やや話が停滞気味。
今回は少し話を進めようかと思います。
「ほら、ナタル。自分で立てよ」
「イーリぃ……もう一軒行くわよ、もう一軒!」
バーでしこたま飲んだナターシャさんが、イーリスさんの肩にもたれ掛かりながら、ハシゴすると大声をあげた。
ナターシャさん、酒飲んだらこうなるんだなぁ……。
「ああ、こりゃもうダメだな。坊や、ナタルのことは私に任せて、家に帰んな」
「え、でも……」
「いいから、私は慣れてっからよ。えっと、確かここに……」
イーリスさんがナターシャさんの服のポケットに手を突っ込み、なにやらガサゴソと何かを探している。
「あんっ、イーリのエッチ」
「変な声出すなよ……あった。ほれ、家の鍵。道はわかるよな?」
「え、ええ……」
「上出来。まっすぐ帰るんだぞ。ほら、付き合ってやるから、行くぞナタル」
「さっすがイーリ!話がわかるじゃない……あれぇ?ショウゴは?」
「お子様は帰る時間だ。ほら行くぞ」
「嫌よ嫌よ、ショウゴが居ないんじゃ嫌よぉ〜!」
「文句言うな。ほらさっさと歩けって」
イーリスさんはナターシャさんを連れて次の店に向かっていったようだ。
まぁ、未成年だし、夜間の外出は避けたほうがいいか。明日も訓練あるし。
っと、そうだ。クラリッサから連絡来てるかもしれない。携帯、携帯……。
「メール3件……クラリッサとラウラ、それに千冬さんから?」
とりあえず、千冬さんからのメールを見てみよう。
『件名:無題
忙しいところすまない。
留学の状況を聞きたくて連絡した。いつでもいいから、返信してくれ。』
まぁ、担任だし、留学ともなると心配だよね。
これは家に帰ってゆっくり返信しよう。
次はラウラからのメールだ。
『件名:そちらは大丈夫か?
兄さん、そっちでは何か問題は起きていないか?
何かあれば、シュバルツェ・ハーゼを派遣するからいつでも言って欲しい。
それと、シャルロットが随分怒っていたぞ。兄さんに待ちぼうけをくらったと愚痴ってきた。兄さん、シャルロットに何かしたのですか?』
ハーゼを派遣するって、そんなことまで考えなくていいのに……ていうか、シャルがそんなこと言ってたのか。日本に帰った時怖いなぁ……。
とりあえず、こっちは大丈夫って連絡しておこう。シャルのことも気にしなくていい……っと、送信。
夜遅いし、返事が来るのは明日かな。
最後にクラリッサのメール……
『件名:大事ないか?
そっちは忙しそうだな。
こっちは特になにもなくて暇を持て余してる。
訓練は大丈夫か?
昨日言っていた、代表候補生とは仲良くなれたか?
ナターシャ・ファイルスに変なことはされてないか?
将冴のことが心配でたまらない。
いつでもいいから連絡してくれ。
待ってる』
……
僕はすぐにクラリッサの番号を呼び出した。
1コール……2コール……3コール……
『将冴!』
「クラリッサ、メールありがとう。今大丈夫だった?」
『ああ、大丈夫だ』
「もうそっちは日付変わっちゃったよね……ごめん、こんな時間に」
『ううん、なかなか寝れずにいたから気にしないでくれ』
クラリッサの声……1日聞かなかっただけなのに、こんなに恋しくなっている。
『そっちは大丈夫か……って、昨日も聞いたな』
「そうだね。でも……」
『でも?』
「……ちょっと、愚痴ってもいいかな?」
『うん、いいぞ』
「今日、訓練でね……」
人生初かもしれない。誰かに愚痴をこぼすのは……。
「ハッターさんっていう人と……」
こんなに自分の気持ちを、晒け出すのは……。
「その後の訓練で、変なミスばっかりして……」
リョーボさんが言っていたことを、今、本当に理解した気がする……。
「僕、情けなくって。これじゃあ、ジェニファーに言われた通りだと思っちゃったよ。本当に貧弱だなぁって」
『……そんなことはない』
「え?」
『将冴が貧弱なんて思わない。VTシステムや、福音の時だって、将冴がいなければどうなっていたかわからない。それはみんなが知っている』
「クラリッサ……」
『だから、自分を落とすようなことを言わないでくれ……』
「うん……ありがとう、クラリッサ」
ふふ、クラリッサには敵わないな……。
はぁ……なんだか吹っ切れたかも。
「ごめんね、クラリッサ。愚痴なんか聞かせて」
『役に立てたなら良かった。……明日は?』
「今日と同じ、訓練の1日だよ」
『そうか……怪我しないようにな。また愚痴も聞いてやる……全部話してくれ。恋人なんだから』
「うん。わかった」
『……さすがに、もう遅いな。明日も早いだろう?早く休んだほうがいい』
「そうする。おやすみ、クラリッサ」
『ああ、おやすみ』
ゆっくりと通話を切り、少し携帯を眺めた。
うん、すっきりした。
「恋人か」
「えっ!?」
背後から声をかけられた。聞き覚えのある声……この声は……。
「一週間程度しか経っていないが、随分と手の早いことだ。相手は、あの時私を撃ってきた女か?」
「ダイモン……」
僕の周りで起こる事件の黒幕……仮面の男。なんでここに……
「ふふ、随分と怖い目をする。それにしては、冷静だな」
「どうしてここに……」
「君のことを知りたくてね。迷惑だったか?」
「すごく迷惑だ」
「当たり前か。まぁいい。今日は君に危害を加えに来たわけではない。忠告をしに来た」
……胡散臭いことを言う。
「とても信じられるものじゃないんだけど」
「信じるも信じないも、君の自由だがね。まぁ、君の意思に関係なく喋らせてもらう。明日、テロリストがこの近くを襲撃する。気をつけたまえ」
「なんでそんなことを知って……」
「私が焚きつけたからさ。力も与えた。ドイツのように、簡単にはいかない」
そう言うと、ダイモンは僕に背を向けた。
またいなくなるつもりか!
「待て!」
「せいぜい頑張りたまえ。そして、今度こそ私に負の力を見せてくれ」
以前のように、ダイモンは揺らぎ、夜の闇に溶けていった。
……堂々と犯行予告か。
軍に伝えた方がいいか……でも、これは僕の……
「はぁ、違うだろ」
僕の問題だけど、もう一人で抱え込まない。
……今から誰かに連絡するのも難しい。明日、朝一でナターシャさんやチーフに伝えよう。
「好きにさせない……」
これからどんどん事件に巻き込まれていくだろうと思います。
それと、キリのいいところ……夏休み終了頃まで書いたら、更新お休みさせていただきます。
お休み、と言っても一週間ほどですので、すぐに戻ってきます。
少し執筆から離れて静養したいと思います。
誠に勝手で申し訳ありませんが、ご理解いただければと思います。