……この挨拶も何回目でしょうね……。
できるだけ休まないようにはしているんですが、やっぱり難しい日がありまして……。ご理解いただければと思います。
基地を出て、ナターシャさんに連れられてきたのは小さなバーのようなお店だった。
なんでも、知り合いが待っているとか……
「このお店ですか?」
「そうよ、行きつけなの。さ、入りましょう」
店に入ると、中はガランとしていた。
まぁ、時間的にはまだ早いし、しょうがないか。
「おーい、ナタル。こっちこっち」
ナターシャさんを呼ぶ声。
目を向けると、テーブル席のほうに茶髪の女性が手にビールジョッキを持って座っていた。
「イーリ、待たせたわね」
ナターシャさんに車椅子を押されながら、その人の元へ。
近づいてわかったけど、テーブルの上には空になったジョッキが何個もある……結構飲んでるな……。
「ナターシャさん。このかたは?」
「紹介するわね。彼女はアメリカの国家代表のイーリス・コーリング。私の友達よ」
「よろしくな」
「それで、この子が貴重な男性IS操縦者の……」
「柳川将冴です。よろしくお願いします、イーリスさん」
「そんなにかしこまるなよ。私のことはイーリでいいぞ」
こっちの人は、相性で呼ばれないと気が済まないのだろうか……。
ともあれ、自己紹介も済んだところでテーブルにつく。お腹が減ってしょうがない。
「イーリ、もう飲んでいたの?」
「ナタルが来るのが遅かったからよ。あ、料理はテキトーに頼んでおいたから」
「あらそう、それじゃ私も飲もうかしら。ショウゴは?」
「水をもらえますか?」
「そんなのでいいのか?お前も飲もうぜ」
イーリスさんが茶化すように僕にジョッキを押し付ける。
「いえ、僕は……」
「なんだよ、つれねぇな」
「ちょっと、ショウゴはまだ未成年なの。マスター、ビールと水ちょうだい」
ナターシャさんが注文を伝えると、マスターらしき人が小さく頷いた。
数分とせずに、マスターがビールと水を持ってきてくれる。
「それじゃあ、ショウゴとの出会いを祝して」
「乾杯!」
「か、乾杯……」
僕は水だけど……
ナターシャさんとイーリスさんはビールを一気に飲み干した。
「っぷは!いやぁ、この一杯のために生きてるな」
「もう何杯も飲んでるくせして、何言ってるのよ」
「細かいことはいいんだよ。そうだよな、坊や」
坊やって……まぁ、そうかもしれないけど。
「そ、そうですね」
「なんだ?綺麗なお姉さん2人と一緒で緊張してんのか?」
「いえ、そういうわけじゃなくて……」
「イーリ、ショウゴは疲れてるんだから、あんまり絡まないでよ」
「疲れてるって……ああ、候補生たちと訓練してから来たのか。あいつら、かなりハードな訓練してるらしいからなぁ。まぁ、チーフが教官なら仕方ないかもしれねぇが」
チーフさんの訓練ってそんなにキツいのかな?
今日は色々疲れていたし、キツく感じる前に訓練やめさせられたし……。
「坊や、ジェニーに試合申し込まれてコテンパンにやられたんじゃないのか?あいつはかなり強いからなぁ」
「イーリ、コテンパンにやられたのはジェニーの方よ」
「え、マジかよ!お前ジェニーに勝ったのか!?」
「はい、まぁ、一応……」
コテンパン、というほどやってはいないけど……。
「じゃあ、疲れてるってなんで……」
「ハッターよ」
「あぁ……」
ハッターさんの名前が出ただけで把握できるのか。
まぁ、暑苦しいのはみんな知っているだろうしね。一緒にいるだけで疲れるからなぁ……。
「お待たせしました」
マスターさんが料理を運んできてくれる。
ステーキ、ピザ、フライドチキン……昨日と似たような……いや、こっちに来てから脂っこいものばっかりなんだけど!?
「きたきた、 さぁ食うぞ!」
「ちょっとイーリ!なんでこんな脂っこいものばっかり!」
「ナターシャさん、イーリスさんのこと言えませんよ」
「え?」
「昨日の夕食のメニュー、思い出してください」
ナターシャさんは思い出すような仕草をし、「あ」とだけ言って顔を青ざめた。
「なんだぁ?ナタルも人のこと言えねぇんじゃねぇか」
「き、昨日は、ショウゴがきたから……」
あの分のカロリーを消費するのはなかなか大変だったよ……。
「まぁ、1日食べたからってすぐにどうなるわけじゃないさ。ほら、坊やも食べなって」
「あはは……いただきます……」
明日も早く行ってトレーニングしよう。
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「へぇ、それでその体にねぇ」
「うう、ショウゴ。そんな大変な人生を送ってたのね……」
「ナターシャさん、あなたが泣くことじゃないですから……」
飲み始めてから1時間ほど経ち、なぜか僕の身の上話を2人に聞かせていた。そんなに楽しいものじゃないし、僕もあまり話したくはなかったんだけど……断るのも興醒めしてしまうだろうし。
「ほら、ナタル。泣き止めって。坊やが困ってんぞー」
「イーリ、あなたは薄情よ!こんな話聞いて、何も思わないの?」
「いや、思うところはあるけど、ナタルが泣きすぎてて若干引いてる」
「なによそれぇ!」
まぁ、この2人を見ていると、なかなかに楽しいのだけれど……。
「もう、イーリったら……ちょっと席を外すわ」
「おう、トイレか。行ってこい行ってこい」
「わざわざ言わなくていいから!」
ナターシャさんは顔を赤くして、席を立った。イーリスさんに、いつも遊ばれているみたいだ。
「はっは、ナタルは何しても面白いからな。坊やもそう思うだろ?」
「まぁ、2人のやりとり見てると、楽しそうだなぁとは思います」
「まだ15なのに、達観してんな。面白くないってよく言われるだろ」
「いやぁ……はは」
実際に言われたことはないけど、自分でもなんとなくそう思う。
「……どうだ、ここは楽しいか?」
「楽しいですよ。ナターシャさんがいて、ハッターさん、チーフさん、ステフにジェニー。退屈はしないです」
「そうか。にしては、寂しそうな目をしてるな」
ドキッとした。
心の中を全部見透かされているようで。
「女か」
ニヤッとして聞いてくる。
ああ……その顔は少し腹がたつ……的確に当てられてるから余計に……。
「図星か。若いのにやるねぇ、ひゅう〜」
「だったら何ですか……もう……」
「どうもしねぇよ。ま、ナタルにはかわいそうなことしてると思うがな」
今の言い方……どういうことだろうか……。
「まぁ、お前は気にすんな。そうだ、訓練が辛かったら言えよ。ほれ、連絡先」
そう言って名刺を渡される。
んー……こうなんども渡されると、僕も名刺を持っていた方がいいのか、と思い始めてしまう。
日本に帰ったら、黛先輩に頼んでみようかな。
「いつでも連絡してくれ。相談くらいなら乗ってやるよ。性の悩みとか」
「そっちは結構です」
と、ここでナターシャさんが戻ってきた。
「イーリ!ショウゴのこと口説いているんじゃないでしょうね!ダメよ、ショウゴは私のものだから!」
「いや、ナターシャさんのものではないんですけど……」
イーリス難しい。
何回も書き直してしまいました。
「性の悩み」のところ、書き直す前は「一発くらいならやらせてやるぞ」ってなってました。
さすがにそれはないかなって……。