最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
魔王様で最も恐ろしい所はと聞かれると、やはり僕の様な存在を作り出す狡猾さではないかと思う。
自ら圧倒的な戦闘能力を持ち合わせておきながら、万が一の為のリスクマネジメントを考えておられる知略の怪物。それこそ魔王様を象徴する事の一つではないと僕は思っている。
ラヴァダイ王国の第二王子として生を受けた僕ことフェネクスは、物心つく頃には自分の中にもう一つの何かがいる事に気付いていた。そして
しかし意外と恐怖は感じなかった。
僕たちが生まれて数年がたち、
彼の仕事はこの国に生まれてくる勇者を、力をつける前に予め消し去る事だった。
その為に魔王様が秘術を使い、僕がまだ母親の胎内にいる時に彼の魂を僕に埋め込んだのだ。
そして予定通り僕の弟が生まれ、彼がついに自らの仕事に取り掛かる段になって……
──────無理!!
その赤子を一目見ただけで任務失敗を悟った。
その溢れんばかりの魔力。赤子だと言うのに、触れれば消し飛ばされそうな表面化された暴力。
ありゃ無理だ……諦めよ!!
僕と彼は自分たちの敗北をあっさり受入れ、弟エイシャの殺害を諦めた。
僕は彼と繋がっているが戦闘はからっきしで、出来る事といえばちょっとした特殊能力だけだ。それも仲間ないし他人の能力を増幅させるといった類のだ。
あ!あと僕は実は不死身なのだ。でもこの不死身、神器の攻撃などには無意味だから結局エイシャ相手には何の意味も無かった。
赤子相手に恐れをなした僕たちを、仲間の魔族達は大層馬鹿にしたけど、じゃあ君たちが変わりに行ってみたらって思ってた。
まぁ成長したエイシャを見たら、やっぱり赤子の時に殺しとけば良かったかなぁとは思ったけど……。ま!どちらにしろ無理だけどね(笑)。
僕は魔族の魂が入ってはいるが、半分人間なのでもちろん人間を愛していた。
両親は尊敬しているし、堅物の兄だってかわいい妹だって、当然エイシャだって愛していた。
あと女の子が大好きだ!
これは彼とも意見があった。
なんと彼も人間のないし魔族の女の子が大好きだったのだ!これも彼と波長が合う理由の一つなのかな?
勇者殺害に失敗した僕たちは、取り合えず王族としてのらりくらりと生活していた。
エイシャと他の勇者達が、魔族の幹部を大勢討ち取っても僕と彼は、まぁそうなるだろうな……程度で特に動じる事は無かった。
だがここでもまた魔王様の作戦が光る。
勇者達に魔族を多く倒させる事によって、自然と魔族達は人間界から撤退して行った。
そして……まぁ予想通り勇者達は堕落していったのだ。
これも魔王様の作戦の内。勇者達の牙は、同族の人間たちによって抜かれてしまったのだ。
でも……僕が最も牙を抜いて欲しかったエイシャだけは違った。
エイシャが堕落する事なんて無かったし、それ所か益々積極的に勇者としての活動をしている様にも見えるエイシャに、僕は心底がっかりした。
僕だって出来る事なら半分血を分けた兄弟を手にかけたい訳じゃあないのだ。ま!実力的に無理だけど!……何はともあれどうしたもんやら……。
僕たちが思い悩んでいる間にも、魔王様は次なる一手を既に繰り出していた。
それは
なんでも
そして彼女は今、次世代の
大幹部であるヴェネア様率いる部隊は、作戦通り
勇者達は力を失いめでたしめでたし、魔王様の大勝利!!……となる筈だったのに、現実はそう上手くはいかないらしい。
なんでも殺害した筈の
なにそれ?ズルすぎない?神々はちょっと人間贔屓すぎない?
僕はすぐに盗賊達を雇って、
盗賊達は娘を攫うまでは良かったようだが、その後現れた黒騎士によって討ち取られてしまったそうだ。
黒騎士……。
まぁ十中八九、神々が
だってそうじゃないと説明がつかない。いくらなんでも何時もタイミングが良すぎるのだ。
その後、なんやかんやあってエイシャが
だめだこりゃ!もう魔族はおしまいだ!!
もう僕達は魔族であることを捨て、人間として大人しく生活しようかと思っていた矢先、そんな僕たちのプチ裏切りを見越してか、魔王様は新たなる大幹部をこの王都へ送り込んで来られたのだ……。
勘弁してよ!!