お金が貯まったら、いつか行ってみたいものです。
「確かこっちの方に……」
すれ違いざまに聞こえた声の主を追って来たけど、だんだんと人通りが少なくなってきた。
誘い込まれた……?
「……これ以上は危ないか。クラリッサのところに……」
「戻ってしまうのか?ここまで追っておいて」
「なっ!?」
背後から声が聞こえ、僕は咄嗟に飛び退き、振り返る。
そこにいたのは、全身を黒いスーツで包んだ、大きな一つ目がついた黒い画面をつけた人物だ。
声からして、おそらく男……。
「あ、あなたは……」
「私か……どうやら篠ノ之束からは何も聞いていないようだな。まぁいい。教えてやろう。私は『ダイモン』という者だ」
「『ダイモン』……?」
「名前だけでは、少々不親切というものか。IS学園で襲撃してきた機体、ラウラ・ボーデヴィッヒのISに組み込まれていたVTシステム、福音の暴走……黒幕は私だ」
「なんだって?」
あれの全てを、この人が……?
わからない、そんなことをやってどんなメリットが?
「困惑しているようだな。まぁ、受け止める方が難しいというものか」
「なんでそんなことを……」
「順を追って説明してやろう。まずはあの球体……一応、私はダイモンオーブと呼んでいるのだがね。あれはIS学園の力がどの程度か知るのと、織斑一夏の能力を確かめるために差し向けた。結果としては、十分なデータを取る前に、君に破壊されてしまったがね」
「そんなことのために学園を襲ったっていうの?」
「君にとってはそんなものかもしれないが、私からすれば重大なことなのだよ。ブリュンヒルデである織斑千冬の弟だ。どんな力を秘めているか知る必要がある」
このダイモンという人物からすれば、一夏は不安要素だったっていうことなのか……?
「……VTシステムは?」
「あれは君の能力を知るために組み込んだ。ダイモンオーブを一撃で仕留めるだけのISを使いこなす君のね。あれで君のISデータを予想以上に取ることができた」
「そんなデータをとって、何をするつもり?」
「私の思惑を、そう簡単に喋るわけがなかろう?それに、まだ私の話の途中だ」
この人に付け入る隙がない。情報を引き出すのは難しいか……。
「次は……銀の福音だったな。あれは実験だよ」
「実験?」
「そう、実験だ。今世界の覇権を握っているのはISと言ってもいい。そのISを、開発者である篠ノ之束の手から離れさせる実験。福音はうまくやってくれたよ。落とされてしまったがね」
「一体どうやってISを……」
「その辺は篠ノ之束に聞くといい。それに、もうあの方法でISの主導権を握るのはやめたよ。IS一体を牛耳るのに、手間がかかりすぎる」
「なんで福音を……」
「たまたまさ。他意はない」
どうにも胡散臭い。
全て鵜呑みにしてもいいものかどうか。
「……IS学園をオーブが襲撃した時、見つけたという声が聞こえた。あれはあなたの声ですよね?」
「その通りだ。いやはやびっくりしたよ。二年前にドイツで初めて現れた時もだけどね」
「どういう意味?」
「V.コンバータを積んだ機体を私以外に所持していたからさ」
V.コンバータを知っている?
そういえば、あのオーブにもVコンバータが積んであった……
「なんでV.コンバータのことを……」
「君の両親の研究を盗んだからさ」
「なっ!?」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
将冴に待っていてと言われて言葉の通りにしているが……もうかれこれ30分以上経っている……。
「さすがに探しに行った方が……」
その時、ポケットに入れていた携帯電話が着信音とともに震えた。
電話?相手は……ルカか。
「もしもし」
『クラリッサ!?今どこにいるの!?』
「どこって、市街地の広場だが……」
『やっぱり……今すぐそこから離れて。できればハーゼの基地まで来て!』
「ま、待て!一体何が……」
『基地まで来たら説明するから、将冴くんも一緒に……エネルギーシールド0!?すぐに撤退させなさい!空軍に連絡して戦闘機による援護を要請して!……クラリッサ、いいわね。すぐに基地にくるのよ!』
「お、おいルカ!?……切れてしまった」
只ならぬ事が起きたのか……ここは言う通りにした方がよさそうだ。
将冴に連絡をして合流しなければ。
連絡先から将冴の番号を呼び出す。
しかし、すぐに切れてしまう。電波の届かない場所にいるのか?
「将冴……一体どこに」
胸騒ぎがする……早く見つけなければ。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「盗んだって……」
「言葉の通りだ。本当は機体データを盗もうと思ったんだが、見つからなかった。幸いにも、研究室にVコンバータのデータがあったから、それを拝借した。本当なら、直接聞き出して、機体データをもらうつもりだったのだが」
直接聞き出して……という事は、もしかして……
「まさか、あなたが……」
「君の考えている通りだ。私がテロリストを動かし、君たち家族を誘拐し、君の両親を殺し、君の四肢を奪った黒幕だ」
「な、あ……」
この人が……この……こいつが……お父さんとお母さんを……僕の手足を……
《警告。感情値、急上昇》
頭の中で声が聞こえる。これはスペシネフを発現した時と同じ……いや、そんな事はどうでもいい。
「お前が……お父さんとお母さんを……」
「怒っているのか。まぁ、無理もない。今まで過酷な人生を送ってきたとはいえ、君はまだ高校生だ。感情をむき出しにするのが当然だ」
「許せない……絶対に、絶対、絶対」
「さぁ、怒りをぶつけろ。そして見せてくれ。VTシステムを屠った負の塊を!」
「ダイモン!」
《感情値、規定指数を超えて上昇中。警告、これ以上感情値の増幅は危険です》
いちいち警告するな。
僕はこいつを……
「将冴!こんなところ、に……」
「クラリッサ……?」
難産が続きますね。
さて、昨日はうっかり普通にあとがき書いてしまいましたので、今日はオリキャラ紹介を。
滝沢洋子
女
28歳
IS学園の養護教諭。
養護教諭をする前は軍医をしていたとか、女版ブラック・ジャックだったという噂があるが、あくまで噂である。IS学園の養護教諭というだけで尾ひれがつきまくってしまった。本当に普通の養護教諭である。
将冴がよく保健室に運ばれてくるので、よく話す仲であり、千冬と真耶、クラリッサが将冴に向ける目が他の生徒と違うのに気づいて、外から見て楽しんでいる。
将冴の腹筋を見てから、腹筋フェチになったとかなってないとか……。
最近の悩みは出番が少ないこと。