最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
正直な話をすると、俺達の話し合いは最初から答えの決まった話だったのかもしれない。
この街に迷惑を掛けない、今よりもっと強くなる……その決意を胸に俺達は勇者パーティに加入する事を決めた。
当然、神父様達は俺達の決意にいい顔はしなかった。
だが、俺とミリヤの説得により渋々納得してくれた。
やはり決め手は昨夜の魔族の幹部達による襲撃だったんだろう。
ミリヤは自分が操られて俺に手を掛けようとしたこと、それを黒騎士と勇者によって救われた事を包み隠さず神父様達に告げた。
このままこの街に俺が止まれば、今度はミリヤだけじゃなく神父様やシスター、教会の子供達にまで被害が及ぶかもしれない。
その事を神父様も解ってくれたのだろう…………今更だけどマジで魔族達迷惑だな!!
シスターは最後まで反対したが、俺達の決意にとうとう折れた。
「もしつらいことがあって耐えられなくなったらいつでも戻ってきてくださいね……。私たちは家族なのですから……!」
そう言って俺を抱きしめてくれたシスターに、俺はまたちょっと泣いちゃったのであった。
しかし一番説得が大変だったのはジュディとコリン、そして意外な事にランディだった。
なんでランディがあんなに反対するのかマジでわからん。
あいつ事あるごとに俺に突っかかってきたし、俺の事嫌ってるのかと思った。
結局ジュディは俺の説得に納得してくれて、ランディはミリヤの脅しに屈した為何とかなったが、問題はコリンだった。
俺と離れたくないと泣きじゃくるコリンを、こっちも涙腺ゆるゆるになりながらなんとか宥めて説得するのは本当に大変だった。
神父様とシスターのお陰で何とか説得する事は出来たのだが、それでも涙をいっぱいに溜めて俺に視線で訴えかけてくるコリンに俺の心は折れそうになっていた。
とりえずこれで教会の皆は説得出来た(?)訳だが、ミリヤはこれからギルドの人達を説得しなきゃいけないだろう。
だってミリヤはギルドでは中心的な人だし、ミリヤの穴埋めは大変なんじゃないだろうか?
ギルドの説得も大変そうだなぁと、俺は心の中でため息をつくのであった……。
◆
「コウ……勇者は今ギルドに居るみたいだから、行ってみましょか!」
ミリヤの一言で俺達はギルドに居るエイシャに逢いに行くことになった。
今朝教会を訪ねていた時に、エイシャはその後ギルドへ行くと聞いたらしい。
ちなみに行くのは俺とミリヤ……だけではなくコリンとジュディも一緒だ。
何時まで俺がここに居るか判らないので、コリンがどうしても一緒に居たいとお願いしてきたのだ。そしてそれに乗る形でジュディも一緒に行きたいと言ってきた。
ギルドの人達は見た目は厳つい人が多いが、根はいい人達なのでもちろん断る理由はない。
ミリヤもオッケーしてくれたので、四人でギルドに行くことになった。
ランディも着いてきたそうだったが、ミリヤの睨みで泣く泣く諦めた様だ。
何はともあれ俺達は皆で仲良くギルドへ向かった。
ギルドに入ると中では何やら人だかりが出来ており、誰かが言い争っている様だ。
なんだろう?と人だかりを見ていると、ギルドの受付嬢であるマイカが俺達に話しかけてきた。
「ミリヤ!コウちゃん!大変なの!勇者様と……オーバさん達がもめてるの!!アレックスさんが抑えてくれてるけど……一触即発だよ!!」
「はぁ!!?あの馬鹿達何やってんの!!?」
えええ!!?オーバってば何やってんだ!!?
仮にも勇者であるエイシャと揉め事なんて、いくらオーバでも少し考えられない!!
俺達は急いで人だかりの中心へと向かった。
そこでは……
「ふざけんな!!コウちゃんもミリヤもテメェみたいな勇者と一緒にいくなんて納得できるか!!」
「そうだぜ!!俺らはお前ら勇者の事なんざ信用してねぇ!!」
「やめろ、オーバ!!皆も!!勇者様に失礼だろう!!」
随分不機嫌そうに腕を組み椅子に座っているエイシャに、オーバ含むギルドのメンバーが野次を飛ばしておりそれをアレックスが必死に抑えようとしていた。
「お前らの信用も納得もいらん。コウも俺と行くことに納得しているはずだ……余計な口出しをするな」
……って揉め事の理由はやっぱり俺達かーい!!
