最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第52話

「あ……おねぇちゃん!またきてくれたんだね!!」

 

 ぬいぐるみを腕に抱き、ベッドから体を起こし無邪気に笑う青年。

 彼こそ今回の事件の首謀者であり、この国の第二王子でもあるフェネクスだ。

 

 何でも黒騎士()の解呪魔法を受けた後、目が覚めたらこうなっていたらしい。

 

 リリーナ様の証言や眠らされていた看守、そして何よりファリスさんの証言により、今回の首謀者は第二王子という事が証明されたが、それが無ければ危うく、第二王子にこんな事をした黒騎士こそ今回の事件の首謀者として追われる所だった。

 

 その後マリィの記憶解析魔法(禁術らしい)により、第二王子には魔族が取りついていたことが解った。しかもそれはつい最近では無く、なんと生まれた時から魔族の魂が取りついて、第二王子の魂と繋がっていたらしい。

 

 それを聞いた王妃様は、余りのショックに数日寝込むことになった。当然国王様もショックは隠しきれず、暫く項垂れていたぐらいだ。

 

 どうやって魔族の魂が第二王子に取りついたかは不明だが、恐らく魔王の仕業であろう事は解った。

 魔族の魂だけ解呪魔法で消し去った訳だが、長い年月繋がっていた事により、第二王子自身にも精神的ダメージが大きかったらしい。そして……心身ともに壊れてしまった第二王子はこうやって幼児化してしまった訳だ。

 

 当然こうなっては彼に罪を問う事も出来ない。

 第二王子の精神が戻るまでは、この部屋で軟禁されるらしいが……精神が元に戻る可能性は、絶望的らしい。

 

「あの子が罪を犯したことは……当然承知の上よ。罪は償わなければいけない……でも、あの子を……あんな目に合わせた魔族を!そして……黒騎士を……私は……」

 

 目を覚ました王妃様が力なく笑った後に、震えながら俺に言った言葉を、俺は戦々恐々としながら聞いていた。

 あんなに健康的で綺麗だった王妃様は、酷くやつれてしまった……無理もないけど。

 

 でも、幼児化してしまった第二王子のお世話とかしているうちに、最近では少し元気になってきた様だ。もう一度やり直そうと、そう思えたらしい。

 強い女性だと思う。王妃様には早く前みたいに元気になって貰いたいものだ。

 

 国王様もそんな王妃様達を見て、より一層街の復興に力を注いでいた。

 王族から犯罪者が出てしまった訳だが、意外な事にその事を深く追求してくる者はいなかったらしい。

 

 なんでもその背景に魔族が絡んでいる事で、今人間同士で争っている場合ではないと貴族たちも判断したらしい。その裏にはマリィや聖女教会の大神父様の働きかけが大きかった様だが……。

 

 そんなこんなで俺はまだ、王都で復旧作業を手伝いつつ、日々を追われている訳だ。

 

 

 街の綺麗な夜景が見える。

 こう見るとつい一週間前、爆破テロがあったなんて思えない光景だ。

 

 俺は今、王城のテラスで騎士団の手伝いをしているミリヤを待ちながら、街を眺めているのである。

 俺の腕の中ではキーちゃんがすやすやと寝息を立てている。

 

 そんなキーちゃんの頭を優しく撫でながら、俺は今回の事件の事を思い出し猛烈に反省していた……。それは……本当に(コウ)は役に立たねぇな!!という事である。

 

 マジで俺ってこの街に来てなんか役に立った事あったっけ?

 

 ……思い返してみても碌に役に立ってない所か……結構皆の足引っ張ってない?

 黒騎士としては流石に役に立ったと思うが、(コウ)としては何にも役になって無い!!

 

「はぁ……」

「ため息などついてどうした?」

「!!?」

 

 俺がひっそりため息をついていると、背後から声が掛けられた!この声は……!

 

「エイシャ……様……」

「くく。そんなに警戒しなくていいだろ?」

「う……警戒なんか……してません……」

 

 嘘です。めっちゃ警戒してます!

 そういえば色々あってうやむやになってたけど、エイシャとこうして顔を合わせるのは久しぶりだ。久々に面と向かって話すとやはりちょっと緊張してしまう。

 

 そんな俺を見てクスリと笑うと、エイシャは俺に向かって手を差し出して来た。

 

「?」

「晩餐会では結局踊ることは出来なかったからな……。一曲俺と踊ってもらえるか?」

「!!?」

 

 うああ!勘弁してください!!

 こんなタイミングで言われると思っていなかったので、完全に気が動転してしまう!……でも……。

 

「……はい。……よろこんで……」

 

 なんでだろうか?

 その手を振り払う気にはなれなかった。

 

 俺はキーちゃんを起こさない様にそっとベンチに寝かすと、エイシャの手を取った。

 

 

 誰も見ていない王城のテラスで、音楽も無く俺とエイシャは踊る。

 音楽が無いためどんなダンス踊ればいいのか解んないけど、とりあえずエイシャに合わせて適当に踊ってみる!

 

 ……うううう。変に意識するな意識するな意識するな!!

 俺は心の中で念仏の様に唱えながら踊っていた。

 

「……すまなかった……」

「ふえ?」

 

 俺が心の中で念仏を唱えていると、エイシャが話しかけてきた。

 

「君を……置いて魔族へ向かった事だ。……だが、あの時の君の言葉に俺は……救われたよ」

「!!?」

 

 あの時!!?

 もしかしてそれを言ったのは俺じゃなくて分身の(コウ)じゃない!!?

 分身とは記憶を共有できないから、何言ったか解んねぇ!!

 

「今回は随分と君を酷い目に合わせてしまった……。早く助けたかったが……」

「大丈夫です!だって結局……無事だった訳ですし……」

「……ありがとう。……あとこれは……君を随分からかってしまった事への謝罪だ。すまなかった」

 

 あ!!

 今度は若干笑いながら謝ってきた!!つまり……ちゃんと謝る気ねぇな!?

 俺としてはどっちかっていうと、牢獄とか爆発とかよりそっちの方がちゃんと謝ってほしいんだけど!!?

 

 けどまぁ……いっか。

 だんだん上手く踊れてきて俺も気分が良くなってきた!!……でも!!

 

「ゆるしません」

「!」

 

 べっと舌を出しそっぽを向く。……これぐらい許してくれるよね?

 エイシャは一瞬きょとんとした後……ふっと笑ってそれ以上は追及してこなかった。

 

 綺麗な夜景と月明かりを背に、俺達はバックミュージックもなく踊り続ける。

 ふとエイシャの顔を見ると、それに気づいたのかエイシャも俺を見て優しく笑う。……そんなエイシャにドキマギしない様にしながら俺はこの街での出来事を思い返していた。

 

 そして……何より深く心に刻むこと……。

 第二王子の記憶を奪い王妃様に若干恨まれ、リリーナ嬢を惚れさせて第一王子様に酷く恨まれ……何より結局騎士の人に説明すらせずに消えた為、騎士団の間でもあまりいい印象は持たれていない……つまりそう!!やはり俺は……!!!

 

 黒騎士の中身が俺だと、絶対にバレる訳にはいかない!!!

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