クラリッサ不足……。
男の人3人に囲まれたシャルとラウラの元へ向かってる。
でも、男の人達はかなり苛立っている。
間に合え……
「なぁ、いいだろ。俺たちと遊ぼうぜ」
「断る。なぜ見ず知らずのお前達と遊ばなければならない。私達は兄さんを待っているんだ」
ラウラが果敢にも男の人たちに立ち向かっている。シャルはラウラの隣で苦笑いを浮かべている。
ああ、しまったな……離れるべきじゃなかった……。
「その兄さんだってわかってくれるって。ほら」
男の人がラウラの肩を掴んだ。
まずい……
「私に触るなぁ!」
その瞬間、男の人の体が空を舞い、そのまま地面に倒れ伏した。
やってしまった。
「て、てめぇ!何しやがる!」
ラウラに投げられた人とは別の人がラウラに手を伸ばした。ああ、だから……。
「私に触るなと……」
ラウラは男の腕を掴み……
「言っただろう!」
見事な一本背負い。
ラウラ、柔道もできたの?
「お、お前……本当に何者なんだよ!」
「聞きたいか?」
ここでようやく追いついた。
すでに男の人は足をガクガクと震わせている。
「ねぇ、お兄さん」
僕は義手を取り出し、男の人の肩を掴む。男の人の体がビクッとはねた。
「とりあえず、そこの二人を連れてどっかいってくれないないかな。二人みたいな思い、したくないでしょ?」
「は、はい……すいませんでしたぁ!」
倒れた二人を急いで起こし、3人は走り去っていった。
はぁ……。
「兄さん」
「二人とも、大丈夫……みたいだね。ごめんね、2人にしちゃって」
「ううん。将冴も急いで来てくれたんでしょ?ありがとう」
「それはいいんだけど……ラウラ。あまり外で乱暴なことはしちゃダメだよ」
「す、すまない……」
まぁ、大事にならなくてよかったけど……。
「おぉい、将冴!」
「あ、弾」
弾が駆け寄ってくる。
心配かけてしまったな。
「お前、大丈夫か……って、その手は」
「ああ、義手。それよりも、心配かけちゃったみたいだね。ごめん」
「いや、いいって。何も問題ないみたいだしな。で、その2人が……」
「うん、僕の友達」
弾にシャルとラウラを紹介する。
「シャルロット・デュノアです」
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。お前は、兄さんの友人か?」
「に、兄さん?」
「それは気にしないで……」
そんな話をしていると、蘭が警備員を連れて走ってきた。
ああ、大事になってしまった……。
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30分ほど話を聞かれ、僕たちはすぐに解放された。
まぁ、一応……被害者だし……一応。
「ふぅ、少し拘束されちゃったけど、まだ遊べるね」
「すまない、兄さん……私が騒ぎを起こしてしまったせいで……」
「しょうがないよ。それよりも、2人に怪我とかなくてよかった」
返り討ちにするとは思ってたけどね……。
「将冴、俺と蘭はそろそろ帰るよ」
「もう帰るの?」
「ああ、店の手伝いがあるからな。久々に会えてよかったよ。今度、うちで飯でも食っていけよ」
弾の家は五反田食堂というお店をやっている。あそこの料理は絶品なんだよなぁ。
「時間ができたら必ず」
「待ってますね、将冴さん。シャルロットさんもラウラさんも、是非来てください」
「うん、将冴と一緒に行かせてもらうよ」
「日本の定食屋……うむ、楽しみだな」
「行くときは連絡するね」
「おう。それじゃな」
「じゃあね。あ、そうだ。蘭」
「はい?」
蘭を呼び止め、小さな声で耳打ちする。
「一夏、学園でさらに被害者増やしてるから、気をつけてね」
「な!?」
「ふふ、頑張ってね」
「へ、変なこと言わないでください!もう!」
蘭は顔を真っ赤にし、弾と一緒に遊園地を後にした。
「さて、まずご飯にしよっか」
「そういえばまだだったね」
「兄さん、私はハンバーガーというものを食べたいぞ」
「よし、ラウラのジャンクフードデビューと行こうか」
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昼食を食べ、午後もアトラクションに乗り、気がつけば夕方になっていた。
僕らは遊園地を出て、モノレールに乗っている。
フリーフォールに乗っていた時のように、僕とシャルの間にラウラが座っていた。
フリーフォールの時と違うのは、僕に寄りかかって寝ていることかな。
「ふふ。ラウラ、すごいはしゃいでたもんね」
「うん。まぁ、今まで娯楽とは無縁の生活をしていたし、楽しんでくれたらそれでいいんだけどね」
「お兄ちゃんは妹思いだね」
「それ、僕のことからかってる?」
「からかってなんかないよ。羨ましいなって」
羨ましい?
