IS 〜偽りの腕に抱くもの〜【本編完結】   作:sha-yu

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メリクリ

壁破壊作業中です。


10話

 

退院の日を迎えた。

ちょうどドイツ軍の訓練もお休みだったみたいで、千冬さんが迎えに来てくれた。

 

退院までの間、千冬さんが用意してくれた車椅子を動かす練習をしていた。思考のイメージを固めるのが案外難しくて、進んで、止まって、進んで、止まってを繰り返したりしてた。

 

あと、長時間使うと、頭痛が起きる。

ISほど完成されたものではないから、思考制御でラグのようなものが発生し、頭痛を起こすらしい。

 

まぁ、そんなこんなで今は千冬さんが車椅子を押してくれている。

 

 

「お世話になりました」

 

 

僕をずっと世話してくれていた看護師さんと先生に挨拶する。千冬さんに通訳してもらっている。世界最強を通訳にするなんて、僕はバチあたりだ。

 

 

「よし、行くぞ。将冴」

 

「はい」

 

 

今日から千冬さんと暮らすのか……緊張する。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

さて、目の前の惨状をどう説明すればいいだろうか。

 

千冬さんの住んでる寮には何の問題もなく到着した。寮の管理人さんとも挨拶した。日本語を喋れたみたいでびっくりした。リョーボさんと呼んでくれと言われた。

 

そして、いざ部屋を見ると……

 

 

「これは……」

 

 

とても二十代女性の部屋とは思えないほど散らかってる。なんとか足の踏み場はあるが、こっちは車椅子だ。無事に通るのは一苦労だろう。

世界最強の苦手なものが一瞬でわかった気がする。

 

 

「少し散らかってるが……住むには問題はない」

 

「千冬さん、ちょっと失礼な言葉遣いなりますが、言わせていただきます。……女として終わってる」

 

「……自覚はある」

 

 

自覚がある分タチが悪い。つまるところ、根本的に家事ができないのだろう。これは……

 

 

「ドイツでの生活は、千冬さんの花嫁修業になりそうですね」

 

「指導、よろしく頼む」

 

 

僕は動けないから代わりにやってあげることができない。

僕が千冬さんを一人前にするしかない。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

今日、将冴が退院する。

 

織斑教官と一緒に迎えに行きたかったが、大尉への昇格の手続きやらなんやらで行けなかった。

 

午前中でようやく終わり、退院祝いにケーキを買って織斑教官の部屋へ向かっている。

 

織斑教官の部屋に近づくにつれ、ガタガタと動き回る音となにやら指示するような声……これは将冴の声だ。

 

 

「織斑教官?将冴?」

 

 

部屋を覗いてみると、そこには……

 

 

「ほら!洗濯物の襟が曲がってる!もっとピシッと!」

 

「あ、ああ」

 

「箒の扱いが雑だよ!埃が舞ってる!」

 

「すまない……」

 

「フライパンの油汚れはそんな軽くこすった程度じゃ落ちないよ!もっとこする!」

 

「承知した……」

 

 

織斑……教官?

将冴が……教官?

ん?何がどうなって?

 

部屋の外で何が何だかわからず眺めていると、将冴が私に気づいた。

 

 

「あ、クラリッサさん。いらっしゃい。いま少しバタバタしてて」

 

「いや、それは構わないが……これは……」

 

 

猛勉強した日本語の成果を聞く前に、この状況について聞かなければならない。

 

 

「千冬さんの家事スキルが絶望的で……ちょっと花嫁修業も兼ねて指導中」

 

「花嫁修業か……日本の花嫁は裸エプロンが正装だと聞いたが……」

 

「また間違ってる。それは漫画の中だけ」

 

「そ、そうなのか……」

 

「そうです。今度からちゃんと調べましょうね」

 

 

どうも将冴には頭が上がらない。

 

その時、フラフラとした足取りで織斑教官が戻ってきた。

 

 

「織斑教官……その……」

 

「クラリッサ」

 

「はっ!」

 

「このことは誰にも言うな」

 

「イエスマム!」

 

「もう、千冬さんの自業自得なのに……」

 

 

つい反射で敬礼してしまったが、将冴の言う通りだと感じた。

 

っと、忘れないうちに……

 

 

「織斑教官、これを」

 

「なんだ?ケーキか?」

 

「はい。将冴の退院祝いに」

 

「そうか、すまないな」

 

「ありがとうございます、クラリッサさん」

 

 

喜んでもらえた。ホッとした。

 

 

「せっかくだ。今食べてしまおう。皿とフォークは……」

 

 

織斑教官はキッチンの方へ向かった。

私も手伝おうとした時、コツンとふくらはぎあたりに何か当たった。

 

見てみると、将冴が車椅子を動かして私に当てたようだ。

 

 

「将冴。どうした?」

 

「日本語、すごい上手くなりました。いっぱい勉強したんですね」

 

「え、あ、あ……」

 

 

そう微笑む将冴の顔をみて、自分の顔がかぁと熱くなった感じがした。

 

 

「ありがとぅ……」

 

 

なんだか、すごいどきっとした。




クラリッサかわいい。異論は認めない。

かわいい。

サンタコスクラリッサとか、鼻血でる。
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