ようやくここまできました。
「だからぁ、私にはわからんのだぁ!む……ビールおかわり!」
私……ルカの目の前で愚痴を吐きながら、ジョッキのビールをすごい勢いで飲んで行くクラリッサ。
この子、日本に行く前はこんなに飲む子だったっけ……。
「ドイツにいる頃は、自分でも言うのもなんだが、将冴とは一番仲の良かったと思っていた……今だって、一緒に住んでいる。でも、将冴は私を頼ってくれない、本心を見せてくれない!」
「あぁ、そうね。将冴君はあまりそういうの口にするタイプじゃなさそうだし……」
「そうなのだ!それなりに長く一緒にいるのに!」
「うんうん、頼ってくれないのは辛いわね。あ、ビールきたわよ」
「うむ……」
クラリッサはジョッキの掴みグイッとビールを流し込んでいる。あぁ、そんなに飲んだら……。
「ぷはぁっ!おぃ、りゅかぁ〜。お前はどう思うぅ?」
「どう思うって言われてもねぇ」
「わらしらって、こんな……うむぅ……」
クラリッサの瞼がゆっくりと閉じ始め、そのまま船を漕ぎ始めた。
「ちょっと、クラリッサ!」
「……しょうごのこと……こんなに、おもって……すぅ……」
「あちゃー、寝ちゃったか」
全く、本当に面倒なんだから。
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夜。
部屋で1人、考えをまとめていた。
ダイモンのこと、両親のこと、これからのこと。
今ここでベストな答えを出せるとは思っていない。
1人で考えるのには問題が大きい。リョーボさんの言う通り、打ち明けられる人を……。
と、考えていると、部屋の扉が開いた。
クラリッサが帰ってきたのかな?
「お邪魔するわよぉ〜」
入ってきたのはルカさんだ。
「ルカさん……と、クラリッサ?」
グッタリとしているクラリッサをルカさんが担いでいた。お酒の匂いがするっていうことは……酔いつぶれたってこと?
「将冴君、クラリッサのベッドどこ?」
「あ、こ、こっちです」
ベッドまで案内すると、ルカさんはクラリッサをベッドに寝かせた。
「ふぅ、疲れた」
「今日、飲んできたんですか?」
「ええ、クラリッサの愚痴でも聞いてあげようと思ってね」
「愚痴……ですか……」
僕のせい……かな……。
「結構溜まってたみたいだったからねぇ。たまに吐き出させたほうがいいわよ」
「あぁ、はい……」
「それじゃあ、私は部屋に戻るわね。クラリッサの介抱よろしくね」
「え、あ、ちょっ」
ルカさんはさっさと部屋を出て行ってしまった。
いやまぁ、介抱は別にいいんだけれども……
「着替えとかどうすればいいんだ……」
僕が着替えさせるわけにもいかないし。
はぁ、起こすしかないか。
「クラリッサ、服が皺くちゃになっちゃうよ」
「うぅん……もう飲めない……」
「ぷっ、ふふふ。なんてベタな寝言を……」
なんだか、さっきまでいろいろ考えていたのが馬鹿らしくなってきた。
仕方ない、このまま寝かせておこう。
僕も寝よう。さすがに疲れた……
「って、あれ?」
立ち上がろうとすると、服の裾を引っ張れた。
見ると、クラリッサが僕の服を掴んでいる。
「クラリッサ、離してくれないとベッドに……」
「どこにも……行かないでくれ……」
「……」
はぁ、卑怯だよクラリッサ。
寝言でそんなこと言われたら、その通りにするしかないじゃないか。
「一緒にいるよ、クラリッサ。ずっと一緒に……」
僕はクラリッサのベッドに入り、添い寝するように寝転がる。
「大好きだよ。クラリッサ」
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目が覚めると、目の前に将冴の寝顔があった。
え、なにがあったんだ?昨日はルカと飲んでいて……途中から記憶がない……。まさか、酔った勢いで……
これは今すぐに離れたほうがいいのか?
それとももう少し堪能したほうが……
「う、ん……」
もぞもぞと将冴が動き始め、目を開けた。
「あ、クラリッサ……」
「しょ、将冴……これは……その……」
「クラリッサ、今日何かある?」
「いや、予定はないが……」
「そっか……それじゃあ、もう少しこのまま寝ようか」
「へ?」
将冴は私の首に手を回し抱き寄せた。
え、いや、将冴がこんな、こんな!?
「ふふ、クラリッサドキドキしてるね」
「こ、こんなことされれば……ドキドキもする……」
「そっか。じゃあ、しばらくドキドキしてもらおうかな」
将冴に何があったんだ!?
将冴君が「甘える」を覚えた。
将冴の気持ちの切り替えが上手すぎる気がするが、作者の文章スキルだとこれが限界だった……。