読んでくださっている方々のおかげでここまできました。
まだ物語は続きます。これからもよろしくお願いします。
「……むん!!」
リングで倒れたままのハッターはむくりと起き上がり、将冴に殴られた腹部を撫でた。
「2分くらいか。まぁ、一発で俺の意識飛ばすなんて、さすがじゃねぇか。グレイトだな!しかし、ちゃんと掛け声もやれと言ったはずなのに、あいつやらなかったな」
不意打ち気味に拳を叩き込まれたことは気にしていないようだ。
「さて、少年は……行ったみたいだな。チーフへの言い訳はどうすっかなぁ……」
「誰への言い訳だって?」
「ゲッ!?」
ハッターがゆっくりと振り返ると、そこには腕を組みハッターを見下ろすチーフがいた。
「ガッデム……」
「ハッター、将冴の訓練はどうした?」
「いや、そのぉ、だな……いいの一発貰っちまってよ!マジで今起きたばっかりで!」
「はぁ……もういい。こちらからの通信も拒否しているくらいだからな」
「2人が危ないって聞いて、すぐに行きたそうにしていたからな。少年」
立ち上がり、埃を払うように体をパンパンと叩きながらチーフに伝えるハッター。
「もう少し、慎重に行動する男だと思っていたんだがな」
「いやいや、少年は年相応の男だって。少し周りを見過ぎているだけのな」
「そのようだな……無事に戻ってくるのを待つばかりか」
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「よいしょ!」
尻尾で攻撃してくるダイモンオーブの攻撃を、テムジンのスライプナーでいなしながら、反撃の隙を狙う。
以前戦ったオーブやアームより装甲が硬い。そういえば、アームはライデンのバイナリーロータスで瞬殺したんだっけ?
これもバイナリーロータスで仕留められるかな?
……ていうか、これって蛇じゃなくて芋虫だよね?体くねられせて移動しないし、球体が繋がって出来てるから余計に芋虫っぽい。ダイモンワームと読んでおこう。オーブとアームとワームで語呂がいいし。
「ちょっと、さっきより動き悪いわよ!」
「ああ、ごめんジェニファー。どうやって倒そうか考えていて」
「何か大技はないの?」
「あるにはあるけど……ジェニファー、1分くらいワームの相手できる?」
「そ、それくらい」
「正直に」
「……少し厳しい」
だよね。
さて、どうしようかな……。
ワームは本体とも言える大きなオーブに小さなオーブが何個も連なっている。
……大きなオーブさえ壊せれば……そうだ、ハッターさんに教えてもらった……。
「ジェニファー!」
「なに?」
「こいつの動き止めて!」
「動きを止めてって、どうやって!?」
「なにしてもいいよ!ほんの数秒でいいから、僕に攻撃が届かないように」
「そんな無茶な要求を……」
「じゃあ、頼んだよ!」
「あ……もう!」
僕はテムジンからアファームドに換装し、ワームに急接近する。
ワームの懐に潜り込むと同時に、ジェニファーのISの攻撃がワームを襲った。
「ナイスタイミング!」
「いいから早く!もうエネルギーが少ない!」
「わかってる」
ハッターさんから教えてもらった拳。さっきもできたんだ、今もできるはず……あの掛け声やらなきゃダメかな……ハッターさんも一番重要だって言ってたし……。
僕は右半身を引き右手腰だめして構える。
「ふぅ……」
小さく息を吐く。
「行くぞ」
ブーストを一瞬点火し、瞬間的に加速。大きく一歩踏み込む。
「バァーニングゥ……」
勢いを殺さずに拳を突き出した。
「ジャスティィィス!!」
掛け声とともに打ち出された僕の拳は、ジェニファーによって動きを制限され無防備になった大きなオーブに文字通り突き刺さった。
……やばい、恥ずかしい。
すぐに拳引き抜き、恥ずかしさから逃げるためにサブマシンガンを展開し、今穴を開けたところに掃射した。
