王都へと攻め込んで来た!!
んで、その連合軍は我らが聖王騎士団があっさり片付けちゃって、生き残りは捕らえたんだけど………その後に、壁の外に変な集団が現れた。
数千人に及ぶ規模の大集団で、全員が黒いフードで身を隠し容姿が見えないようになっている。
そしてその先頭に立つ変な仮面をつけた変な男は、門に向かってこう叫んだ。
「我々は邪神様を求めて数千里!!ようやくこの地に辿り着いた『邪神教』と呼ばれる宗教団体です!!この度天命を受け、この地にやってまいりました!!どうか門を開けて、我々を受け入れて下さい!!共に世界を絶望で満たしましょう!!ああああああ!!邪神様ぁああああ!!ばんざーーーーーーい!!!!」
男はそう言うと、その場にひれ伏し邪神様に祈りを捧げ始めたのだ!!
そいつらの対処に当たっていた聖王騎士達は、流石に邪神様を崇めるっていう集団を殺す訳にもいかないので……どうしたらいいかと困っていた所、その知らせを受けた邪神様がそいつらを王都へ招き入れろと命令された!!………ただし条件付きで。
その条件とは、その男が門を開ける事。
めっちゃ簡単な条件だけど、多分男は門を通る事は出来ない。
何故なら……あの門は邪神様への信仰心によって開錠されるのだ!!あんな腹に一物ありそうなやつに………!!って思ってたら、何とその男、あっさり門を開けちゃったのだ。………マジで!!?
門開けちゃったって事は、本当に邪神様を崇めてるって事で………もう彼らを疑う理由は無い。
なんで邪神様の言われる通り彼らを王都へ招き入れたんだけど………やっぱりめっちゃ怪しいよね!!?
その後教祖を名乗るその男と、その男と男の弟子二人が邪神様に会う為にこうして王城まで来た訳なんだけど………やっぱりどう見ても怪しいよぉ!!
でも奴らが何か企んでるって証拠はないし、邪神様も楽しそうだしで………僕は挟む口がなくなってしまったのだ。
んで、こうして教祖と邪神様が楽しそうに会話してる訳なんだけど……この先どうなっちゃうんだろ?
僕は目の前で楽しそうに話す二人を見ながら、気付かれない様にため息をつくのであった………。………うーーーん。何度も言うけど、やっぱりめっちゃあやしいよーー。