IS 〜偽りの腕に抱くもの〜【本編完結】   作:sha-yu

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ナンバリングもとうとう130。全話数的にも141と、もう少しで150に到達しそうな勢いですね。今のペースと、今後の展開から考えて、完結は250話まで行くかもしれません。

……こう見ると、やっと半分を超えたところなのか(白目

まぁ簡単な見積もりなので、これより早く終わるかもしれませんし、遅く終わるかもしれません。


130話

 

ハッターさんに連れられてきたのは、ボクシングのリングのような場所だった。

 

ハッターさんはリングに入り、テンガロンハットを被ったままストレッチを始めた。

 

 

「あ、あの!スパーリングってどういう……」

 

「その名の通りだ。自分の拳で戦う。ただそれだけだ」

 

「でも僕は格闘技なんてやったこと……」

 

「安心しろ。スパーリングしながら教えてやる。大丈夫だ。お前の体のことはさっき聞いた。体調が悪くなったらすぐにやめていい」

 

 

確かに、僕自身アファームドを使うときは力不足を感じていた。所詮付け焼き刃の肉弾戦。ここで本格的に格闘技を習うのも悪くはないか……。

 

 

「どうだ。できるか?」

 

「……はい。お願いします」

 

「いい返事だ。ほら、これをつけろ」

 

 

そう言って渡されたのは、手をガードするためのグローブ。いくら束さんが作った義手とはいえ、そのまま殴り合えば壊れてしまう。

 

グローブを両手につけ、僕もリングに入った。

 

 

「ハッター!ショウゴに怪我させたら許さないから!」

 

 

いつの間にか、ナターシャさんがリングの外にいた。

チーフさんはジェニファーとステフのところに行ったのかな。

 

 

「わかってるってナタル。俺だって怪我させるつもりはないッ!」

 

「信じていいのかしら……」

 

 

ナターシャさんに激しく同意します。

 

 

「さて、少年っ!拳とはなんだと思う?」

 

「拳……?」

 

「難しい質問だったか。いいか、拳は人類に残された最後の最大の武器だ!武器を失い、敵がにじり寄ってくる……そんな状況を打破できるのは己の肉体、己の拳。極めれば、相手の心臓を止めることすらできる。俺が今からお前に教えるのは、そういうものだ」

 

 

いちいち暑苦しいのだけれど、言葉がまっすぐ突き刺さってくる。

 

 

「論ずるより動くぞ!さぁ、構えろ!お前のハート・アンド・ソウル!スピリット!拳に乗せて俺に叩き込めッ!」

 

「は、はい!」

 

 

腕を胸の前で構え、右の拳で殴りかかる。

しかし、ハッターさんは難なく体を逸らし躱してしまう。

 

 

「どうしたどうしたッ!お前の魂はそんなものか!」

 

「くっ!」

 

 

次は左っ!

 

 

「切り替えの早さは褒めてやる。だが、まだまだまだまだァ!」

 

 

突き出された左手をハッターさんは掴み、そのままひねり上げ僕をリングに倒した。

 

 

「ぐうっ!」

 

「ちょっ、ハッター!?」

 

「こんぐらいでギャーギャー騒ぐんじゃねぇ、うるさい女だ!少年、まだ行けるだろ!」

 

 

僕はすぐに立ち上がり、ハッターさんに応えるように拳を構えた。

 

 

「いけます」

 

「よし、もう一度来い!ただし次は大振りするな。小さく!コンパクトに!何度も!何度も!何度も!叩き込め!」

 

「はいっ!」

 

 

ハッターさんに言われた通り、大きく振りかぶらず、小さく、小さく、何度も拳をハッターさんにぶつけた。

 

ハッターさんは僕の拳を、腕で全部ガードする。

 

 

「狙うのは相手の顔だ!それだけで、相手の動きは制限される!相手の隙を自分で作れ!休むな!拳打ち続けろ!」

 

「ああぁぁぁぁっ!」

 

 