ワームは沈黙し、大きな球体は火花を散らし、そう時間も経たずに爆発した。
「ふう」
安堵の息をつき、ジェニファーの方を見る。
「ジェニファー、大丈夫?」
「なんでまた聞いてくるのよ」
「いや、なんとなく?」
「あ、そう……別に問題ないわ」
「そっか、良かった。それじゃ基地に……」
ガシャン
戻ろうと言おうとした瞬間、ジェニファーが膝を折り、地面に座り込んだ。
「あ、れ?」
「大丈夫じゃなさそうだね」
「なんか急に……」
「安心して力抜けたんじゃないかな?さっき、かなり危ない状況だったわけだし。立てる?」
「……無理」
そっか。しょうがない。嫌がられるのは承知で……
「よっと」
「あ……」
ジェニファーの右腕を僕の首に回し、彼女の腰あたりを持って、立ち上がらせる。
「ここで立ちすくんでいても仕方ないでしょ。少しだけ我慢してね」
「……うん」
やけに素直に頷くジェニファー。
なんか、少し怖いんだけど……。
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基地に戻ると、涙目のステフと腕を組んでいるチーフさん、嬉しそうに笑っているハッターさん。そして、ボロボロのナターシャさんとイーリスさんが。
とりあえず、ジェニファーを下ろして、ISを待機状態にしする。
「ジェニー!」
「うわっ、ちょ、ステフ!?」
ステフがジェニーに抱きつく。よほど心配だったんだな。
などとほのぼの二人を見ていると、ギュムッと抱きしめられた。
「むぐぅ?」
「ショウゴ!勝手に出て行ったって聞いて心配したんだから!」
「な、ナターシャさん……すいません。無茶なことして」
「本当よ。……無事良かった」
ギュッと、また強く抱きしめられる。あぁ……クラリッサがいなくて良かった。
……そうだ、チーフさんに謝らないと。
僕は気が重くなりながらも、チーフさんに近づく。
命令無視に、通信拒否……日本に強制送還されても仕方ない。
「チーフさん、申し訳ありません」
「……」
「この罰は、甘んじて受けます」
「チーフ!」
ステフが声をあげた。
「ショウはジェニーを助けてくれたんです!だから、罰は……」
「ステフ……」
「私からも」
ジェニーがおぼつかない足取りながらも立ち上がり、そう言った。
「お願いします、チーフ」
「ジェニファーまで……」
「……将冴」
「は、はい!」
「明日の訓練の参加を禁止する。それが、今回の罰だ」
「え?」
参加禁止って……留学生としてきているから、罰と言っちゃ罰なのかもしれないけど……。
「ジェニー、ステフ。お前たちも明日は訓練に参加するな」
「なっ!?」
「どうしてですか!?」
「今回の事件の事後処理と、ISの整備で訓練どころではない。わかったな?」
二人は何を言われたのか理解できずに、顔をキョトンとさせている。
「返事は!」
「「い、イエス、サー!」」
ビシッと敬礼をする二人。
チーフさん、疲れてるだろうからって気を回してくれたのかな。
「よし、では今日は解散。ナターシャ、イーリス、今日は助かった」
「別にかまわねぇよ。久々に骨のあるやつと戦えたからな」
「イーリはそれでいいかもしれないけど、私は散々よ……。早くシャワー浴びたいわ。ショウゴも一緒に浴びましょう!」
「いや、いいです」
「おうおう、少年。モテモテだなぁ!」
「ハッター、お前は始末書だ。さっさとこい」
「な、チーフ!明日でもいいだろ!?」
ハッターさんは情けない声をあげ、チーフさんはダメだと言いながら立ち去っていった。
「ハッター、何かしたのか?」
「さぁね。ま、あんな暑苦しい奴のことは気にせず、今日はみんなでご飯にしましょう!」
「お、いいじゃねぇか。代表候補生の二人も来るだろ?」
「い、いえ!私達が一緒なんて……」
ジェニファーとステフは尻込みしている。
