IS 〜偽りの腕に抱くもの〜【本編完結】   作:sha-yu

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臨海学校のエピローグになります。

長かった……


99話

目が覚めた瞬間、背中の痛みに顔を歪めた。

 

よく見ると、身体に包帯が巻かれてる。あぁ、こんな大怪我は手足を無くした以来だろうか……。

 

 

「いつつ……」

 

「将冴!目を覚ましたのか!」

 

 

そう声をかけられ目を向けると、専用機組みが僕の顔を覗き込んでいた。

 

 

「あれ……みんな……」

 

「ったく、心配させるなよ!帰ってきたら将冴が大怪我してるって」

 

「気が休まらなかったぞ」

 

「傷、痛みますか?」

 

「まだこの程度で済んだのは私のおかげなんだからね!感謝しなさい!」

 

「気がついてよかったよ。ね、ラウラ」

 

「うっく……よかった、兄さん……」

 

 

みんな一気に喋らないでくれるかな……ラウラに関しては涙目だし……。

 

 

「み、みんな……一気に話しかけると将冴君が困っちゃう……」

 

 

簪さんがみんなをそう諌めると、とりあえず落ち着いたようだ。

 

 

「みんな……福音は……」

 

「撃墜した。今は海に沈んでいるだろう」

 

「そっか……」

 

 

箒の報告でなんとも言えない気持ちになってしまった。違う方法で助けることができたんじゃないかと……。

 

 

「そうだ、先生方は……?」

 

「関係各所に報告中だよ。っと、目が覚めたら報告しろって言われていたんだった。僕、先生のところに行ってくるよ」

 

「それじゃあ、俺たちも行こうぜ。将冴も休めないだろうし」

 

「そうだな。将冴、ゆっくり休んでくれ」

 

「私は兄さんと……」

 

「はいはい、ブラコンも大概にしときなさい」

 

「じゃあね、将冴君」

 

「ゆっくり休んでくださいまし」

 

 

みんなぞろぞろと部屋から出て行く。ラウラは鈴に引きずられていったけど……。

 

……

 

 

「束さん」

 

「呼んだ?」

 

 

天井の一部分が開き、そこから束さんが降りてきた。

 

なんとなくいると思った。

 

 

「福音……直接アクセスすれば直せましたか?」

 

「……わからないかなぁ〜。バーチャロンの戦闘記録で、黒くなったのは見たけど、あれは束さんでもどうなっているのかわからなかった。残骸でもあれば、何かわかるかもねぇ〜」

 

「そうですか……」

 

 

束さんでもわからないか……あの黒くなった福音……一体何が……。

 

 

「そうだ、しょーくん。バーチャロンの修理、終わらせておいたからね。全く、無茶するんだからぁーー」

 

「はは、ああするしかなくて……」

 

「そうかもしれないけど……今後はあんな無茶しないでね?」

 

 

織斑先生と同じことを……似た者同士、なのかな。

 

 

「さて、そろそろちーちゃんや眼帯ドイツ女も来るから、束さんはラボに帰るよ。くーちゃん心配してるだろうし」

 

「束さん、いろいろありがとうございました」

 

「いいよいいよぉ〜。あ、そうそう。しょーくんが寝ている間にバーチャロンにメッセージ届いていたよ。確認しておいてね。ではではぁ〜」

 

 

束さんは出てきた天井の穴に戻っていった。メッセージ……誰からだろう?

