「もしもし」
旅館から出た束は、すぐに携帯電話を取り出し、電話をかけた。
『なんだ?うさ耳博士』
「回収して欲しいものがあるんだけど」
『おうおう、私らは小間使いか?』
「今から言う座標の海底にあると思うから、24時間以内にラボに持ってきて。座標は……」
『……はぁ!?お前、今私らがいるのドイツだぞ!?ようやくお前が依頼してきた、ドイツのIS部隊長のISにVTシステムを組み込んだやつ見つけたってのに!』
「いいから早くしなさい。なんのために君達3人に機体を作ってあげたと思ってるの?」
『わぁった、わかったよ!やりゃあいいんだろ、やりゃあ!ったく、人使い荒いんだからよ……おぉい、スコール、エム、仕事だぞ!』
ブツッという音とともに、通話が切れる。
「まったく、生意気なんだから」
「束……」
束に話しかけたのは、千冬だった。
「あ、ちーちゃん。お別れの挨拶かなかな?」
「……お前は何をしているんだ?」
「どういうことかな」
「ISを完成させたお前は、これ以上何か作ろうというのか?」
「それは違うよ、ちーちゃん」
「なに?」
「ISはまだ完成していない。宇宙に行って、初めて完成するんだよ」
宇宙、それは束がISを作ろうとした理由。
千冬も、それはよく知っている。
「なら、なぜ宇宙に行かない?」
「それは言えないかな……」
「お前はいつもそうだ……重要なことだけは誰にも言わない。私にも、妹にも、一夏にも、将冴にも」
「そこにしょーくんも入るんだね。もしかして、ちーちゃんもしょーくんのことがお気に入りなのかな?」
「茶化すな」
千冬の声に怒気が含まれる。
「言ったでしょ?しょーくんが自分でたどり着いたら話すって。その時はすぐに来るよ……多分、この夏で」
「……信じていいんだな?」
「ちーちゃんに嘘言ったことある?」
「何度もな」
「あらら……」
「……わかった。お前を信じるからな」
「ありがと。それじゃあ、束さんはラボに戻るね」
「ああ……箒と話をしていったのか?」
「メアド交換したから」
「そうか……気をつけろ」
「ちーちゃんもね」
束は闇の中に消えていく。
千冬はその光景を、寂しそうに眺めていた。
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「だぁ!もう!移動だけで疲れた!」
オータム、スコール、エムの3人は束に指定された座標……福音が沈んだ海上に来ていた。
3人は何やら刺々しいISらしきものを身にまとっていた。
「ほら、オータム。まだ仕事終わってないわよ」
「わかってるって……はぁ、海に潜らなきゃいけないんだろ……」
「やりたくないなら旅館まで行けばいい。お前の大好きな将冴が怪我で寝込んでるぞ」
「なっ、おまっ、何言ってんだ!?」
「あら、そうなの?オータム?」
「この間、将冴から電話もらって顔真っ赤にして鏡を叩き割っていた」
「お前見てたのかよ!?」
「やだ、その話もうすこし詳しく聞きたわね」
「いいから仕事するぞ!ほら、行くぞ!」
オータムのISがオータムの全身を包み込み、いかつい戦闘機のような形に変形し、海に飛び込んだ。
「あらあら、顔真っ赤にしちゃって」
「はぁ……面倒な……」
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銀の福音は落ちたか。
まぁいい、かの大天才の発明、ISすらも取り込めることは実証できた。
あとは、これの力を100%発揮できる器を……
「ふふ、柳川か……所詮は虫ケラ……我が力には遠く及ばぬよ……篠ノ之束、お前もだ」