まぁ、アメリカの国家代表とテストパイロットの二人と一緒にご飯なんて、恐れ多いか。
「ショウゴは強制参加よ?」
「ふふ、わかりました」
「ほら、坊やは行くって言ってるぞ?」
ジェニファーとステフは顔を見合わせ、決心したかのように小さく頷いた。
「それじゃあ……」
「ご一緒させてもらいます」
「よし決まり!さ、早く着替えてご飯いきましょう!ショウゴ、一人じゃ大変でしょう?一緒にシャワーを……」
「お断りします」
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一時間後。
昨日、ナターシャさんとイーリスさんと来た店で夕食を食べることになったのだけれど、すでにナターシャさんが出来上がっている。
「そしたらねぇ〜、イーリったら腕のついた球体をぐるぐる回し始めてね、私が相手してた球体にぶち当てたのよ!?爆風に煽られるわで散々だったわ!」
「いいじゃねぇか、ちゃんと倒したんだからよ!」
「これよ!イーリは昔っから反省しなくて」
「それは今関係ねぇだろ!」
大人2人のマシンガントークに押され気味のジェニファーとステフ。僕は昨日体験済みなので、高みの見物。
「なんか、すごいね。2人とも……」
「あ、ああ……」
「お酒が入れば、誰だっていつもと違う感じになるよ」
机に並べられた料理から、カロリーの少なそうな料理を皿に盛りながら2人にそう言った。
織斑先生とか、山田先生もすごいらしいからなぁ。お酒入ったら。
と、その時。ピリリと携帯の着信音がなった。それも2つ。
「ん?誰よ、こんな時に……」
一人はナターシャさん。
「あん?私もかよ」
もう一人はイーリスさんだった。
2人は席を立ち、電話をしに行った。まぁ、僕らには聞かせられないような話もあるだろう。
「2人とも行っちゃったね」
「そうだね」
「……」
何だろう……さっきからジェニファーがこっちを見てくる……。
「ねぇ」
突然声をかけてくる。
なぜか心臓がどきっとした。
「なに?ジェニファー」
「その……まだ、お礼言ってなかったと思って……」
「お礼?」
今日のこと言ってるのかな?
「そうだ、私もお礼言ってない!ショウ、今日はありがとう!」
「いや、そんな礼を言われるようなことはしてないし、もう少し早く駆けつけていれば、あんなに追い詰められることは……」
「ううん。助けてもらったのは本当だもん。ほら、ジェニーも」
「う、うん……」
ジェニーはなにやら言いにくそうにモジモジとし始める。
まぁ、認めたくない奴にお礼言わなきゃいけないんだもんね。そりゃ、嫌だろう。
「しょ、ショーゴ。今日は、その……ありがとう。それと、ずっとひどい態度をとってごめん。一発殴られても、文句は言わないよ」
「いや、僕は気にしてないよ」
「私の気がすまない。ほら、思いっきり!」
歯を食いしばるジェニファー。
んー、女性を殴りたくないんだけど……
「それじゃあ、一発」
「ショウ、手加減してね」
「ステフ!余計なこと言わないで!」
「行くよ、ジェニファー」
「ああ!」
ギュッと目を閉じるジェニファー。
僕はゆっくりとジェニファーのおでこに手を伸ばし。
「ていっ」
「あう!?」
デコピンをくらわせた。
「はい、一発ね」
「え、いや、もっと思いっきり……」
「女の子殴る趣味はないし、今日も散々ハッターさんを殴ってきたから、これでいいの」
「でも……」
納得がいかない様子のジェニファー。
んー、それじゃ……
「ジェニーって、呼んでもいい?」
「え?」
「殴る代わりに、ジェニーって呼ばせて欲しいんだけど」
「う、うん……」
「じゃあ、この話はこれで終わり。ほら、酔っ払いがいない間にご飯食べようよ、ジェニー」
「……ああ、ショウ!」
やっとジェニーが心開きました。
アメリカ編は、あと3話くらいかなぁ……。
伸びる可能性もありますので、ご容赦ください。