 

と、束さんと入れ替わるように織斑先生とクラリッサが部屋に入ってきた。

 

 

「しょ、将冴!」

 

 

クラリッサが僕の姿を見た瞬間、目に涙を溜めて抱きついてきた。

 

痛い、背中痛い……

 

 

「よかった……本当に心配したんだ……本当に」

 

「クラリッサ……心配かけてごめんね」

 

 

抱きつかれたまま、そう呟く。

 

ふと、織斑先生の方を見るとなにやら不機嫌そうな表情を浮かべている。

 

 

「クラリッサ、もう将冴と話していいか?」

 

「す、すいません、織斑先生……」

 

 

クラリッサが僕をゆっくり寝かせ、涙を拭った。

 

織斑先生がふぅ、とため息をついた。

 

 

「将冴、今回はご苦労だったな」

 

「いえ……あの、ナターシャさんは……」

 

「心配いらない。問題はないさ」

 

「そうですか……」

 

 

よかった。アメリカは福音を無人機と言って撃墜させようとしていたから、ナターシャさんに何かあったら福音に申し訳ない。

 

それから、織斑先生は今回の詳細を話してくれた。

 

アメリカが無人機と偽って福音を撃墜させようとしていたのは、他国に技術が流れるのを防ぐためと、暴走したのは無人システムによるものという言い訳のためらしい。子供かっていう話だった。

 

次に暴走した理由。これはハッキリしていないようだけど、今回福音にバージョンアップのための処置をしたらしい。その時に何か仕組まれたと答えたらしい。

 

で、ナターシャさんは今回の件で特に何かあるわけでもなく、アメリカに戻ることができるとのことだった。

 

 

「ナターシャ・ファイルスは被害者だからな。妥当なところだろう」

 

「特に何かされるわけではないのはよかったです」

 

「まぁ、お前は難しく考えるな。事後処理は大人の仕事だ。お前はゆっくり休め」

 

 

織斑先生はスッと立ち上がった。

 

 

「私はまだやることがある。クラリッサ、将冴の世話を頼むぞ」

 

「は、はい!」

 

 

織斑先生は部屋を出て行き、クラリッサと二人っきりになった。

 

 

「将冴、身体の具合は……」

 

「まだ傷が痛むかな……それ以外は大丈夫」

 

「そうか……」

 

「……」

 

 

なんとなく気まずい雰囲気が漂ってしまった。

 

 

「一夏達から聞いた……自分を犠牲にした攻撃をしたと……」

 

「いや……それは……」

 

 

そこをつかれると辛いものがある……。

 

 

「いつも、無茶しないでくれと言っているのに……なんで……」

 

「……」

 

「将冴の両親も、そんなことは望んでいない……私も、みんなも……」

 

「ごめん……」

 

 

ああするしかなかった、というのは言い訳だ……。

 

 

「……夕食を持ってくる」

 

 

クラリッサはそう言って部屋を出て行ってしまった。

 

初めてかもしれない、クラリッサとこうなってしまうのは……。

 

 

コンコン

 

 

ノック?夕食を持ってくるには早すぎる……

 

 

「えっと、ナターシャよ。今いいかしら?」

 

「ナターシャさん?どうぞ」

 

 

扉が開き、浴衣をきたナターシャさんが入ってくる。

どうも着なれないのか、落ち着かない様子だ。

 

 

「具合はどう?」

 

「痛みますけど、大丈夫です」

 

「そう、よかった……暴走していたとはいえ、あの子がショウゴ君を傷つけてしまって……本当にごめんなさい」

 

「謝らないでください。ナターシャさんも銀の福音も悪くありません」

 

「でも……」

 

 

ナターシャさんは納得がいかないようだ。

 

そうだ。

 

 

「『Help the Natasha』」

 

「え?」

 

「福音が送ったメッセージです。福音はナターシャさんのことを思っていたんです。その後、私を壊して、と……」

 

「そんな……あの子……」

 

「ナターシャさんも福音も被害者です。だから、謝る必要はないんです」

 

「うっ……ぅん……」

 

 

ナターシャさんは涙を流し頷いた。

 

そういえば、束さんがメッセージが届いているって言ってたな。

 

バーチャロンからメッセージを呼び出した。

これは……

 

 

「『Thank you,Natasha』。福音からの最後のメッセージです。ナターシャさんのこと、大好きだったんですね。福音は」

 

 

