読者の方々も体調管理には気をつけましょう。
自室に戻ると、既に山田先生とクラリッサが戻ってきていた。先生方も夕食を終えていたようだ。
「将冴、戻ったか」
「うん、クラリッサも山田先生も戻っていたんですね」
「はい」
ふむ……そろそろ男子のお風呂の時間かな。圧倒的に女子が多いから、男子を先に温泉を使えることになっている。
一夏を誘って温泉に行こうかな。
自分の荷物から着替えと、部屋にあるタオルを手にして温泉に向かおうとすると、なぜかクラリッサも立ち上がった。
「……クラリッサ?」
「私も一緒に……」
「男子のお風呂の時間だからね?一夏もいるから大丈夫だよ」
「むぅ……」
そんな不服そうな顔をされても。
「ハルフォーフ先生。そこまで一緒にならなくても……」
「しかし……」
「将冴君も、男同士で話したいこともあると思いますから。それよりも、少し晩酌しませんか?」
山田先生がいつの間にか、ワインとグラスを手にしていた。
山田先生、以外とワルですね……。
「いえ、私はお酒は……」
「まぁ、いいじゃないですか。こんな時じゃないと飲めませんから」
「や、山田先生……」
山田先生に捕まったクラリッサがこちらに助けを求める視線を送ってくるが……。
「織斑先生には内緒にしておくね」
「そんなぁ!」
山田先生が与えてくれた好機と思い、僕は部屋を後にした。
さて、一夏の部屋は……
「あれ?」
一夏の部屋もとい織斑先生の部屋の前では、箒、セシリアさん、鈴がなにやら耳を潜めて部屋の音を聞いている。
何してるんだか……。
「三人とも、何してるの?」
「っ!?将冴か……」
「びっくりさせないでくださいませ……」
「し、静かにしてよ。中の様子が聞こえないでしょ」
三人がまた耳をすませたので、僕も少し聞き耳をたてる。
「あっ……一夏、そこだ……」
「ここか?」
「そう、そこだ。もっと強く……んっ」
ああ、そういうことか……。
僕は三人が耳をすませているのをよそに、部屋の扉を開けた。
「しょ、将冴!?」
「いきなり開けるなんて!?」
「私は見てない、何も見てないわよ!?」
三人は目を塞ぎ、なにやら叫んでいるけど、僕はそれを無視して中の一夏に声をかける。
「やぁ、一夏。マッサージ終わった?」
「お、将冴。もう少しだけ待ってくれ」
「一夏、手を休めるな」
「はいはい、千冬姉」
一夏は織斑先生の腰あたりを指圧し始めた。
「ほら、三人とも。いつまで目をふさいでるの?何考えていたのかは知らないけど、一夏はただマッサージしているだけだよ?」
「ま、マッサージ?」
「そ、そうでしたの……」
「もう、将冴いきなり扉開けるんだから!」
変な勘違いしてる箒達が悪いと思うんだけど……。
「ふぅ……どうだ?千冬姉」
「ああ、もういい」
一夏がマッサージを終えたようだ。織斑先生は首や肩を回している。
「一夏、温泉に行こうよ。時間も限られてるからさ」
「ああ、今行くよ。部屋の外で待っててくれ」
一夏はいそいそと準備を始めたので、僕は言われた通り部屋の外で待つことにした。
「そこの女子三人。そんなところにいないで入ってきたらどうだ」
織斑先生に呼ばれる部屋の外にいる三人。
お互いに顔を見合わせて、恐る恐る部屋へと入る。それと入れ替わりに、一夏が出てくる。
「待たせたな、行こうぜ」
「うん」
一夏が僕の車椅子を押して、温泉へと向かった。
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温泉は広く、二人で入るにはもったいないほどだった。
僕は腰にタオルを巻いて、義足だけつけてお湯に浸かった。
「ふぅ……気持ちいい……」
「だな。俺は学園の大浴場入れなかったし、広い風呂は久しぶりだ」
「はは……大浴場はそんなにいいものじゃなかったよ……」
「なんか言ったか?」
「なんでも」
恥ずかしくて言えないよ……あんなこと。
「そうか。……そういえば、箒から聞いたか?束さんと仲直りしたって」
「うん、さっきお礼言われたよ。別に気にしなくてもいいのにね」
「俺もお礼言われたけど、何もしてないからなぁ……」
「一夏は箒の支えになってあげてたんだよ。一夏がいなかったら、箒は頑張れなかったから……」
「どういうことだ?」
「それは自分で気付かなきゃね」
一夏は頭にハテナを浮かべる。ふふ、悩め悩め。
もうそれくらいは気付かなきゃね。
「わかんねぇ!俺サウナ行ってくる!」
「行ってらっしゃ〜い。僕はまだ露天風呂行ってくるよ」
一夏と別れ、僕は外へ出る。
露天風呂からは海が見え、いい景色だった。
ゆっくりとお湯に浸かる。本当に気持ちいい……
「はぁ〜……」
「気持ちいいねぇ〜、しょーくん」
「そうですね……やっぱりきたんですね。束さん」
慣れてしまった。束さんはバスタオルを巻いて、いつものうさ耳をつけたまま、僕の隣に現れた。
「むむ、もう驚かないの?束さん、つまんないなぁ〜」
「姿が見えなくなった時点で、現れるだろうなぁとは思いましたから」
「私のことをわかってくれているって思っちゃうからね?」
「そういうことにしておいてください」
下手に否定すると、束さんは面倒臭くなるから……。
「それで、僕に何かお話があったんですか?」
「うん。……ありがとね、しょーくん」
束さんが僕の頭を抱き寄せる。
頭に感じる柔らかい感触にドキドキする。
「しょーくんが架け橋になってくれたから……また箒ちゃんと面と向かってお話できるようになったよ……」
「僕は、何も……」
「そんなに謙遜することないよ。しょーくんはすごいよ本当に……」
僕の頭を撫で始める束さん。
今は何も言わないほうがいいかな……
「むふふ……何にも抵抗ないってことは、私の好きにしてもいいってこと?」
「今腕つけてないから抵抗できないだけです」
「ふふ、そっか……そうだ、明日って機体の整備するんだよね?」
束さんが臨海学校の日程を知っていることには突っ込まないことにする。
「その予定ですが……」
「それじゃあ、ちょうどいいね。テムジン用のバージョンアップデータを持ってきたから、明日インストールしてあげるね」
「本当ですか?」
バージョンアップとは……流石、束さんと言うしかない。
これは僕も胸が踊る。
「楽しみにしててねぇ。あ、いっくんにも挨拶してこようかなぁ」
「一夏はサウナにいますよ」
「おっけー。それじゃあ、行ってくるね」
束さんは意気揚々とサウナに向かっていった。
一夏の叫び声が聞こえたけど、僕は気にせず露天風呂を上がり体を洗い始めた。
次回は、将冴と一夏がお風呂に入っている間にクラリッサと千冬が、何をしていたか書いていこうと思います。