最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第26話

 あれよあれよと一週間がたち、俺達の出発の日が来た。

 その後、魔族が現れることも無く平和な一週間だった。エイシャ曰くそのせいで黒騎士に逢う事が出来なかったと残念がっていたが、まぁそのうちまた会えるだろ、間違いなく。

 

 そーいや最初にいたエイシャの護衛の人達は、あの日のうちに帰ってしまったそうだ。

 何でもエイシャに護衛は不要、むしろ足手まといだからだそうだ。酷い。

 

 そんなわけで今日はまたエイシャの護衛の人が来ている。

 馬車も用意してあり、これで俺達は王都まで行くらしい。

 

 何か勇者の旅って徒歩のイメージだったけど、どうやら王子様でもあるエイシャはそんな庶民的な勇者とは一線を画す様だ。

 

「コウ……私は君にとっては大した親代わりにはなれなかっただろうが……君は特別な存在だ。これからも必ず神々が君を守って下さるだろう……。どうか、気を付けて」

「神父様……」

 

 神父様は大きな手で俺の頭を撫でてくれる。

 この世界に来て神父様とシスターは俺にとっての親みたいな、先生みたいな存在だ。本当に二人にはお世話になった。

 

「コウ。体には気を付けてね?」

「シスター……!」

「無事に戻ってきてね!!コウ!!」

「ジュディ!」

「コウちゃん……!本当に本当に……きをつけてね!」

「コリン……!」

 

 他にも教会の子たちの温かいエールを受け(ランディは除く)俺の胸も熱くなる。

 ちなみにランディは見送りには来てくれたのだがそっぽを向いている。

 

「ミリヤ……コウちゃんを頼む。俺は傍にいれないから……」

「……はぁ……。あんたに言われなくたってコウは私が守るわ。それより……ギルドの事よろしくね」

「ああ。ギルドの事は心配いらないよ!」

 

 アレックスとミリヤが別れの挨拶をしている。

 すると俺が二人を見ているのに気付いたのか、アレックスがこちらに歩いてきた。

 

「コウちゃん……君は俺にとって……俺達にとってとても大切な癒しになってたんだ」

「アレックスさん……」

「君が遠くに行ってしまうのはとても寂しいけど……俺も我慢するよ!……体にはくれぐれも気を付けてね?そして……必ず無事に戻ってきてね?」

「はい!アレックスさんもお元気で!」

「はは!もちろんだよ!…………」

「……?」

 

 アレックスは何か言いたげに口を開こうとして、閉じてしまった。

 なんだろ?ここで言ってくれないと何かもやもやが残るんだけど……。

 

「アレックスさん?」

「……君がこの街に戻ってきたときに、伝えたいことがあるんだ……だから……必ず戻ってきてくれ……!」

 

 それ死亡フラグー!!!!

 やめてやめて!!今言ってよ!!

 死亡フラグだしめっちゃ気になるじゃん!!!

 

 でもこれは言ってはくれないんだろうなーーー。

 

 俺が一人でもやもやしていると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。この人は……

 

「マイカさん!」

「ふふふ!コウちゃんがギルドの受付やってくれないの寂しいなー」

「私もです……。ごめんなさい、マイカさん。またバイトするって約束したのに……」

「あはは!それはコウちゃんが無事に戻ってきたときにね!また一緒に受付しようね、コウちゃん!」

「はい!」

 

 俺はマイカの方を振り向き、マイカはまたぎゅっと俺を抱きしめてくれた。

 

「体には気を付けてね?無理とかしちゃだめだよ?」

「はい!マイカさんも気を付けて……!」

 

 俺達はしばらく抱き合って、別れの挨拶をした。

 マイカはその後、ミリヤに別れの挨拶をするためにミリヤの方へと歩いて行った。

 

 本当に本当に、俺はこの街の人達が大好きだ。

 絶対に魔王を倒してこの街に帰ってこよう!

 俺は決意を新たに拳を握りしめるのだった!

 

 その後市長や奥さん、ギルド長とかとの別れの挨拶を終え、いよいよ俺達は馬車へと乗り込んだ。

 エイシャ、ミリヤ、そして俺とキーちゃんだ!

 

 ん?キーちゃんって誰だって?

 

 蝙蝠の様な小さな魔物キーちゃんは、実は四日前ぐらいに教会の結界を通りふらりと現れた魔物だ。

 教会の結界に触れた事で警報が鳴り、駆け付けたランディ達にいじめられていた所を俺達が助けたのだ。

 

 弱弱しくなって今にも死にそうな魔物の子を俺は見過ごすことは出来ず、引き取って介抱したのだ。

 

 基本的に狂暴な魔物は除いて、魔族に操られていない限り無害な魔物もいる。

 しかし皆は魔物というだけで駆除しようとする。

 もちろん害獣を駆除するのは当然のことだしそれを間違ってるとは言えないが、エゴかもしれないけど俺はか弱い魔物をあまり放ってはおけなかった。

 

 幸いミリヤも魔物に対してあまり悪い印象を持っておらず、快く介抱を手伝ってくれた。

 ちなみになぜキーちゃんなのかと言うと、キーキーと鳴くからである。

 

 昨日ぐらいに自力で飛べるぐらいまで回復したキーちゃんなのだが、いざ森に帰そうとしても俺から離れなくなってしまった。

 

 どうやら懐かれたみたいで、このまま森に帰すことも出来なくなってしまったこの子を教会に残しておくことも出来ないので(ランディ達にまたいじめられるから)、一緒に連れていく事になったのだ。

 

 エイシャに頼むと、少し考えた末オッケーを貰えたのでこうして問題なく連れて行けるのである!

 

 ともかくキーちゃんも加えた俺達は、二年間過ごした街を後にして王都を目指すのだった!!

 

 思えばこの二年間……色々大変だったけど本当に楽しかった。

 俺を拾ってくれたミリヤには本当に感謝しているし、教会の皆にも感謝している。

 

 でも………。

 

 結局この二年間で黒騎士の評判が変わることはなかったし、多分もうこれからも変わる事はないだろう。

 

 何より俺が白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘だと分かった今、事情は前より複雑になった!

 だって白銀のドラゴン(母親)殺したの俺だし……。

 

 俺達の乗った馬車が見えなくなるまで手を振ってくれている皆に、馬車から身を乗り出し手を振りながら俺は強く決意する。

 

 そう、やはり……………黒騎士の中身が俺だと、絶対にバレる訳にはいかない!!!

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