IS 〜偽りの腕に抱くもの〜【本編完結】   作:sha-yu

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今回はちょっと特殊な回になります。

詳しくは後書きにて。
まずは本編をどうぞ。


172話

束さんにデータ取りを頼まれた次の日。

学園に来ると言っていた束さんが来た様子はなく、放課後となった。

 

あの人なら、授業中でも御構い無しに飛び込んできそうなものだけど……まぁ、飛び込んできたら学園中パニックになるからよかったんだけど。

 

みんなそれぞれ放課後をすごすようで、一夏達専用機組はアリーナで練習とのこと。驚きなのは、そこにマドカが加わっていることだ。一夏が誘ったら二つ返事でOKだったらしい。自分から話しかけることはほとんどないけど、話しかけられたらしっかり答えるんだよなぁ……。

 

あ、因みに僕も誘われたけど、束さんの件もあるので断っておいた。データ取りがなくても生徒会に行こうと思っていたから、どっちにしろ断っていたけどね。

 

さて、束さんはいつ来るやら……

 

 

「将冴」

 

 

いろいろと考えていると、織斑先生が僕を呼んだ。

束さんのことかな?

 

 

「おそらく察しはついているだろうが……」

 

「束さん、ですよね?」

 

「ああ。とりあえず、混乱を避けるために別の部屋に入れてある。試験運転用の室内アリーナだ。場所はわかるか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「ならいい。私はほかにやることがあって、付き添うことはできない。クラリッサ、頼んだぞ」

 

「はい、承知しました」

 

 

織斑先生はそれだけ伝え、教室を出て行った。

 

……なんだか、少し疲れたような顔をしていたけど、束さんの相手をしていたら当然といえば当然か……。

 

 

「では行こうか。将冴」

 

「うん」

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

試験運転用アリーナは、校舎の地下にある。整備室の直下にあり、整備を終えたISの試験運転のためのアリーナだ。いつも訓練するアリーナよりかなり小さく、ISが一つ入って軽く飛び回る程度の広さしかない。僕は一度も利用したことはなく、存在を知っていた程度だ。

 

このアリーナの横には、観測用の部屋がありそこでISのデータを見ながら試験運転をする。

 

僕とクラリッサはその観測用の部屋にまっすぐ向かった。

案の定、そこにはメカうさ耳にエプロンドレス姿の束さんがいた。

 

 

「ヤッホー、しょーくん!元気だった?」

 

「はい、束さんも元気そうで何よりです」

 

「ふふん、あったりまえだよぉ〜。束さんは超天才なんだからね!くらちゃんもおひさー」

 

「お久しぶりです、篠ノ之博士」

 

「もう堅いなぁ。ま、いいけどね」

 

 

本当にクラリッサと会話できてるなぁ。束さんも少しはコミュニケーション能力が高まった、ということかな。

 

 

「じゃあ、しょーくん。早速データ取りしたいんだけどいいかな?」

 

「はい。えっと、具体的に何をすれば」

 

「V.ドライブのフル稼働時のデータが欲しいの」

 

「V.ドライブの?」

 

「普段バーチャロンを使うときはISコアの方が動力源として動いているんだけどね、一応V.ドライブも肩代わりできるんだよ。ほら、ダイモンのあの趣味の悪いボールとかがいい例だね」

 

 

確かに、ISコアは束さんしかつくれないから、ダイモンオーブはV.ドライブで動いてることになる……。僕は、てっきり拡張領域を広げる役割しかないものと思っていた。

 

 

「これからの戦い、ダイモンが今までのような中途半端な攻撃ばかりとは限らないからね。一度、V.ドライブでの稼働データを取っておこうと思った次第だよ」

 

「わかりました。それでは、アリーナの方に行きますね」

 

「お願いね。フォームはなんでもいいからねぇ」

 

 

僕は1人、アリーナの中へ入った。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

「篠ノ之博士」

 

 

観測室でくらちゃんと二人きりになると、くらちゃんが話しかけてきた。

 

 

「んー?何かな?」

 

「今回のデータ取りは、先ほどの説明以外にも何か目的があるんですか?」

 

 

むむ、くらちゃんがそんなことを聞いてくるとは……妙に鋭いな……。

 

 

「……どうしてそう思うのかな?」

 

「笑われてしまうかもしれませんが、私の勘です」

 

「勘、ね〜」

 

「将冴や織斑先生から、篠ノ之博士の話を何度か聞いていました。それを聞いた上で、篠ノ之博士がデータ取りのためだけに学園まで赴くとは……少し予想外だったので……」

 

 

ふむ、くらちゃんの言う通り、別に理由があるのは確かだけど。悪いことじゃないよ?それにこれはちーちゃんにも頼まれたことだから、やましいことは何もない。

 

しょーくんの今後を考えてのことだ。でもまぁ、くらちゃんには黙っておこう。今言ってしまっては、当日の楽しみが減っちゃうからねぇ。

 

 

「くらちゃんが思ってるほど、束さんは複雑じゃないよぉ。束さんはいつでも、自分と大切な人のために動くのだ」

 

 

そう言って繕った笑顔を浮かべると、くらちゃんは少し不安そうな顔をする。しょーくんが好きなのはわかるけどねぇ……今、そんなに不安になっていても疲れるだけだよ。

 

