最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
エイシャの必殺が完全に決まり、もうもうと煙が立ち込める中から……ベリアルはゆっくりと姿を現した。
「ぜぇ……ぜぇ……ぐぼぉ……!!」
だが姿を見せたベリアルは……最早満身創痍だった。
片羽と片腕を失い、体には無数の矢が刺さっており、エイシャの斬撃で肩口から胸までバッサリと切り裂かれている。
そして吐血しながらもゆっくりと前進するベリアルを……エイシャは止めを刺すべく弓を構えた。
「あれを受けて無事なのは流石だが……今度こそ終わりだ……」
「げぼぉ……く……くほほ……!!なめんじゃァ……ねぇわよ!」
次の瞬間ベリアルは、吐血と共にエイシャに口から血を吹き出す。恐らくは猛毒なのだろうが……それをエイシャの前に現れた守護霊??が結界の様なものを張って防ぐ。
「!!!」
「言った筈だ……終わりだと……」
そして瞬時にベリアルの後ろに瞬間移動したエイシャが、今度こそ止めを刺すべく弓を撃つ。
エイシャから打ち出された矢は抵抗なくベリアルの頭を捕らえ……様として、残った羽でベリアルはそれを防いだ。
「悪あがきを……」
「負け……られ……ないのよ……!!私は……まだ……死ぬわけには……!!いかない……!!あの子達の……為にも……!!生きて……あの子達の……勇姿を……見届けるまでわあああああ!!!!」
「!!!!」
ベリアルにも譲れないものがあるのだろう。拙者達の様に……。
ベリアルは
だとすると……こいつがここで死ねば
拙者は彼女達が、この街の影……つまりスラム出身であることを知っている。
それを救ってくれて、ここまで育ててくれたであろうベリアルが居なくなったら……彼女達はどうなってしまうのだろうか?
会社は継続できるから彼女達は存続できるだろうが……心配なのは彼女達の心だ。
そう思った瞬間、俺の体は動いていた。
「!!?」
「……ギーツ……貴様……どういうつもりだ……?」
そう。エイシャの最後の一撃。
確実に命を刈り取る一矢を……俺は斧で弾いてしまっていたのだ……!!
「な……なんで……あなた…?」
「るせぇ!!てぇめを助けた訳じゃねぇ!!!俺は……俺は全てのアイドルの守護者になるって決めたんだ!!!だから……てめぇじゃなくて、アリヨクちゃそ達の為だァ!!!」
「!!!」
正直こいつは許せねぇ!!
コウたんを殺そうとしたこいつを、俺は許す事なんて……できやしねぇ!!!
だが!!
俺は
「なぁエイシャ……こいつはもう戦えねぇ……。ここは一つここらで手打ちって事に……」
「出来る訳ないだろ?遂に脳みそにウジでも沸いたか?……どけ、二度は言わん……」
「エイシャ!!お前の気持ちは解る!!だが……こいつの為じゃねぇ!!確かにこいつは許せねぇ!!だが、こいつを慕っている子達もいるのも事実なんだ!!!その子達の涙を俺ぁ見たくはねぇ!!!」
「あ……あなた……!」
俺は必死にエイシャに向かった言葉を続ける。
「こいつはこれから悪さをしない様に俺がしっかり見張っとく!!もしまた悪事を働く様なら俺が……俺がこの手で絶対に落とし前を付けさせる!!だから……!!頼むエイシャ!!!」
「こいつにいい様に転がされていたお前が、こいつを止める?……冗談にしても全く笑えん。そもそもこいつは魔族だ……それに……コウを傷つけた!!!殺そうとした!!それだけで万死に値する!!どけギーツ……どかないなら……お前ごとそいつを殺す!!」
「エイシャ!!!確かにこいつぁコウたんを殺そうとした!!だが……結果コウたんは助かったんだろ!!?なら……こいつは裁かれるべきだが、殺す必要まではねぇはずだろ!!?魔族だからって……殺していい権利なんざねぇ筈だ!!!」
とうとうエイシャは俺に向けて弓を構える。
やっぱり……エイシャを説得なんて出来ないのか!?くそ!!
「くほ……くほほほほほ!!!」
俺もエイシャに斧を構えると、俺の後ろに居るベリアルが突如笑い始めた。
「もーーー。笑わせてくれるわねぇ……ギーツ君。あんた達のゴタゴタのお陰で……私もだーいぶ回復出来たわぁ??ありがと……ギーツ君……」
「て……テメェ!!!」
「んふふ。さぁてと……んじゃそろそろ……」
第二ラウンドを始めるってか!!?俺ぁ……やっぱり甘かったのか!!?
エイシャと俺がベリアルに構えると、ベリアルはニヤリと笑い…………両手を上げた。
「降参よ、こ・う・さ・ん!!君たちには謝るわぁ……特にイケメン勇者君は……千年前の勇者と引けを取らない……所か彼らより強いんじゃない??」
「最後の言葉としては冴えないな……」
「私だってしょーじき
「ならば貴様を生かしておけば、また魔王の命令でコウを狙うだろうが。……言いたいことはそれだけか?」
エイシャの言葉に、ベリアルは困った様に笑い……そしてまた口を開く。
「……最初はこの街のスフィアの魔力を狙って、アイドルの子達を育ててたの。でも……本心を言うと、もうこの街のスフィアの力なんて、どーでもいいのよ。ただ、あの子たちの成長を見守りたい……あの子達が勝利する所をこの目で見たい!……それだけなのよ……」
「……っち」
「……私は……魔王直属の魔族を抜けるわぁ……今回の件でもう懲りたの」
「なに!?」
ベリアルの言葉に、エイシャが驚きの声を上げる。かく言う俺も今のベリアル言葉に驚いていた!
「信じてくれ!なんて言っても信じれないと思うけど……私はもう、人間たちをどうこうしようなんて思ってないのよ?……この街で……そうねぇ……魔王様達からすると、おままごとを頑張ってたの……でも……」
「でも?」
「そんな私の思いを見越してか、魔王様は彼を私に送り込んできた」
「彼……?」
「そう。千年前の戦争で人間にも魔族にも……恐らく魔王様にも恐れられた世界最強の怪物………バエルよ……!!」