IS 〜偽りの腕に抱くもの〜【本編完結】   作:sha-yu

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久しぶりの本編。新しい章にして最終章の始まりです。

書き始めた当初、夏休みまで行かない予定だったのに、ここまできました。何卒、最後までお付き合いください。


偽りの体と偽りの心
164話


 

朝。

僕はゆっくりと体を起こし、伸びをした。

 

ふとデジタル時計に目を移すと、日付は9月1日。今日から学校が始まる。夏休み最終日……つまり昨日は、留学やらなんやら疲れが出たのか、体調が優れず1日部屋で過ごした。まぁ、クラリッサとずっと一緒にいられたからいいんだけど。

 

因みに、クラリッサなら僕の隣で静かな寝息を立てている。昨日は夜遅くまでずっと話していたから。

 

……やましいことは何もしてないよ?

 

 

「クラリッサ、起きて」

 

「ん……将冴、おはよう」

 

 

寝ぼけ眼をこすりながら体を起こしたクラリッサ。クラリッサはいつも僕より早く起きてることが多かったから、この姿を見るのはごく稀だ。

 

 

「おはようクラリッサ。よく眠れた?」

 

「ああ、問題ない。コーヒーを淹れてくる。将冴は先に顔を洗ってきてくれ」

 

「あ、ちょっと待って」

 

 

そう言いながらベッドを出るクラリッサの腕を掴み引き止める。

 

 

「え……」

 

 

そして困惑するクラリッサを引き寄せ、そのまま唇を奪った。

 

 

「……ふふ、おはようのキス」

 

「な、な……不意打ちは卑怯だ!」

 

 

顔を真っ赤にして怒るクラリッサから逃げるように、僕は洗面所へ向かった。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

朝食を食べ終え、クラリッサと職員室前で別れた僕は1年1組の教室へと向かった。みんなと会うのは久しぶりだな。シャルには最近会ったけど。

 

……そういえば、マドカはどうしたんだろう?あの後の話は何も聞いていないし、もう帰ったのかな?後で連絡しよう。

 

教室の扉を開けると、そこには一夏を囲むように専用機組が集まっていた。2組の鈴も一緒だ。

 

 

「みんな、おはよう」

 

「将冴!久しぶり」

 

 

いの一番に一夏が返してくる。それに続いて、みんなも僕を見て声をかけてくる。

 

「おはよう将冴。元気そうで何よりだ」

 

「ラウラさんが、昨日将冴さんが体調を崩したと聞いて心配しましたわ」

 

「本当よ。あんたが体調崩すなんて珍しかからね」

 

「兄さん、無理をしてはいけないぞ?」

 

 

はは、みんな相変わらず過保護だなぁ……。2学期も扱いは変わらなさそうだ。

 

と、シャルが僕の方を見て何やらニヤニヤしている。これはアレだ。黒シャルだ。

 

 

「昨日はお楽しみだったみたいだね」

 

「シャル、そのネタをどこで仕入れたのかは知らないけど、シャルの思ってるようなことはなかったからね?」

 

「なぁんだ、からかい甲斐がないなぁ」

 

 

シャルとラウラは僕とクラリッサの関係を知っているからね……。ラウラはこういう風にからかってきたりしないんだけど、シャルは全力でいじっていくようだ。

 

……専用機組には話さないといけない。

 

 

「ねぇ、みんな。近況報告も兼ねて、お昼一緒に食べない?」

 

「おう、いいぜ。将冴の留学の話も聞きたいしな」

 

「私も兄さんの留学の話は詳しく聞いていない。クラリッサは何か知っている風だったが……」

 

「まぁ、その辺は昼休みにでも。そろそろ先生来るし、今はこれくらいにしておこう?」

 

 

僕の言葉で、各々自分の席に戻り(鈴は2組の教室へ)予鈴とともに織斑先生、山田先生、クラリッサが入ってきた。

 

クラリッサはすぐに僕の後ろへと歩いてくる。いつもの定位置とでも言うべきか、クラリッサは授業中は大体僕の後ろにいる。

 

私語厳禁なので、僕はクラリッサにニコリと微笑みかける。あ、顔が赤くなった。

 

 

「諸君、夏休みの間、特に事故などがないようで何よりだ。だが、2学期は今後の進路に関わる重要な時期である。各々、気持ちを切り替えて過ごすように」

 

『はい!』

 

 

揃った声で返事をすると、織斑先生は満足そうな表情を浮かべ山田先生にホームルームを引き継いだ。

 

 

「みなさん、お久しぶりです。早速ですが、このクラスに、またまた新しい仲間が増えることになりました!」

 

 

山田先生の言葉に、クラス中がざわめき始める。

新しい仲間……まさか……。

 

 

「勿体ぶっても仕方ないので、入ってもらいましょう」

 

 

山田先生がそう言うと、教室の扉が開き一人の女生徒が入ってきた。

 

その人は、織斑先生をそのまま小さくしてIS学園の制服を着せた……っていうか、あれって……。

 

 

「柳川マドカ。柳川将冴の従姉妹だ。よろしく頼む」

 

 

珍しく、1年1組が静まり返った瞬間だった。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

誰も何も言葉を発せないまま、ホームルームは終了し始業式の行われる講堂へと移動した。クラスで一番落ち着きを払っているであろうラウラでさえも動揺を隠せていなかった。

 

それはそうだ。突然、織斑先生の生写しのような人が僕の従姉妹を名乗り現れたのだから。

 

僕だっておいつけていないよ。始業式の話が入ってこないくらいにはいっぱいいっぱいだ。

 

なんでマドカがこんなことになっているんだ。束さんの差し金だろうけど、いったい何を考えて……

 

 

「将冴、険しい顔をしてどうした?」

 

「誰のせいでこうなったと……はぁ」

 

 

なんの因果か、僕の隣に件のマドカが座っている。

マドカは首を傾げているが、君がことの発端なのを自覚してほしい。

 

 

「よくわからないが、すまない」

 

「別に謝るようなことじゃないけど……まぁいいや。夜、僕の部屋に来てくれる?話を聞かないといけないから」

 

「わかった。それならば、ルームメイトにも一言言っておかないとな」

 

「ルームメイトって、誰?」

 

「更識楯無だ」

 

「……」

 

 

開いた口が塞がらないとはこのことだ。

はぁ……2学期も2学期で波乱の予感がする……。




一人称を久しぶりに書いた!楽しいよぉ!

明日から3日間、ちょっと不定期になります。お盆だから許してください……。
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