一夏、箒、鈴にスポットを当てていきます。
「起立、礼」
何気ない朝のSHR。
クラス全体を見れば変わりはないのだが、個々人となると、2人ほど様子のおかしい人物がいた。
織斑一夏と凰鈴音だった。
一夏と鈴の席の間にある空席。
そこは柳川将冴の席だった。
2週間程前、一夏と同じくドイツでモンドグロッソを見に行った将冴は未だに帰ってきていない。
一夏は一夏で誘拐され、大変な目にあっていたが、それでもすぐに帰国できた。一重に姉である千冬のおかげだろう。
だが、彼はまだこの席に戻ってきていない。
SHRが終わり、次の授業までの空き時間。
鈴は一夏の近くに立った。
「ねぇ、一夏。将冴って、あんたと同じ日に帰る予定だったのよね?」
「ああ、でも俺は色々あって違う飛行機を手配されたから、将冴と一緒の飛行機じゃないんだ」
「そう……だったわね。千冬さんからは、何か連絡ないの?今ドイツにいるんでしょ?」
「ああ。ただ、心配するなとは言ってたけど……」
すでに事情を知っている手前、千冬は一夏に話せないでいるのだ。政府の絡むことなのだ。そうやすやすと一般人に話せるものではない。
「何か、事故に巻き込まれたとか……」
「そうなってなければいいけど……」
2人の願いは叶わない。
そして、後日。将冴の転校が伝えられた。
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「いやぁーーー!!」
鋭い太刀筋で、相手から面を奪う。
剣道全国大会、中学生の部の決勝はあっけなく終わった。
彼女……箒は実に不機嫌だった。
理由は、その日の出場者一覧が原因だった。
(男子の部……将冴の名前がなかった……)
箒が唯一認めた剣士。
彼の剣を見るのを、そして自分の剣を見てもらうのを楽しみに、この大会に臨んでいた。
しかし、彼の名前はプログラムになかった。
(プログラムに名前がないということは、大会前に辞退したということ……)
彼の剣の腕は本物であり、大会に出れば優勝は間違いなかった。それに彼の剣に対する思いも本物だった。
(止むに止まれぬ事情があったのだろうか……)
プログラムを見た瞬間、辞退したのだと憤りを感じ、決勝までそれを引きずっていたが、冷静になって考えると彼が辞退するとは思えない。
(何か……事故に巻き込まれたのだろうか……)
彼の安否を知る術を、彼女は持っていなかった。
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将冴の転校が知らされた日の放課後。
一夏は何度も訪れた将冴の家へ向かった。
鈴を誘ったが、相当ショックだったらしく、沈んだ顔で帰っていた。
見慣れた屋根を見つけ、走り寄る。
近づいて、すぐに気付いたのは人の気配がないこと。
窓を覗いてみると、部屋の中には何もなかった。
「嘘……だろ……」
千冬が忙しい時、何度も訪れたこの家は、もう一つ自分の家と言っても過言ではない。
いつも一緒にゲームをした部屋。将冴と将冴の両親と一緒にご飯を食べた部屋。
もう何もなかった。
一緒にいた思い出が、跡形もなく。
「なんで……なんで一言も……くっそ」
なんとか堪えた涙は、また流れる日を待つのだった。
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家に帰るなり、両親に挨拶もせず、部屋にこもった鈴。制服のままベッドにたおれこみ、顔を枕に押し付けた。
「なんで何も言わないのよ……バカ将冴」
将冴とは日本に来てからの付き合いだった。
最初はいつも一夏と一緒にいて、剣道をしてる、くらいの印象だった。
だが、鈴がいじめられた時。真っ先に助けてくれたのは一夏と彼だった。
それがすごく嬉しかった。
それからは一夏と将冴とよくつるんでいた。
大切な親友だった。
なんかグダッたけど、必要な話だと思います。はい。
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