最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由   作:でかそう

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第73話 セントラルステージ裏側での攻防②(勇者エイシャ視点)

「んっふふ。さ!時間が無いんでしょ?白銀の(エンシェント)ドラゴンが歌い始める前にケリ付けましょう!」

 

 目の前の魔族が俺達を催促するが、はいそうですねと、奴の言葉に乗る訳にはいかない。

 

「ふざけるな。なぜ貴様の様な危険な魔族を放置出来ると思って「私も自分の子達の為なのよ」……なに?」

「さっきも言ったでしょ?私アイドルプロデュースしてるの。Devil's(デビル) Wink(ウインク)って娘達なんだけど……あ!!あの子たちは人間よ!それは保障するわ」

「……」

「マフィア達は多分だけど、あの子達も一応はターゲットだと思うのよねぇ……。Lumi(ルミ)Twinkle(トゥインクル)程目立ってないけどあの子達もセントラルステージでどんでん返しがあるかも知れないし!!……Devil's(デビル) Wink(ウインク)Lumi(ルミ)Twinkle(トゥインクル)の後に歌うんだけど、もし彼女達も奴らの狙いなら……ま!放っては置けない訳!!おわかり??」

 

 魔族がアイドルをプロデュースするなど、俄か信じがたい。

 だが……。

 

 俺はしばし悩んでいると、ギーツが横から口を出した。

 

「わかったでござるぅ!!こいつは拙者が一緒に行動して見張っておきます故、エイシャ殿!!」

「ギーツ……貴様……」

「時間が無いのでござろう!!?ハリー!ハリー!」

 

 ……確かにギーツの言う通り時間が無いのも事実だ。

 このままずるずる考え込んでしまってはコウのステージが始まってしまう。

 

「くほほ!その様子じゃあ暗殺者達が何処にいるか……解っては居ないんでしょう??んでもぉ……私にはそれが解るのよん!!」

「なに!?」

「なん……だと……?」

 

 魔族の言葉に俺とギーツが驚きの声を上げる。

 

「くほほ!!それを信じるか信じないかは……貴方たち次第だけどぉ!!んでもショージキ私一人じゃ手が足りないのよぉ。この街には私の部下も連れてきてないしねん」

 

 くそ!!

 俺が魔族の言葉を信じるのか!?しかしこいつを放置して、当てもない暗殺者探しを再開するのもリスクが高すぎる!!

 

「んじゃ!あんないヨロwww」

「おっけー。貴方たちこの会場のマップもってるぅ?」

「パンフなら持ってるでござる!」

「いいわねん!じゃあそこに記しつけるから……ま!じっとしてないかもしれないけど、大体その位置を移動していないはずよん!」

 

 俺が悩んでいると、ギーツと魔族が話を進める。

 

「っち!!なぜお前にそれが解る?魔族!」

「ベリアルよん。なぜって……私ってかなり感覚が鋭いのよ。人間より何十倍も!だからこの会場ぐらいなら微弱な殺気でも察知できるのよ!!」

「ほい!!パンフどうぞwww」

「ありがと!じゃ!印付けるわよん!!」

 

 俺はこいつを信用する事は出来ない。だが……何度も言うが時間が無さ過ぎる!!

 

「印をつけたパンフをよこせ。俺はそれを持って別行動する。……ギーツ!!こいつから目を離すなよ!」

「( ̄▽ ̄)ゞラジャ」

「くほほ!じゃあ行動開始ねん!!後でね!イケメン勇者さん!」

 

 気持ちの悪いウインクをして、魔族はギーツを連れて走って姿を消した。

 

 ……ああいう飄々とした奴には必ず裏がある。だが……頼りないがギーツにあの魔族を任せるとしよう。

 

 俺は一旦気持ちを切り替え、印のついたパンフレットを開き、急いで行動を開始した。

 

 

「ぐあ!!!」

 

 ドサリと音を立てて、スタッフに変装していた暗殺者が倒れた。……これで二人目だ。

 最初に仕留めた暗殺者を合わせてこれで三人……!

 

 あの魔族から貰ったパンフレットには、印と共に暗殺者の特徴……つまり今の服装などまで詳しく書いてあった。

 

 倒した暗殺者を確認すると……やはり胸元に刺青がある。この入れ墨こそラ・ローザ・ネーラの構成員である証拠である。

 所詮は暗殺者なので、正面からの戦闘では俺の敵ではないが、こいつも腕利きの暗殺者であることは間違いは無かった。

 なぜならこいつは俺が近づくなり、最初は無関係な普通のスタッフを装って……瞬時に俺に攻撃してきたからだ。あの切り替えの早さは驚嘆に値する。少しでも油断をすれば……食われかねない。

 

 パンフレットに書かれた暗殺者は、今倒した男を除いて残り四人……!やはり事前に入手した情報より一人多くなっている……!

 

 暗殺者の得物は様々で、今倒した男は吹き矢をメインの暗殺道具に使っていた様だ。

 俺は暗殺者の両腕と両足を折り、そのまま力任せに会場の窓から人気の少ない場所に投げ捨てる。本来ならば警備隊に突き出すのだが、悪いが今はそんな時間は無い。

 

 前のグループの演奏が今終わった!つまり、コウ達のライブが始まってしまうのだ!!

 

 そして……前のグループの賞賛を述べた司会者の男が、続けて口を開く。

 

「お待たせいたしました!!皆さんお待ちかねの今話題の歌姫達!!!このセントラルステージでついに彼女たちの歌声を披露する事が出来ます!!」

 

「「「うおおおおおおおお!!!!!!」」」

 

 その言葉と共に会場のボルテージが一段上がった様に思える。俺がコウのファンだからそう感じるだけも知れないが……!!

 

 しかしまずい!!急がねば!!

 

「彼女達こそ今我々が求めている存在!!彼女達こそこの街のホープ!!!」

 

 俺の焦りを余所に、司会者の男は言葉を続ける……!

 俺はその言葉と会場の熱気を背に、急いでパンフレットに書かれた次の地点まで向かうのであった……!!

 

 

 ………その時の俺は本当に焦っていたのだ……愚かな程に。

 普段ならばもう少し考えて行動出来ることも、焦りによって視野は狭まり、通常通りの思考は出来なくなる。

 

 つまり何が言いたいのかというと……俺はギーツの事を馬鹿に出来ない程の愚か者に成り下がっていたのだ、この時は……。そう……取返しもつかない程に……!

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