他人のキャラって難しいよね。
「それで、俺をどこに連れて行こうと言うのだ?」
外へ出る準備を済ませ、モノレールに乗ったところで狼牙が将冴に聞いてくる。
将冴は意地悪な笑顔を浮かべ義足をぷらぷら動かしながらながら「秘密」とだけ返した。
すぐに目的の駅に着くと、将冴と狼牙はモノレールを降り、改札をくぐった。
「あ、狼牙。ちょっと待っててね」
将冴は車椅子を拡張領域から展開させて座ると、すぐに義足を拡張領域に戻す。
その様子を見た狼牙は、前々から気になっていたことを聞くことにした。
「将冴、何故義足があるのにわざわざ車椅子を使っているのだ?」
「言ってなかったっけ?義肢を使うと、神経への負担が半端ないから、長時間4つ付けてると神経ズタズタになっちゃうんだよね」
「それはまた……難儀な体だな」
「束さんの技術力を持ってしても、さすがに無理だったみたい。人体そのものについては、束さんはあまり得意じゃなさそうだしね」
「得意ではないのに、こんな接合部を取り付けられるのは気が気ではないな」
「まぁ、その時はそうするしかなかったからね……」
手術の後が一番辛かったのは伏せておく将冴であった。
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狼牙が将冴の案内のもと、車椅子を押して街を歩いていく。世界は違えど、街並みはほとんど見覚えがあるものであり、もとの世界にいるのではないかという錯覚を覚える。
「ん?この道は……」
「もしかして、もとの世界でこの道通った?」
「ああ……確かこの道は……」
狼牙が思い出そうとしているところで、目的地に到着した。
そこはシャルロットとラウラが今日アルバイトをするというメイド喫茶だった。
「やはりここか……」
「来たことあった?」
「ああ、元の世界でな」
「それは残念。もしかしたら、狼牙は一度見た光景を見るかもしれないね」
などと話しつつ、二人は店に入った。
「おかえりなさいませ!ご主人様、お坊っちゃま」
「おい、このメイド。できるぞ」
「僕、狼牙と同い年なんだけどなぁ……」
お店に入った瞬間に、将冴と狼牙を見て一瞬で呼び方にアドリブを加えたメイドに狼牙は賞賛を送るが、将冴の心中は複雑だった。
「こちらのお席へどうぞ」
そう言ってメイドは、車椅子の将冴が席につけるように椅子を一つ片付けながら案内した。
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びつけください」
二人が席につくのを確認し、メイドはそう言い残して別のテーブルの客の接客に行った。
「ずいぶんと手慣れたメイドだったな」
「そうだね。メイド喫茶なんて初めて来たけど、どこもあんな感じなのかな?」
「少なくとも、俺のいた世界でのここは、あそこまで臨機応変に対応していなかったように感じたがな。それで、ここに来た理由は?」
「ああ、とりあえず何にするか決めようよ。僕は紅茶にしようかな」
「では、俺はコーヒーをもらおうか」
注文が決まり、将冴は「すいません」と声をあげた。
ほどなくしてパタパタと小走りにメイドがやってくる。
「お、お待たせしました。ご注文……は……」
銀髪に眼帯をつけた小柄なメイドは将冴達を見て、言葉を詰まらせた。
「あ、ラウラ」
「やはり、将冴が見せたかったのはこれか」
「に、兄さん!?それに銀狼牙まで!どうしてここに!」
「ラウラの働く姿を見に来たんだよ?狼牙は付き添い」
「様になっているではないか。まぁ、俺は前の世界でも見たが」
と、騒ぎを聞きつけたのか、もう一人こちらに向かってくるメイドがいた。
綺麗なブロンドの髪を後ろで束ねたメイド……シャルロットだ。
「ラウラ、どうかし……」
「あ、シャル。さっきぶり」
「ほう、こちらではメイド服を来ているのか」
「将冴に銀君!?え、え!?なんで!」
シャルロットもまた、ラウラと同じようにパニックに陥る。将冴もさすがにここまでパニックになるとは思っていなかった。
「2人とも、落ち着け。裏から店長らしき人がこちらを睨んでいるぞ」
「「はっ!」」
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「まさか本当にくるなんて……」
ようやく落ち着いたシャルロットが、気の抜けたようにつぶやく。ラウラも落ち着いたようで、いつものキリッとした表情に戻っている。
「こんな楽しそうなこと、放って置くわけないよ」
「だからと言って、銀狼牙まで連れてこなくても……」
「学園に籠りっきりっていうのもよくないと思ってね。ね、狼牙」
「ああ。おかげでいいものが見れたな」
狼牙はからかうような目をシャルロットとラウラに向けた。
会って間もない男にそうジロジロ見られるのにも慣れていないため、それだけで2人はカオを赤くする。
「そ、それで!注文は!」
耐えきれなくなったのか、ラウラが注文を催促してきた。将冴が紅茶とコーヒーを頼むと、2人は逃げるように将冴達から離れていった。
「ふふ、これくらいで狼狽えるなんて、シャルとラウラもまだまだだなぁ」
「お前も大概性格の悪い男だ」
「そういう狼牙も、こういうの嫌いじゃないでしょ?」
「まぁ……そうだな。つくづく、お前とは仲良くやっていそうだ」
「それはどうも」
その後、飲み物を持ってきたラウラをまたからかい、ラウラに怒られた2人だった。