最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第21話 本当に大切な私の……(ミリヤ視点)

 日に日に大きくなるコウへの想いを、私は自分でもよく制御出来ていなかったと思う。

 

 神父様やシスターは何れ何処かのタイミングでコウに、彼女はこの世界の守り神である白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘だと伝えなければならないと常々言われていた。

 

 でも……私はそれをコウに打ち明けられずにいた。

 だってもしこの事をコウに打ち明けたら彼女は……私の前から姿を消すかも知れないからだ。

 

 白銀の(エンシェント)ドラゴンは何も聖なる森に行けば何時でも逢える訳ではない。

 彼女はこの世界の守り神なので、何時もは何処か私たちの知らない神秘の場所で過ごしていると聞いた。

 

 だから怖かった。

 コウが真実を知って、それこそ二度と会う事が出来なくなってしまったら、私はもう生きてはいけなかったからだ。

 

 神父様やシスターはコウと一定の距離感で接していた。

 二人はどんな子供達にも優しく、非常に慕われているがやはりコウに対しては普通の子供たちと同じように……というわけにはいかなかったのだ。

 何故ならコウはこの世界の守り神、つまり二人が信仰している神々の一柱だからだ。

 勿論二人ともコウを非常に可愛がっていたし、愛していたがやはりどこか違った目でコウを見ていたと思う。

 

 でも私は……勝手な話だが私が死ぬまで、コウには一緒に居て欲しかった。

 私の夢である聖なる湖の近くに建てる小さな家で……二人でずっと一緒に過ごして、私を看取ってほしかった。本当に自分勝手な願いだが……。

 

 だから焦っていたんだと思う。

 勇者がコウを連れてどこかに行ってしまいそうだったから。

 

 だからあんな……魔族の誘惑に乗ってしまったのだ。

 

 そしてコウを独り占めするために……コウを傷つけようとした。

 いや……コウを傷つけたのだ。

 

 愕然とした目で私を見ていたコウを思い出し、心が痛む。

 信じたものに裏切られた……そんな目で私を見つめるコウの姿に私の心は叫び声を上げていた。

 

 もう何もかも嫌だ。このまま目を覚ましたくない……。

 でも私の意識は私と意志と反して目を覚まして……………。

 

 

「ミリヤさん……!!」

 

 目を覚まして最初に見たのは、心配そうに私に覗き込むコウの顔だった。

 

 私は……いったい……。

 

「目を覚ましたようだな……。俺は状況をあまり把握できていないのだが、一体何があったんだ?」

 

 コウの後ろで腕を組み、私を射抜くように見つめる勇者が疑問を問いかける。

 私は……そうだ……。

 

「私が……コウを襲ったのよ……」

「違います!!それは魔族のせいで……!!」

「いいえ……。あれは私の意思だった。私が……自らの手でコウを傷つけようとしたのよ………ごめんなさい……コウ……」

 

 確かに私は魔族によって心を操られていた。

 だがコウを襲ったのは私の弱い心のせいだ。私の心がもっと強ければ……あんなことにはならなかっただろう……。

 

 私の言葉を聞いてまたコウの瞳から涙が零れ落ちる。

 それを見て私は軋んで叫び声を上げる心臓を手で押さえながら口を開いた。

 

「ごめんね……コウ。私ずっとコウに言えなかった事があったの」

「……?」

「貴女は白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘なのよ。……だから……魔族は貴女を狙ってくるの……」

「……」

「これからも貴女を狙って大勢の魔族や刺客がやってくる……。そしてそんな時、貴女を守ってくれるのは私じゃない。……そこの勇者よ……。だから……」

「……」

 

 コウは下を向いて黙り込んでしまう。

 恐らくだがコウは……自分が何者なのか知らなかったのだろう。

 

「私は貴女とはもう……一緒に居ないほうがいいの……」

「……い……だ……」

「お願い……コウ。これが……貴女の為なの……」

「……やだ……」

「コウ……」

「いやだ!」

 

 コウは涙でぬれた顔でバッと顔を上げると叫ぶように言った。

 

「いやだ!!お願い……()()私を置いて行かないで!!一人にしないで……()()()()()!!」

 

 血を吐くように叫ぶコウの言葉を聞いて、私はハッとさせられた。

 

 ()()……という事は……!

 コウはもう既に自分が白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘だと気づいていたのだ。

 それでも、コウは私と一緒に居てくれたのだ。

 なぜなら……コウにとって私は、大切な姉だったからだ。

 

 私は本当に勝手な人間だと思う。

 コウの気持ちなど無視して、何時も自分の気持ちばかりを優先して暴走する。

 

 でも、そんな私でもコウは姉と思ってくれていたのだ。

 

 コウは私にとって大切な大切な……妹だ!!

 

 私はコウを強く、強く抱きしめる。

 もう勇者に取られるとか、コウがどこかに行ってしまうとか、そんな事は関係ない!!

 私は……コウの家族なのだから!!

 

「ごめんね、コウ!!私が間違ってた!!これからもずっと一緒よ!!……離れたりなんかしないわ!!」

「うううう……ひっく……。はい!……ずっと……一緒です……!」

 

 泣きながら、しゃくりあげながら私の腕の中でようやく安心したように笑顔を作るコウに、私はようやく正しい選択肢を選ぶことが出来たのだと実感できる。

 

 もう間違ったりしない。これからどんなことがあろうとコウと私は一緒だ!!

 

「……ううむ。結局何が起ったかよくわからないのだが……まぁいいか……」

 

 私たちが泣きながら抱き合っていると、勇者が諦めた様にため息をついた。

 こいつまだ居たのね……。

 

「ミリヤ……お前がコウを襲った事に間違いは無いのだろうが、それは魔族によるものだったということだな」

「……そうよ……そうです。勇者様」

「無理に敬語など使わなくていい。……コウは自分が白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘だと知っていたわけだ……」

 

 勇者がコウに問いかけると、コウは私の腕の中から名残惜しそうに離れて勇者の前に立つと言った。

 こいつ(勇者)マジで空気読んで黙っててくれないかな?後でよくないか?

 

「はい……つい最近知りました……えっと……夢で……」

「そうか……。ならば君はこれから教会ではなく俺が保護しよう……と言いたいところだが、君自身はどうしたい?」

「私は……今まで通りミリヤさんと神父様と……みんなと一緒に居たいです……」

「だろうな……」

 

 勇者はため息をつくと、私を見据えて言った。

 

「ミリヤ……提案がある……」

「提案?一体何?」

 

「お前達……俺の仲間になれ」

 

 こいつは一体何を言っているのだろうか?

 突然の勇者の発言に、私とコウはポカンと口を開けるのであった。

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