最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 作:でかそう
第89話
「さあ皆さんお待ちかね!!本日お出しする最高の商品達……。彼女達こそ、皆様のお目当てだったに違いありません!!」
その言葉で会場のボルテージが上がる。
下種な笑みを浮かべた人間たちの、渦巻く欲望が今にもはちきれそうだった。
ここは闇の奴隷オークション会場。
ここでは俺達以外にも、多くの少年少女達が醜い人間たちに哀れにも買われていく、最低最悪な場所なのである。
そんな奴隷オークション会場に……俺は商品として捕らわれていた。
「コウ……私達……このまま……あんな人たちに……買われちゃうのかな……」
涙を浮かべながら、俺の手を握り震えるエルフの少女、ソフィアが俺に問いかける。
「ソフィ……大丈夫だよ……!きっと皆が……勇者様やダン君達が……助けてくれるよ……!」
気休めの言葉を投げかけるけど……正直それは望み薄だろう。
だってこの奴隷オークション会場が一体に何処にあるのか……今から売られる俺達自身解っていないのだから……。
俺とソフィアは、会場に連れて行かれる他の少女達を見て、自分の番を指折り数えながら、絶望的な気分で二人で手を取り合うしかないのであった……。
……いやいやいやいやいや!!
どうしてこうなった!!?なんで俺今絶賛奴隷中なの!!?温泉はどうなった!!?
俺は現状に気が遠くなりながらも、なぜこうなってしまったのかを思い返していた……!!………またかよ!!!
◆
温泉旅行!!なーんていい響きだろ!!
正直生前は別に温泉がそこまで好きだったわけじゃない。
だって長くお湯に浸かってても熱いし、じーっとしててもつまらなし……。周りの大人たちは何がそんなに温泉に惹かれるのか、いまいち解らなかった。
でも!!
女になった今なら解る!!温泉でゆーーーっくりと疲れを癒す!!
肩までお湯につかり、お湯を噛みしめる様にゆっくりと……時間を過ごす……!!
なんて贅沢な事なんだろう!!
まさに至福のひと時……!!なのである!!……まあこの世界に来て、まだ温泉入った事ないんだけどな!!
なので……めっちゃ楽しみ!!
怪我の功名って訳じゃないけど、こうして温泉旅行に何の気負いもなしに行けるのは、正直怪我して良かったんじゃないか?なんて思えてくる。そんなこと言ったら流石にミリヤに怒られそうなので言わないけど……!
馬車の中でわくわくと、気分良く鼻歌を歌う俺を見て、ミリヤは笑いながら言った。
「コウったら、そんなに温泉が楽しみなの?」
「はい!!だって……温泉なんて初めてですし!!」
「あはは!そうよね!まぁ私だって、そんなおっきなお風呂に入った事ないから……楽しみだけどね!……エイシャとマリィは温泉、入った事あるの?」
ミリヤの問いかけに、微笑ましそうに俺を見ていたマリィとエイシャは口々に答える。
「そうだな……正直俺の城には温泉なんて呼ばれるものは無かったが……とある遠征の時に少し浸かったことならある。まぁ……こうして旅行として行くのは初めてだがな……」
「私は何度か。聖女としての行事として、他の国に行った時に使わせて貰った事がありますわ」
エイシャは苦笑いをして、マリィは朗らかに笑いながら答える。
ちなみに今、自分たちの国が大変で忙しいであろうマリィだが……今回は俺の為にと、無理を言って長期の休暇を取ってくれたそうだ。温泉を予約してくれているのもマリィだし、本当にマリィには頭が上がらない。
そんな感じで、最初は本当に楽しかったのだ……この温泉旅行。
だから……この後あんな事になるなんて……予想だにしてなかったのだ……!
◆
「出ました!!本日最高金額8500万ゴルド!!!他におられますか!!?もうおられませんか!!?」
司会の男の叫び声に、現実に引き戻される。
……今回の回想シーンは随分と短いな……。……いや!!なんでこうなったかまでまだ回想シーンが間に合ってないよ!!?
でも……そんな俺のツッコミも余所に、オークションは続いてく。
そう……今絶賛俺の番なのである。俺は今回のオークションの大トリの様で、エルフの少女ソフィアは先程落札されていった……!俺がこの世界で最も屑だと思う男に買われてしまったのだ……!
「一億ゴルド!!!」
「一億ゴルド!!一億ゴルドが出ました!!!もう居られませんか!!?一億ゴルドです!!!」
全身が水膨れしたかの様な太った醜い男(失礼)が、本日の最高金額をたたき出す。
もうどうでもいいよ……。まじで……。この会場の客席にいる奴らも、このオークション開いている奴らも……纏めて皆殺しにしてやろうか?こんな奴らに、正体ばれるのを怯える必要なんてあるのか?
今すぐ黒騎士に変身して、こんな奴ら……!!と思うが、実は今の俺は黒騎士に変身する事は出来ない。
前回の戦いでの、黒騎士秘密魔法その七
肝心な時に……変身できないなんて……!!
俺は悔しさに涙が零れ落ちそうになりながらも、絶望的な現実から目を逸らす事なんて出来なかった。
「十億ゴルド!!」
そんな絶望している俺を余所に、とんでもない金額が提示される。
「じゅ……十億ゴルド!!!十億ゴルドが出ました!!!!本日……いやこのオークション始まって以来の金額でぇございます!!!!十億ゴルド……他におられますか!!!?」
その金額を提示してきたのは……!!!俺が今絶賛この世で最も嫌っていて、先程エルフの少女ソフィアも買った屑野郎!!!そいつの名は……!!
「おられませんね!!?では……この
剣の勇者クロス!!!
俺とソフィアが奴隷になった原因にして現況!!聖剣に選ばれながらもマフィアとも繋がりがあるクソ野郎!!
俺は精一杯その男を睨みつける!!しかし……クロスはそんな俺の視線など気にするはずも無く……ニヤリと下種な笑みを浮かべて俺を見ているのであった……!!