IS 〜偽りの腕に抱くもの〜【本編完結】   作:sha-yu

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お久しぶりです、作者です。

なんとか帰ってきました。まだ完全に体調は戻っていませんが、今日から更新再開していきます。

待ってくださった読者の方々に、最大の感謝を。


194話

 

ダイモンに見せられた映像と、千冬さんからの通信が僕の脳内をグルグルと回っている。

 

クラリッサが……なんで、こうならないように僕は戦ってたんじゃないのか?

 

 

「クラ……リッサ……そうだ、通信を……」

 

 

クラリッサに連絡を取るが、帰ってくるのは無機質な音だけ。どうしたの、早く出てよ……。

 

映像は僕の見間違い、千冬さんからの通信は間違いだったんだよね。千冬さん、たまにドジするから……。

 

だから、早く……

 

 

「どうした?今のがそんなにショックだったか?」

 

 

……うるさい

 

 

「まぁ、あの様子では助かるまい」

 

 

うるさい……うるさい、ウルサイウルサイ

 

 

「認めたくないようだから、はっきり伝えてやろう」

 

 

黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ

 

 

「クラリッサ・ハルフォーフ……貴様の恋人は死んだ」

 

「ダマレェェェェェェェェ!」

 

 

《感情値、規定指数に達しました。EVLバインダー起動マキシマム。強制フォームチェンジ『スペシネフ』。完全解凍》

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

「はは、ハハハハ!これが貴様の闇か!!」

 

 

システムによって強制的にフォームチェンジした将冴の姿は、以前のスペシネフとは異なっていた。

 

スペシネフの全身を覆うように、黒い靄が発生していた。とても禍々しく、以前にスペシネフを見たものでも、本当に同じものかわからないだろう。

 

 

「期待以上じゃないか!いいぞ、いいぞ!」

 

 

スペシネフの姿を見たダイモンは、大声をあげて喜んでいる。スペシネフの近くにいれば、普通の人は足がすくみ、こんな大笑いできるはずがない。

 

そんなダイモンに、ゆらりと将冴は目を向けた。

 

まるで死神を象ったようなフォルムで、ダイモンをジッと睨んだ。

 

 

「くくっ……さぁ、見せてみろ。その負のっ!?」

 

 

ダイモンの言葉が全て紡がれる前に、ダイモンの右腕が切り飛ばされた。一瞬の出来事に、ダイモンすらも状況をつかめていない。

 

だが、一つわかるのは……

 

 

「貴様……どうやってAICから……いや、いつの間にミルトンを破壊した」

 

「…………」

 

 

ダイモンの言葉とともに、将冴を拘束していたミルトンと、校舎を破壊したミルトンが真っ二つになり爆発した。

 

 

「どうやら……予想の遥か上をいっていたようだな」

 

「……コロス」

 

 

機械のような、冷徹な声が将冴から発せられた。

まるで鋭い刃のような、触れれば全てバラバラにされそうな、そんな声だった。

 

 

「溜め込んだ殺意の爆発か。さぞ快感だろうなぁ。何も我慢していないのだから。それが貴様の純粋な気持ちなのだから」

 

「コロス、コロスコロスコロスコロス!ガアァァァァァァ!!」

 

 

まるで別人だった。誰も将冴と気づけないだろう。それだけの殺気が溢れていた。

 

ビームサイズをダイモンに向けて振り下ろす。鋭く、ただ相手を殺すためだけに振り下ろされたそれは、さっきまでただ避けられ続けていた攻撃と違い、ダイモンの体に傷をつけていく。

 

 

「言った通りだろう!殺す気で来なければ私は止められないと!フハハ、いいぞもっと私に見せてみろ!」

 

「ア''ァァァァァァ!!」

 

 

背中の翼をダイモンに向けて射出する。翼はブーメランのように回転し、ダイモンの下半身と上半身を切り分けた。

 

 

「これはこれ、は……」

 

「コロシテヤルゥ!!」

 

 

完全に無防備になったダイモンの上半身。その胸のあたりに、スペシネフの大きな爪が突き刺さった。

 

普通の人ならば、確実に死んでいるであろう。だが、ダイモンはその状態でも……

 

 

「クク、クッ、ヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

 

笑っていた、狂ったように、愉快そうに。

 

 

「驚いたぞ柳川将冴ぉ!こんなにも、こんなにも楽しい思いをするとは思わなかった!」

 

「コロス、コロス、コロ……ゴ、ゴロ」」

 

「殺意に飲まれたか?ただの獣のようだな。いやはや、だがそれもいい。これからが楽しみになるではないか!全くもって……フフ、笑いが止まらないぞ!こんなにも、こんなにも……思い通りになるなんてな!」

