最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第58話

「コウ!!アイドルなんて……アイドルなんて……コウなら絶対に出来るわ!!間違いなくトップアイドルよ!!」

「……確かにコウならばアイドルが出来ると思うが……しかし………」

 

 こいつらアイドル舐めてんのか?というかアイドル解ってんのか!?

 そんな簡単になれるんだったら皆苦労なんてしないだろ!!

 

 大体にしてセントラルステージとやらまであと四カ月しかないんだ!どう考えたって今からアイドルやったって間に合わない!!

 

 だから解る!ギーツは恐らく絶対に無理だろうと解っていて、この条件を出して来たんだ!!つまり……。

 

 もうギーツ仲間にするの諦めて一旦帰ろーよー。コイツ絶対仲間になる気なんてないってーー。

 

「デュフフwwwでは拙者はこの辺でwwwドロンさせていただきますwww」

 

 俺が頭を悩ませていると、ギーツは疾風の如き素早さで店から出て行ってしまった。

 

「おい!!……っち!!逃げ足の速い奴め……!!」

 

 エイシャが舌打ちをして苦言を吐くが……そういやギーツってこの店に何しに来たんだ?

 もう聖斧売っちゃったんだから、またわざわざこの店に来る理由なんて無いと思うのだが……。

 

「まぁ……いい……コウ。本当にアイドルをやるつもりなのか?奴はああは言ったが、無理をする必要はないんだぞ?……そもそもあんな奴、俺達の仲間に入っても役に立つのか解らん」

「あ……いえ、アイドルなんて「やりますよ!!」……クルミ……」

 

 やらねーよ?そう言おうとしたらクルミに遮られた。

 

「私達絶対に来年のセントラルステージで……優勝してみせます!!」

「来年!!?」

「は?あんたアイドル舐めてんの?セントラルステージまであと四カ月しかないのに、どうやって優勝するっていうのよ?」

 

 なんでそこは現実的なんだよ!!まぁ俺もあと四カ月じゃ無理って思ってたけど!!

 でもギーツの条件は四カ月後のセントラルステージなんだよ!!というより最短で後一年四カ月この街に滞在するの勝手に決定しないでくれない?一応俺達急いでんだよ!?

 そもそも俺はアイドルなんて出来ないし、やりたくない!!

 

「来年……か……。流石にそこまでは待てないな……」

 

 エイシャが顎に手を当てて考え込む。そうだよね?無理だよね?

 クルミには悪いがここは諦めて「話は聞かせて貰ったわ!!!」……えええ、誰??

 

 突然店の扉がバーーーンと開かれて、一人の女性が入って来た。

 入って来たのは青いストレートの髪をなびかせ、ばっちりとスーツを着こなしたかっこいい感じの女性だった。 

 

 ……どうでもいいけどこの店武具屋だよね?なんで次から次へと場違いな感じの人(ギーツが場違いかは微妙だけど)がタイミングよく入ってくるんだろ?

 

「あ……貴女は!!!」

 

 クルミはその女性を見た瞬間、電撃に打たれた様に驚きを見せた。……君ホントに記憶喪失なの?

 

 青い髪の女性は、綺麗にウインクを決めて言った。

 

「初めまして!!私はアイドルグループ事務所のミュトス・プロダクションの社長をやってます、カノン・フジワラです!!どうぞよろしく!!」

 

 

 その後、武具屋で立ち話も……との事で俺達は喫茶店に移動した。

 カノンさんが案内してくれた喫茶店は、すごくお洒落な感じの喫茶店だった。

 

「さて……改めまして、私はアイドルグループ事務所の社長をやってます」

 

 皆がそれぞれ注文した飲み物に少し口を付けた時、カノンさんが切り出した。

 

「悪いけど、あなた達の会話を聞かせて貰ってたのよ。……まぁ勇者様の怒鳴り声は外まで聞こえてきたから、何事だって結構な人だかりが出来てたのよ?」

 

 コロコロと笑いながらカノンさんは言う。それを聞いたエイシャはバツが悪そうに顔を顰めた。

 

「それで、貴女達四カ月後のセントラルステージで優勝しなければいけない……って聞かせてもらったの」

「ふむ……しかしそれは実質不可能なんだろ?」

 

 エイシャが顔を顰めたまま言った。

 

「まぁ普通に考えたら無理ね!でも……丁度いい話があるの!貴女達にも!私にも!!」

 

 ズイッと身を乗り出して少し興奮気味に言うカノンさんに、俺は嫌な予感が止まらないのであった……!!

 

 

「はい!ちゅーもく!!この二人が、アイスとイリヤの変わりに君たちの新しいメンバーになる!!コウとクルミよ!!さ!二人とも自己紹介して!!」

 

「……コウです……。よろしくお願いします……」

「クルミです!!まだまだ皆さんに比べて足りないものは沢山ありますけど、頑張ります!!」

 

 俺達は今、興味深げにこちらを見てくる少女達の前で自己紹介をさせられていた。

 

 カノンさんの話はこうだ。

 カノンさんの事務所は決して大きくは無く、一つのグループを絶賛売り出し中だった。

 

 グループ名はLumi(ルミ)Twinkle(トゥインクル)

 総勢九名からなるアイドルグループで、去年からデビューして少しずつ人気を上げてきた。

 

 今年こそセントラルステージへ行けるかもしれない……!!それ程の知名度と人気が上がってきた時、事件は起きたらしい。

 

 それは、センターを任されていたアイスという少女の大怪我。

 

 何でも野外ライブでのリハーサル中に、魔道具の暴走による爆発に巻き込まれ大怪我を負ってしまったそうだ。聖女教会のシスター達の助力で一命は取り留めたそうだが、今年の復帰は絶望的らしい。

 

 そんな中、もう一つの事件が起きた。

 それはアイスと競うように切磋琢磨していたメンバー、イリヤの失踪。

 

 アイスが大怪我を負った数日後、彼女は失踪してしまったらしい。

 数日で見つかったのだが、見つかった彼女は心身共に普通では無く、とてもアイドルが出来る状態では無かったそうだ。

 

 人気のメンバー二人が抜けてしまった事で、Lumi(ルミ)Twinkle(トゥインクル)の活動は、セントラルステージを前に停止を余儀なくされた。

 

 それがつい二週間前。

 そんな絶望的な状況の中、カノンさんはたまたま俺達の話を耳にしたらしい。

 

 これはチャンスだ!!そう思い藁にもすがる思いでカノンさんは俺達に自分たちのグループに入る事を打診してきた、という訳だ。

 俺達にとってもまたとない話なので………クルミがこの話を受けた。なぜか俺も強制で。

 

 うあーーー。マジでアイドルやんの?

 いくら女になって早二年とはいえ、流石にアイドルやるのは恥ずかしすぎる!!!

 

 そんな俺の思いも空しく、話はとんとん拍子で進んでいくのである(泣)……。

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