最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第42話 世界一気色の悪い娘(第二王子フェネクス視点)

 彼女を一目見た時………なんて気色悪い娘なんだろうと、心の奥底から思った。

 

 揺らめく銀髪も綺麗な青い瞳も、そして整った顔立ちも本来なら僕の大好物の筈だ。だというのに……。まったく食指が動かない所か、余りの気持ち悪さに吐き気を催していた。

 

 これが……白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘……!!

 

 なるほど……これはさっさと始末しないといけない。僕達魔族にとってあってはならない存在。

 

 僕はこの時初めて、魔族としての自覚と決意が胸の奥底から沸々と沸き立つのが解った。

 

 

 魔族の大幹部であるザガン様の僕達への指令は、白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘の完全なる殺害、及び勇者の無力化であった。

 

 幸いにもエイシャが僕の弟であるため、最悪命まで取る必要までは無いとのことだ。魔王様や大幹部様の広い心には感謝してもし足りない。

 

 さてどうしたものかと思っていたら、なんとエイシャは白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘、コウに恋していて、何れは婚約者として迎え入れたいと言ってきた。

 

 うーん。

 エイシャには非常に悪いが、流石にそれはダメだろ。だってその娘、僕が殺さなきゃいけないし。

 

 でもそんな事口に出す事なんて出来ないから、とにかく本物に会ってみようと思って……冒頭に至る訳である。

 

 僕は彼女達と顔合わせ後、直ぐに動いた。

 まず予め用意していた計画を実行に移す。それは…………男爵令嬢であるファリス・リア・アイリアスを使った兄レオンとの婚約騒動である。

 

 ファリスはしがない男爵令嬢で、特に面白味もない女性だったが、彼女にはとある能力があった。

 

 それは魅了(チャーム)

 

 彼女自身知ってもいなかった能力だが、そういった魔術を使える者を僕は部下を使って調べさせていたのだ。そして、彼女に近づき僕は彼女にこう言った。

 

「君が大好きな家族と、君が大好きな幼馴染の男……騎士団のリックって言ったっけ?付き合ってるんだっけ?まぁとにかく彼らに酷い目にあって欲しくなかったら、僕の言う事……聞いてくれるよね?」

「……!!?いったい……何を言って……!!?」

「ああ。ああ。断ってくれてもいいんだよ?まぁすぐに君の家を潰すことはしないよ?でも……リック君はどうなるかなぁ?彼……騎士団だしね!僕は王族……後は……説明しなくても解るよね?馬鹿じゃ無ければ!」

「……!!!」

「誰かに告げ口してもいいよぉ?でも……一応忠告だけど、君は何時でも監視されてるからね?それこそ……寝ている時も……お手洗いの時も(笑)」

 

 ファリスちゃんはとても従順な娘だった。なぜここまで僕の指示に従ってくれるのか解らないぐらいに……だ(笑)。

 

 僕は人の能力を増幅させる事が出来る力がある。

 それを使ってファリスの能力を増幅させ、彼女の魅了(チャーム)の力を最大限にした。

 

 あ!もちろん僕が魅了(チャーム)にかかってしまっては元も子も無いので、僕は予め大幹部様から抵抗(レジスト)出来る魔道具を頂いている。

 

 ともかくファリスちゃんは僕の予想以上に有能な売女だったらしく直ぐにレオンを、そして聖女教会の幹部連中そして……なんと父上までも魅了してみせたのだ!!たった二週間で!!

 

 ファリスちゃんの想定以上の働きっぷりに「君!大したもんだよ!!売女としての才能がピカイチだね!!」とファリスちゃんを褒めちぎったら彼女は顔を真っ赤にしてとても喜んでいた!!喜んでくれてよかった。僕としても彼女の苦労を労いたいしね!!

 

 彼女が裏切らない様に僕は、騎士団のリック君と彼女の両親を何時でも殺せるように、魔族達にお願いしていた。実際彼女が自分の行動に自己嫌悪して自ら命を断とうとした時、取り合えず彼女の家で昔からファリスちゃんをお世話してくれていた侍女を一人殺しておいた。

 

 そしたらファリスちゃんは今まで以上に働き者になってくれたよ!本当に助かる!!

 

 そんなこんなでファリスちゃんの働きっぷりのお陰で舞踏会で白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘を何とかエイシャから引きはがし、牢屋にぶち込む事が出来た。……ついでに公爵令嬢も。

 

 そして……今、目の前に捕らえられた白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘がいる訳である。

 

 

 本当に吐き気がする。この娘を見ていると。

 存在しているだけ忌々しい小娘。魔王様の害にしかならないこの世で最も醜い生ごみ。

 

 僕ことフェネクスは今、生まれて一番魔族に近づいていると思う。

 

「やあ!二人とも大丈夫かい!?いやー、兄上も酷い事するね?こんなかわいい子を二人も牢にぶちこむなんてさ!」

 

 僕は今笑顔を作れているだろうか?

 警戒されるわけにはいかない。何時如何なるタイミングでこの小娘が黒騎士を呼び出すか解らないからだ。

 

 警備の兵士たちは皆、眠らせておいた。

 殺しても良かったのだが……まぁそこは一応王子として、無駄な虐殺をしない為……かな?

 

 ともかく今この場には、捕らわれた白銀の(エンシェント)ドラゴンの娘と公爵令嬢、そして隠れている僕の仲間達しかいない。

 

 白銀の(エンシェント)ドラゴンの首を取る絶好の機会。

 今、エイシャ達が動いている。もたもたしていると、僕の全ての悪事が明るみになって、この計画は頓挫するだろう。

 

 素早く彼女を殺す必要があるのだが……本当に怖いのは黒騎士だ。

 でも、何時までも黒騎士を恐れていても始まらない。彼女警戒されない様に優しく語りかけ、黒騎士を召喚する間も与えず殺す……!!

 

 魔族フェネクスとしての、全てを掛けた戦いが今始まった……!

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