 

「グ、ウガァァァァァ!!」

 

 

突然将冴が苦しみ始める。

 

見れば、ダイモンを突き刺している爪から何かが侵食しているかのように黒く……スペシネフを覆っている黒い靄と同じように染まっているのだ。

 

 

「この時を待っていた。貴様がスペシネフを完全に稼働させた時をな!この機械の体は、貴様のV.ドライブを侵食するためのデータが仕込んである!ISの装甲に反応して、そこからそのスペシネフを奪ってやろう!」

 

「ガ、アアァァ!?」

 

 

黒の侵食は止まることなく、スペシネフを侵していった。

将冴は抵抗しようともがくがどうにもならず、ダイモンを引きはがそうとしても、まるで一体化したかのように離れない。

 

そして、侵食は背中のV.ドライブに及んだ。

 

 

「さぁ、抵抗するな。そのまま身を任せれば楽になる」

 

「ウ、ググゥ……」

 

「スペシネフ以外が邪魔だな。どれ、全部捨ててしまおうか」

 

 

マルチバーチャルシステムを乗っ取ったのか、ダイモンの言葉と同時に、テムジン、ライデン、アファームド、フェイ・イェンが展開される。4体は将冴が操っているわけでも、ダイモンが操っているわけでもない。本体からのエネルギーの供給が断たれたそれらは、そのまま海に落ちていった。

 

 

「始めようか、私の望む混乱を!」

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

獣のような声が聞こえた……。将冴君はこっちにいるのかしら。

 

学園に戻ることも考えたけど……何か胸騒ぎがする。

それに、クラリッサ先生が行方不明なんて知ったら、将冴君は以前に映像で見たスペシネフを起動させてしまうかもしれない……。

 

織斑先生から、あれを使わせるなって言われてるから、何か危険なものなんだろうけど。

 

……ん?レーダーに反応が。これは、バーチャロン?でも何か……もうすぐで目視できる。

 

 

「……いた!やっぱりスペシネフに……」

 

 

待って……映像で見た時、スペシネフってあんなに黒かったかしら?

 

それに、何か変な雰囲気が……。

 

 

「増援か」

 

「っ!?」

 

 

背後から声がし、槍を構えながら振り向くと、黒ずくめに大きな一つ目の仮面をつけた人が浮いてる……なるほど、これがダイモン。

 

 

「あなた、将冴君に何をしたの?」

 

「何を、か……心を解き放ってあげたんだよ。柳川将冴は、色んなものを溜め込んでいたみたいだからな」

 

「それは別にあなたがやることじゃないわ」

 

「いや、私にしかできないな。見たまえ、彼の姿を。内に溜め込んだ負の感情を、あんなに表に出している。とても愉快じゃないか」

 

「それ以上喋るなら、その口吹き飛ばすわよ!」

 

「おお、怖い怖い。目的は達したから、これで失礼しよう。高みの見物をさせてもらうとするよ」

 

 

そう言うと、ダイモンは霞のように掻き消えていく。なるほど、かの大天災が捕まえられないのもなんとなくわかるわ。

 

っと、こんなことしてる場合じゃない。将冴君の無事を確認しなきゃ。

 

 

「将冴君!怪我はない!?」

 

「……」

 

 

無反応……一体何が?

 

 

「すぐに戻るわよ、クラリッサ先生が……」

 

「……っ!」

 

「え、きゃあ!?」

 

 

将冴君が突然私に向かって片手でビームサイズを振り下ろしてきた!?なんとか槍で受け止めるけど……そんな、私が押されている!?

 

 

「将冴君!私よ!更識楯無よ!わからないの!?」

 

「……!」

 

 

将冴君は空いてる手を私の首に伸ばしてきた。

 

 

「くっ!?」

 

 

私は急いで距離を取り、その手から逃れた……つもりだった。

 

 

「うぐぅ!?」

 

 

完全に距離をとったはずなのに、私の首を将冴君が掴んでいた。反応速度が尋常じゃない!?……ううん、それだけじゃない、機体の性能も格段にっ……。

 

 

「や、やめて……しょう、ご、く……」

 

 

まずい、どんどんエネルギーが削られていっている。

このままじゃ!

 

その瞬間、ガンっという衝撃とともに将冴君の手の力が弱まり、拘束が解けた。私はすぐに距離をとり、将冴君の方を見ると、マドカちゃんのと同じISが、将冴君につかみかかっていた。




将冴ブチ切れてわれを忘れる。
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