ただひたすらに、ハッターさんに拳を放ち続けた。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

「二人とも、そこまでだ。午前中の訓練を終了する。一時間の休憩の後、ISでの訓練を行う。遅れないように」

 

「「はい!ありがとうございました!」

 

 

午前中の訓練が終わり、私……ジェニファーは、タオルで汗を拭っていた。すると、同じく訓練を終わらせたステフが近づいてくる。

 

 

「ジェニー、お昼なんだけど……」

 

「あいつとは食べないわよ」

 

「まだ何も言ってないし、拒否するのも酷い!」

 

「あいつと食べたいなら、私抜きでね」

 

「もぉー」

 

 

ステフもいい加減うるさい。私はあいつとは絶対に馴れ合わない。

 

あんな男だからって専用機を持っているようなやつと……。

 

 

「そういえば、さっきハッター軍曹がショウのことを連れて行ってたね。何してるかだけでも観に行こうよ」

 

「なんで私まで……」

 

「いいからいいから」

 

「ちょっと、押さないでって!」

 

 

ステフに押されながら、あいつとハッター軍曹がいるであろうリングに向かうと、あいつがリングの上で仰向けに倒れていた。義足をつけずに、荒い息で。

 

 

「よし、良くやったぞ少年!明日もやるからな!」

 

「はぁ、はぁ……ありが、とう……ござい、ました」

 

「ショウゴ!大丈夫!?」

 

 

ナターシャ少尉があいつの元に駆け寄り声をかけている。

 

 

「うわぁ、ここで何やってたんだろう?」

 

「……知らない。私には関係ない」

 

「お、小娘2人。少年の様子を見に来たのか?」

 

 

私たちを見つけたハッター軍曹が話しかけてくる。

 

 

「ハッター軍曹、ショウはここで何していたんですか?」

 

「おう、あいつに格闘技を教えてやろうと思ってな。中々根性ある奴だな!おかげで腕がアザだらけだ!はっはっは!」

 

 

軍曹の腕を見ると、何度も殴られたような跡がある。

これ、全部あいつが……?

 

 

「そうだ、2人に頼みがあるんだが」

 

「何ですか?」

 

「少年とナタルの昼食を取ってきてくれ。少年は動けないし、ナタルは付きっ切りだろうからな」

 

「わかりました!ジェニー、行こう」

 

「なんで私が……」

 

「もう、ジェニー!」

 

 

ステフが私を責めるように声をあげるけど……私は素直に応じることができない。

 

 

「……おい、ジェニー。昨日の模擬戦、お前からふっかけたんだってな?」

 

「はい。それが何か?」

 

「チーフから聞いた。お前が少年のことを認められず、衝突してるとな。少年の何が気にくわない」

 

「それは答えなきゃいけないんでしょうか?」

 

「ああ」

 

 

はぁ……この人は暑苦しい上に、こんなに面倒な性格してるのか。

 

 

「男でISを動かしているのが気にくわないんです。男ってだけでなんの努力もなしに専用機をもらって……努力して専用機をもらえるようになった世界の代表候補生のことをバカにしているとしか思えません」

 

「ハッ!どんな大層な理由かと思えば、お前はケツの青いガキだったようだナァ!」

 

「なっ、それはどういう意味ですか!?」

 

「昨日の模擬戦が全て物語っているだろう。代表候補生をバカにしている?あいつに勝ってから言え!」

 

「くっ……」

 

「それにな、お前はあいつの体を見たか?」

 

 

あいつの……顔に似合わないあの体のこと?

 

 

「あんな体、なんの努力もなしに作れるもんじゃねぇよ」

 

 

軍曹はそのまま立ち去っていった。

 

なんなの……みんなして。男だから専用機をもらったんでしょ?たったそれだけの……理由で……。

 

 

「ジェニー……」

 

「食堂行くわよ。ステフ、あの男の分持って行きなさい。私はナターシャ少尉の分持って行くから」

 

「……うん!」




ジェニファーのキャラが立ちすぎてステフが霞んで行く……。

もはやステフはいらなかったのではないかと思い始めるほどだ……。
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