スロースターターで申し訳ありません……、
とりあえず腹ごしらえを終えて、他の出し物を見に行くことにした。この近くで知り合いがいるとすると……。
「次、4組行ってみようか。簪さんいるみたいだし」
「4組は縁日をやると言っていたか。どういうものかは知らないが」
「そっか、クラリッサは日本のお祭りとか行ったことないもんね。本当のお祭りほどじゃないけど、この学園のことだし、かなり凝ってると思うな」
なんせ、言えば言っただけ予算が出てくるんだから……一応上限はあるけど……。
4組に着くと、結構な人が縁日を訪れていた。内装ややっているものも、かなり作り込まれている。この学園の生徒は、こういうお祭りごとには全力を出すのは……まぁ、わかっていたことだけど。
中に入ると、制服の上に法被を着た簪さんが僕たちに気づき駆け寄ってきた。
「将冴君、ハルフォーフ先生。来て、くれたんだ」
「こんにちは、簪さん」
「盛況のようだな」
「始まってすぐの時は、全然だったけど……お昼近くになってから、少しずつ増えてきて……」
殆どのお客さんはが、1組に流れてきたせいだな……。男性操縦者という物珍しさもあったんだろう。来年はそうならないといいけど……僕と一夏を別クラスにすれば少しは解決しそうだ。
「二人も、何かやっていく?型抜きなら、すぐできるけど……」
「それじゃ、それで。クラリッサもやってみようよ」
「しかし、私はそれがどういうものか……」
「僕が教えてあげるよ」
簪さんにお金を払い、型を2枚もらい、クラリッサと1枚づつやっていくことに。1枚目を開けてみる。これは……鳥かな?
「クラリッサは、どんなのだった?」
「花……チューリップだと思うが」
チューリップとは……また難しいものを。茎の部分が細くて長いから、すぐに割れちゃうんだよね。
「これをどうすればいいのだ?」
「まずブラシで粉を落としていくんだ。その後は絵に沿って針で周りの部分を削っていって、絵を割らずにできれば成功。ちょっとやってみせるから、見ててね」
型抜きなんていつぶりだろう。義手になってからはやってないからなぁ。一夏と鈴と弾とでいつも勝負してたっけ。お祭りだと、成功したらお金もらえるから。
戦績どうだったかな……確か、弾がいつもビリだったのは覚えているけど……。
「将冴……針を使うんじゃなかったのか……?」
「え?ああ、この絵だったら手で折るだけでも綺麗に形にできるよ」
大きな部分を手で割り、残りを針で削って形を整える。これが僕のやり方だ。これで殆どできるから楽なんだよねぇ。
さて、少し削って……これで完成。
「出来た。はい、簪さん」
「さすが、だね。相当な腕だというのは、ここに来た時から気づいたよ」
「お祭りの時の資金源だからね。それで、景品とかはあるのかな?」
「うん。鳥なら……はい、駄菓子の詰め合わせ」
駄菓子か。まぁ、学生の縁日ならそんなもんか。
「綺麗に抜ければ、景品がもらえるのだな……よし。元副隊長の力を見せてやる」
「頑張ってね、クラリッサ。それ一番難しいやつだから」
クラリッサは割らないようにゆっくりとブラシで粉を落とし始めた。……鳥で駄菓子なら、チューリップはなんだろう?
「簪さん。チューリップが出来た時の景品は?」
「最新型のタブレット端末……」
「え……そんなものまで出てくるの?」
「予算いっぱいあるのに、節約してお店用意したら、すごくお金が余ったの……。私が欲しいくらい」
「余ったからってタブレット端末を景品にするのは……」
この学園の悪いところかもしれないな……やる時は全力でやりすぎる精神。
「ぐっ、真っ二つに……」
「力の入れすぎだね」
「これ、残念賞の飴」
簪さんが飴玉を一つクラリッサに手渡すと、クラリッサは悔しそうにその飴を握った。
「いつかリベンジする……」
「じゃ、リベンジはそのうち本当のお祭りでね」
「クラリッサがやっても全部粉砕するのがオチよ。細かい作業苦手なんだから」
「うるさい!私だって、少しは器用になったんだぞ、ルカ……って」
後ろを振り返ると、シュバルツェ・ハーゼの制服を着たルカさんと、いつものダボついたシャツではなくジーンズに青いカッターシャツのリョーボさんがいた。
「ルカさん、リョーボさん!」
「将冴君久しぶり。クラリッサに呼ばれてきたよ」
「噂には聞いていたけど、本当に広い学校だねぇ。これで全寮制なんて、食事の準備が大変そうだ」
「二人とも、来ていたのなら連絡してくれれば迎えに行ったのに……」
「私もそう言ったんだがな。ルカが……」
「多分、将冴君と学園祭デートの最中だと思ったから、水を差すのも悪いと思ってね〜」
はは、ルカさんは相変わらずのようだ。部屋でクラリッサがルカさんに電話してる時も、いつもからかわれているみたいだし。
「ルカ!あまりそういうことは言うな!公言すると、後が大変なんだぞ」
「ごめんごめん。気をつけるよ」
ルカさんが平謝りしていると、リョーボさんが型抜きの景品に興味を示していた。
「ほう……最新型タブレットか……どれ、私もやってみるとしよう」
リョーボさんは簪さんにお金を渡し、型を2枚受け取る。
1枚目を開くと、運のいいことにチューリップの型だった。
「なるほど、なかなかに難易度の高い遊びだね」
リョーボさんはポケットからココアシガレットを出すと、それを咥えた。タバコ吸えないから持ってきたのかな……。
「どれ、少し本気出そうかねぇ」
今まで見たことのないリョーボさんの顔だった。
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「スコールか?どうした?」
『ダイモンの軍勢が動き出した。まだ学園まで距離があるけど、数が多い。悪いけど、オータムも援護に来てくれないかしら』
「……そんなに多いのか」
『ええ、簡単にIS学園を覆い尽くせるくらいには』
「それは話を盛り過ぎじゃねぇか?」
『そう思うならあなたも見に来なさい』
「……わかった。10分で行く」
『それと、この事を将冴君に……』
「ああ、わかってるよ。じゃ、切るぞ」
敵が動き始めます。
尚、生徒会企画は……