何やってんだこいつら!!
「アンタたち!!何やってんのよ!!」
「ミ……ミリヤ……それにコウちゃんも……」
「周りの迷惑考えなさいよ、オーバ!!アレックスもこいつら抑えられなくて何がリーダーよ!!!」
ミリヤの一言にオーバ達はバツが悪そうにそっぽを向き、アレックスは項垂れてしまう。
「あんたもよ勇者!!どうせ言葉足らずでオーバ達を怒らせたんでしょ!!?」
「お前の中の俺は一体何なんだと後で問いただすとして、俺は可笑しなことは何も言っていない。俺がここに座ってゆっくりとしていたら、こいつらが突然俺に詰め寄ってきただけだ」
それはそうと、とエイシャは言うと俺に向き直り笑顔で話しかけてきた。
「コウ。今朝はゆっくり休めたか?」
「は……はい!……すみません……案内役なのに……」
「はは!気にするな。あんなことがあった後だ、心労も溜まっていただろうし今日はゆっくりしていても良かったんだぞ?」
そう言って優しい笑顔を見せるエイシャに、俺は見惚れてしまっていた。
決して!決っして惚れてしまった訳ではないが!!同性だろうとやっぱりイケメンの笑顔は威力があるのである!!いま一応異性だけど!!
見ればジュディもコリンも顔を赤くしてエイシャに見惚れている。
そんな俺達を余所にミリヤはため息をつき、エイシャに言った。
「私たちの気が変わる前に、アンタに言っとこうと思ってね」
「ほう?それはもしや……」
「ええそうよ。私達……アンタのパーティーに入るわ」
勇者を見据えてミリヤは宣言すると、片目をつぶり手をひらひらとさせて言葉を続けた。
「まぁアンタにとっては私はついでなんだろうけど、私ももっと強くならなきゃいけないの!その為にアンタを踏台にさせてもらうわ!!」
「く……はは!!いいだろう。まぁ出来る事なら好きなだけ踏台にすればいいさ……。それよりコウ。本当にいいんだな?」
エイシャは俺を真剣な目で捕らえると、続けた。
「俺が誘っておいて言うのも可笑しいが、俺の側に居ても危険が無くなる訳じゃない……。君は俺が必ず守るが、それでも怖い思いをすることもあるかも知れない。だから少しだけ覚悟はしておいて欲しい」
エイシャが言わんとしてる事はわかる。
要するにお前はどこに居ても危険だけど大丈夫か?って事だろう。
「はい!大丈夫です……よろしくお願いします!」
俺が宣言するとエイシャは大きく頷き、椅子から立ち上がり俺を手を取って言った。
「ありがとう、君がともに居てくれるのなら俺は誰にも負けない。必ず君とミリヤを守り切り、魔王を打ち倒すと約束しよう……!」
エイシャの言葉にちょっと胸が熱くなる。
何かこうやって勇者のカッコイイセリフ聞いてると、物語に入り込んだようだ。
ミリヤが「私は守ってもらう必要なんて無いけど……」と呟いているが、エイシャはそれを無視して言葉を続けた。
「出発は一週間後で大丈夫か?少し急になるが……」
「え……っと……」
「ええ、大丈夫よ。私達、アンタから逃げる為にすぐにでも此処を発つ予定だったしね」
「はは!なら大丈夫だな!では一週間後、共にこの街を発つ!」
その言葉にコリンの表情が暗くなるが、異を唱える事はなかった。
俺はそんなコリンの手を強く握りしめる。するとコリンは少し涙を溜めた目で俺を見て、ぎゅっと俺に抱き着いてきた。
一週間後……俺は二年間過ごしたこの街を発つ事になる。
一抹の寂しさ……所では無いさみしさを感じるが、ぐっと堪えて俺は決意する。
必ず魔王を打ち倒して無事にこの街に帰ってこよう!!
その為には俺の黒騎士としての力だけではなく、
俺はコリンを抱きしめながら強く拳を握りしめ、決意を燃やすのであった!!
「だから俺達は……コウちゃんたちが勇者と一緒に行くなんざ……認めてねぇ!!!」
俺達の決意に水を差す様にオーバが声を上げる。
そーいやこの人たちまだ納得してなかったんだったな……。
どうしたものかと俺は内心ため息をつくのであった……。