「僕って一人っ子だから。兄弟とかいないし、お母さんもいない。お父さんはいるけど……まだわだかまりが取れたわけじゃないし」
「お父さんとお話は?」
「電話で一回。ごめんって謝られた」
「そっか……」
シャルも、ある意味1人……問題が解決したとはいえ、家族の仲までは元どおりとはいかない。この問題は、まだ完全な解決を迎えているわけじゃないんだ。
「シャル。羨ましいなら、シャルもなっちゃえばいいんだよ」
「僕もなるって……何に?」
「そうだね……ラウラのお姉さん、とか?」
「ラウラのって……ぷっ、あははは!」
「笑いすぎじゃない?」
「だって、そんな突拍子も無いこと……ふふ、可笑しい」
結構いい提案だと思ったんだけどなぁ……。
「それで、どっちが上になるの?」
「え?」
「僕が将冴のお姉さん?将冴が僕のお兄さん?」
「あぁ、そうだね……」
どっちが、か……僕としてはどっちでも……
「決められない男の人は嫌われるよ」
「はは、そうかもね……」
「しっかりしてよ、
「お兄ちゃんって……」
「ふふ、お兄ちゃんって言うと、なんか恥ずかしいね」
だったら言わなければいいのに、とは口にしなかった。
ラウラに兄さんと呼ばれていたから、慣れてしまったようだね。
「お兄ちゃん、早くいい人見つけてね」
「妹が兄をからかわないの」
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「ただいま」
寝たままのラウラをシャルと一緒に部屋へ送り届け、自室に戻ってきた。ここに来る途中、売店に寄りクラリッサの為にゼリーなんかを買ってきたので、それを冷蔵庫に入れてから、クラリッサの様子を見る。
クラリッサは自分のベッドで静かな寝息を立てていた。
顔色は……良くなってるね。
「うん、大丈夫そう」
あんなに弱っているクラリッサを見たのは初めてだった。
原因が二日酔いなのが、なんだか締まらないけど……。
「う、ん……将冴?」
「あ、ごめんね。起こしちゃった?」
「いや、大丈夫だ。さすがに寝すぎた」
まぁ、もう夜だからね。
「ゼリー買ってきたけど、食べる?」
「ああ、いただく」
冷蔵庫からゼリーを取り出して、スプーンと一緒にクラリッサに渡す。僕は自分のベッドに腰掛けて、義足を外した。
少し頭痛がしている……義肢を付けすぎたかな。
「将冴は食べないのか?」
「うん、大丈夫。気にせず食べて」
そうか、と言いながらクラリッサはゼリーを口に運んでいった。
さて、ぼくも着替えようかな。
「将冴、今日は楽しんできたか?」
「うん、ラウラもたくさんはしゃいでたよ」
「そうか……よかった」
「今度、クラリッサも一緒に行こうね」
「ああ、そうだな……」
クラリッサはゼリーを食べる手を止めた。
「クラリッサ?」
「将冴、その……」
「ん?」
「……ど、ドイツ行きの準備はできたか?」
「うん、大体。アメリカとか、束さんのラボとか行くから、結構大荷物になりそう」
「そうか。手伝えることがあったら、なんでも言ってくれ」
「ありがとう。でも、クラリッサも準備あるでしょ?僕のことは大丈夫だから、自分の準備もちゃんとしなきゃダメだよ」
「……ああ」
クラリッサは、浮かない顔をしている。
何か、気に触ること言っちゃったかな……。
「将冴、ゼリーありがとう。私はもう寝る」
「あ、うん。おやすみ……」
クラリッサは空になったゼリーのカップをゴミ箱に捨て、布団を被ってしまった。
「何かしちゃったかな……」
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私の中である不安が渦巻いている。
将冴との関係についてだ。
ここまで一緒に暮らしていたが、将冴との関係が進展しているのかわからない。
そのせいで、将冴に変な態度で接してしまった……。
ああ、なんであんな態度を……
それもこれも、将冴があの時の返事をしてくれないからだ……。
「ドイツで、返事してくれるだろうか……」
書いてて楽しかった。
シャルも妹になりました。
次回からドイツ。
完全オリジナルで頑張ります。