と、ここでしょーくんから通信が入った。

 

 

『束さん、準備できました』

 

 

しょーくんはアリーナの中央でテムジンを展開していた。ちぇっ、フェイ・イェンじゃないのかぁ……。

 

 

「はいはーい、じゃあ指示あるまで待機ね。こっちもすぐに準備終わらせるから。ほら、くらちゃん。そんな顔してたら、しょーくんを不安にさせちゃうぞ」

 

「……はい」

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

こちらの準備ができたことを知らせてから数分後、束さんから再度通信が入った。

 

 

『それじゃあ、しょーくん。いつもやってるみたいにバーチャロンの出力を上げてみて』

 

「はい、わかりました」

 

 

出力だけ上げる、ということはあまりやらないので苦手なのだけど、やるしかないか……。

 

その場でバーチャロンの出力を上げる。いつもならブーストやら攻撃やらで外に出るエネルギーが、バーチャロンの中をずっと駆け巡る。機体の中の熱がどんどん上がって、僕まで熱くなってくる……。

 

 

『……うん、もういいよ。ゆっくり出力を下げて行ってねぇ』

 

 

束さんからストップがかかり、言われた通りゆっくり出力を下げて行った。ふう、これはなかなかに神経の使う作業だ。

 

 

『じゃあ、次はV.ドライブを意識して出力を上げてみて。ちょっと大変だけど、大丈夫?』

 

 

正直キツイけど……まぁ、やるしかない。

 

 

「はい、大丈夫です。行きます」

 

 

V.ドライブを意識して……今までやったことはないけど、どんな感覚でやればいいのか。背中のディスクに意識を研ぎ澄ませればいいのかな?

 

まぁ、やれるだけやってみよう。

 

V.ドライブに意識を集中させて、さっきやったように出力を上げていく。すると、ディスクが高速回転し、今まで聞いたことのないほどの音がV.ドライブから聞こえてくる。

 

 

『いいよしょーくん!まだ上がるよ!』

 

「くっ……結構キツイ……」

 

 

負荷とでも言うのだろうか。なんだか僕の体にどんとのしかかるような力がかかる。

 

これ本当に大丈夫なのかな……。

 

 

『将冴!無理するな!』

 

 

クラリッサが僕の様子が気になったのか、そう声をかけてくる。僕としては、これくらいで根を上げたくはない。

 

 

「大丈夫……出力あげます!」

 

 

さらに出力を上げると、体にかかる負荷も増える。V.ドライブとISコアでこんなに違うのか……!

 

 

『システム臨界……でもまだ上がるの?すごい、すごいよしょーくん!』

 

 

束さん、喜んでるところ悪いのですが、僕はそれどころじゃありません。

 

 

『将冴!大丈夫か!?篠ノ之博士、もういいでしょう!』

 

『ううん、まだだよ。まだ上がってる』

 

「うっ……くぅ……」

 

 

なんだ……視界が曲がっていく……これ以上は僕の体がV.ドライブに耐えられないか。

 

曲がってく視界の中の、束さんとクラリッサの声が朧げになっていく。まずい、このまま意識を失ったらどうなるか……。

 

……ん?あれはなんだろう。視界が曲がって行っているのに、はっきりと何かが見える。あれは……犬……違う、狼?

 

狼は僕に背を向けると、遠ざかるように走っていく。僕は手を伸ばすが、それと同時に強烈な眠気に襲われた。

 

ダメだ……眠っちゃ……ダ、メ……

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

「将冴!」

 

 

突然倒れた将冴に、私は思わず駆け寄った。

ISは解除されており、アリーナの中央で義手をつけていない将冴が倒れていた。

 

私はすぐに将冴を抱き起こした。

 

 

「将冴!目を覚ませ!頼むから!」

 

「くらちゃん、落ち着いて!」

 

「これが落ち着いていられますか!将冴、将冴!」

 

 

必死に揺するが、将冴は目を覚ます気配がない。

息はしているし、心臓の鼓動も感じられる……一体何が……。

 

 

「くらちゃん、とりあえず安静にできる場所に運ぼう?」

 

「……はい」

 

 

私達はアリーナを後にし、自室に向かった。

 

 

 

 

自室のベッドに将冴を寝かせ、もう一度呼吸などを確認する。軍で習った応急手当て程度の知識だが、呼吸や脈拍なんかは問題ないと思う……。

 

 

「篠ノ之博士、これは……」

 

「多分、V.ドライブをフルドライブさせた影響……でも、いろいろと説明が……」

 

 

ブツブツと何かを呟く篠ノ之博士。

何か気になることがあるというのか?

 

 

「とりあえず、現状では何も問題ないよ。ただ気になるのは、バーチャロンが待機状態であるのに稼働していること。少しずつエネルギーが減って行っている」

 

「それはどういう……」

 

「詳しくはわからないけど、フルドライブの影響でしょーくんの意識がないのは確か……今は経過を見るしかないね」

 

「将冴……」

 

 

私は優しく、将冴の顔を撫でた。




お気付きの方はわかりますよね?
これは、コラボでラグ0109様の「インフィニット・ストラトス〜狼は誰が為に吼える〜」にお邪魔した将冴がどうしてあちらの世界に行ったのかの導入でございます。

次回、あっさり将冴君が目をさまします。
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