そこまで長々とやるつもりではないですが……おそらくいつもの通りダラダラと書きます。
「……」
「……」
狼牙の平行世界から来たという発言に、将冴は目をぱちくりさせ、狼牙は信じられないかといった風に頭を掻いた。
「突表紙もないことを言っているのはわかっている。だが、この食い違いはそう結論づけるしかないのだ。白……俺のISに調べてもらったが、俺のいたところと微妙に地形が違っているようだし、何より平行世界と決定づける要素が……」
「僕、というですね?」
「……ああ。察しが早くて助かる。柳川将冴、お前の存在が俺のいた世界とこの世界の相違点だ」
にわかには信じがたいことであるが、狼牙が嘘を言っているとは思えない。それに、狼牙の話が本当だとすれば、将冴の中で狼牙という存在の説明がつくのだ。
「信じるも信じないもお前次第だ。どんな扱いをされても抵抗はしない」
「……確かに信じがたい話ではあるけど、狼牙さんが嘘を言うメリットはありません。僕は狼牙さんを信じます。千冬さん……織斑先生にも口添えをして、できるだけ手荒な真似はしないようにします」
「それは助かる」
狼牙はようやく安心できたのか、安堵の表情を浮かべ椅子に座った。それと同時にクラリッサがコーヒーを人数分淹れて運んできた。
「話はひと段落ついたか?」
「うん。ちょっと変な感じになっちゃったけど」
「キッチンから聞いていた。私も信じられるものではないが……漫画やアニメの中ではよくあることだ」
「現実で起こっても困るんだけどね……」
「それもそうだな……。狼牙と言ったな。好みがわからなかったから、砂糖とミルクは自分の好みでいれてくれ」
テーブルにコーヒーと角砂糖の入った容器とミルクの入った容器を置いていく。
「わざわざすまない。ありがたくいただく」
3人はそれぞれコーヒーに口をつけていく。
と、狼牙は一つ気になったことを将冴たちに聞くことにした。
「ぶしつけな質問なんだが、いいだろうか」
「何ですか?」
「二人は、付き合っているのか?」
「ぶふっ!?ごほっごほっ!」
クラリッサがコーヒーを吹き出し、将冴が背中をさする。
さっきほど、キスする寸前のところを見られたのを思い出してしまったからだろう。
将冴はクラリッサの背中をさすりながら狼牙の質問に答えた。
「うん、僕とクラリッサは付き合ってるよ。世間的に色々問題があるから、近しい人にしか知らせてないけどね」
「やはりそうか……。さっきは情事の邪魔をしてすまなかった」
「それはしょうがないよ。突然平行世界に来たんだから」
そこでクラリッサがようやく落ち着いた。むせたせいなのか、キスの瞬間を見られた時の恥ずかしさか、顔が赤くなっている。
「すまない、クラリッサ。変な事を聞いてしまって」
「別に構わない。事実だしな……」
元の世界でラウラから聞いたクラリッサの印象とだいぶ違う事に違和感を覚える狼牙。まぁ、平行世界なら仕方ないと自分の中で結論づけ、それ以上踏み込むのはやめた。
コンコン
ちょうど話題が途切れたところで、ノックする音が響き、それに続いて、狼牙も聞き覚えがある声が聞こえた。
「織斑だ。入るぞ」
将冴の返答を聞く前に扉を開き部屋に入ってきたのは、織斑千冬だった。狼牙の知っている千冬と変わりはなさそうで、少し安心する。
「将冴、クラリッサ。こいつが件の不審者が」
「はい。……とはいっても、不審者というより被害者という方が正しいかもしれません」
「どういう事だ?」
「えっと……狼牙さん、同じ話になってしまうんですが、もう一度説明お願いできますか?」
「ああ、それくらいはおやすいご用だ」
狼牙は千冬に、先ほど将冴に話した話をする。
全て聞き終えた千冬は、考え込むように腕を組んだ。
「到底信じられるものではないな。本来なら身元が確定するまで拘束するのだが……」
「織斑先生。狼牙さんが嘘を言っているとは思えません。現に、彼はこの部屋に突然現れました。それに、平行世界ではありますがIS学園の生徒でもあるようですし、あまりひどい事は……」
「……銀、といったか。お前はこの学園に危害を加えるつもりはあるか?」
「微塵もないな。世界は違えど、母校だ。誰かを傷つけるつもりはない」
狼牙から帰ってきた応えに、千冬は表情を崩さずに頷いた。
「わかった。銀狼牙、お前の処遇については私が取り持とう」
「寛大な措置に感謝する」
「では付いて来てもらおうか。必要なものを渡す」
「承知した」
狼牙は立ち上がり、千冬とともに扉の方へ向かおうとするが、それを将冴が止めた。
「あ、ちょっと待ってください!」
「どうした?将冴」
「えっと、そろそろ来るはずなんですが……」
と、将冴が呟いた瞬間に部屋の扉が開かれ、バスケットを持ったラウラとシャルロットが入ってきた。
「兄さん、すまない。遅くなった」
「食堂の人たちが張り切っちゃって……ちょっと時間かかっちゃった」
「ううん、ベストタイミングだよ二人とも。面倒なこと頼んでごめんね」
「お兄ちゃんの頼みなら聞かないわけにはいかないからね」
「シャルロットの言うとおりだ」
「将冴、これは……」
千冬が困惑したように聞いてくる。
「シャルとラウラに、サンドイッチを頼んでたんです。話を聞くことになるから、食堂に行く時間がないと思って。織斑先生、狼牙さん。どうぞ持って行ってください。ラウラ、二人に渡してあげて」
ラウラが将冴の言うとおりにバスケットを千冬に手渡した。
狼牙はサンドイッチよりもラウラが将冴のことを兄さんと呼んでいること気を取られていた。
「すまないな。あとでいただく」
「引き止めてすいません。それを渡したかっただけなんです」
「いや、こちらとしても助かった。銀、お前もいうことがあるだろう」
「あ、ああ、そうだな。わざわざすまない。心遣いに感謝する」
二人はそのまま部屋を出て行ってしまった。
ラウラとシャルロットはうまく状況をつかめないまま立ち尽くしたが、もう一つバスケットがあるのを思い出した。
「そうだ、もう一つサンドイッチあるんだけど……」
「ここで食べよう。シャルもラウラも、朝食まだでしょ?僕もお腹すいちゃって。クラリッサもお腹すいたでしょ?」
「ああ、色々あったからな」
「兄さんと食べていいのか?」
「もちろん。断る理由がないよ」
朝からバタバタとしたが、四人はようやく朝食にありついた。