ナターシャさんは大声で泣いた。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

次第に落ち着いたナターシャさんは、すっきりした顔を僕に向けた。

 

 

「久しぶりいっぱい泣いたわ」

 

「泣ける時に泣いた方がいいです。特に今回は……」

 

「そうね……ありがとう、ショウゴ君」

 

「僕は何も」

 

「いいえ、君のおかげ」

 

 

そう押されると、なんだか照れくさい。

 

 

「顔が少し赤いわよ?照れてるのかしら?」

 

「からかわないでください……」

 

「どうしようかしら」

 

 

この人……シャルと似た何かを感じる……。

 

 

「ふふ、君をからかうの楽しいわ。可愛い顔するんですもの」

 

「人をおもちゃみたいに……」

 

「ごめんごめん。それじゃ、私はそろそろ戻るわ。あ、そうだ」

 

 

ナターシャさんが胸元から名刺を取り出し、何かをサラサラと書いていき、最後に名刺にキスをした。

 

 

「これ、連絡先。プライベートの方の連絡先も書いておいたから、いつでも連絡してね」

 

 

名刺を枕元に置くナターシャさん。

くっきりキスマークがついた名刺は、まるでキャバクラのそれのようだ……。

 

 

「それじゃあ、またね。ショウゴ」

 

 

そう言ってナターシャさんは部屋から出て行ってしまった。

 

ナターシャさん……いつでも名刺持ち歩いてるのかな?ISに乗るときも持っていたってことだよね、これ。

 

 

「将冴、待たせたな」

 

 

扉が開き、クラリッサがお盆におかゆを乗せて持ってきてくれた。

 

 

「少し時間がかかってしまっ……その名刺はなんだ?」

 

「ナターシャさんが来て置いていった。すごいよね、ISに乗るときも持ち歩いて……」

 

「まさか……ナターシャ・ファイルスも……」

 

「クラリッサ?」

 

「……いや、なんでもない。……気のせいだ……そうだ……」

 

「?」

 

 

さっきまでの雰囲気は感じず、クラリッサにおかゆをを食べさせてもらった。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

次の日、つまりIS学園に帰る日だ。

臨海学校は散々な結果になってしまったけど……まぁ、思い出は作れた。いい意味でも、悪い意味でも。

 

僕は来た時と同じように、ラウラの隣に座っていた。

 

 

「兄さん、怪我は……」

 

「うん、大丈夫。痛み止めも飲んだし、帰るまでくらいなら……ふあぁ……」

 

「眠いのか兄さん?」

 

「うん……痛み止めの副作用でね……」

 

 

まぁ、寝るつもり満々だったし、ちょうどいいんだけど。

 

 

「諸君、忘れ物はないな?」

 

 

織斑先生が最後の確認をし、運転手に発車するように言おうとした瞬間……

 

 

「ちょっと待って!」

 

 

ブロンドの髪を揺らしながら、ナターシャさんがバスに乗り込んできた。

 

 

「なんだ、アメリカから迎えが来る手筈に……」

 

「ああ、そうなんだけど、どうしても最後に話したいことがあるの。ちょっとだけいいでしょ?」

 

 

ナターシャさんは織斑先生から返事を聞く前に、車内を歩いてきた。

 

クラリッサ、なんでそんなにナターシャさんのことを睨んで……

 

 

「ショウゴ!」

 

「え、は、はい?」

 

 

昨日話したから、てっきり他の専用機持ちに話があるのかと思った。

 

 

「夏休み、アメリカに留学に来なさい!」

 

「……へ?」

 

 

クラスのみんなはもちろんのこと、織斑先生までもが目が点になっていた。




はい、臨海学校編でした。

大変でした。特に戦闘が……

次回から夏休み編。ここから最後まで作者オリジナルの話ばかりになります。

夏休み編はグゥレイトゥー!な人や、三姉妹、戦闘教義指導要綱の人なんかを出したいなぁと思っています。

楽しみにしていただけたらなと思います。
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