私の住む北海道には、大型台風が接近しており、とても恐ろしい限りです。
気圧が変わると、頭痛するのでその辺も憂鬱です。
私が将冴の事を話すと、クラリッサはそのまま地面にへたり込んだ。無理もない。私だって、こんな事信じたくはない。どれだけ自分が飛び出そうと思ったか……。
「千冬姉!すぐに俺たちに将冴の捜索を!」
「そうです!将冴はスペシネフを発動していて危険な状態なのでしょう?ならば、早々に見つけて……」
「見つけてどうする。お前たちに、アレが止められるのか?」
スペシネフの戦闘を見たことがある者たちは、一様に顔を伏せた。アメリカ代表候補生の2人は見たことがないため、ピンときていないが。
アレは異質だ。性能はもちろんのこと、エネルギーが枯渇しているはずなのに延々と動き続ける。束の奴、なんてものを……。
「ではどうするのですか!?このままじゃ、将冴さんは……」
「お願い、千冬さん!将冴の捜索を!」
何度言ってもわからない小娘どもが……わかるまで何度も釘を刺さなければ気が済まないのか!?
私が声を上げようとした時、バンッという音とともに会議室の扉が乱暴に開け放たれた。
そこにいたのは、いつものうさ耳とエプロンドレスではなく、黒いスーツに白衣といういでたちの束だった。
「束……その格好は」
「ちーちゃん……それと、ここにいるみんなに話がある」
いつになく真剣で、幼馴染みの私でも見たことのないその様子が、事態の深刻さを物語っていた。
束は未だに地面にへたり込んでいるクラリッサの前に立つと、胸ぐらを掴み持ち上げた。
「くらちゃん、いつまでそうしているつもり?」
「篠ノ之……博士……」
「しょーくんの彼女でしょ?現実逃避してる場合じゃないんだよ。いの一番に動かなきゃいけないのはくらちゃんでしょ!」
束はクラリッサを会議室の外まで連れてくと、クラリッサを廊下に投げ捨てた。
「ぐっ!?」
「そんな腑抜けた人がいても、何もできない。しょーくんは救えないよ、クラリッサ・ハルフォーフ」
そう冷徹に言い放った束は会議室の扉を閉め、こちらに向かった。
「ちょっと脇道に逸れたね。それじゃ、今起こってることについて話すよ」
束の変化と、淡々と話し始める姿に、誰もクラリッサのことを問い詰めることはできなかった。アメリカ代表候補生の2人も、ISの開発者である束を前にして固まっていた。
束は、いつの間に仕込んだのか、会議室のプロジェクターを起動させて映像を映し出した。
その映像は、スペシネフの機体データのようだった。
「しょーくんがスペシネフで暴走状態なのは、みんなもわかってるよね。言うまでもなく、この状態にしたのはダイモン。今、しょーくんは太平洋上で静止している」
映像のデータは現在のスペシネフの状態のようだ。各性能が普通のISのデータを大きく上回っている。だが、その中で一つだけ、見たことのないデータがあった。そのデータだけが、数値が増えたり減ったりと変化が激しい。
「あ、あの……質問いいですか……?」
更識簪が控えめに手を挙げると、束は無言で指差した。おそらく話せという意味だろう。簪は困惑したようにこちらに視線を向けたので、頷いて喋るように促した。
「その、一つだけ数値が不安定なデータは何ですか?」
「これはしょーくんの感情値……つまり、スペシネフの動力源とでも言えばいいかな。これが0になればスペシネフは停止する」
「じゃあ、どうにかしてそれを0にすれば、将冴を!」
「ううん、残念ながらそれはないよ、いっくん」
束のその言葉に、ここにいるもの全員が表情をこわばらせた。
しかし、束はそのまま言葉を続けた。
「それを説明する前に、ダイモンが今何をしようとしてるか説明するよ」
プロジェクターの映像が変わり、今度は001から467までの数字と、それぞれにパーセンテージが振られている。
467これはまるで……。
「これは全世界にあるISコアの侵食率を表している」
「侵食率?」
「これが100%になった時……そのISは、ダイモンの支配下に落ちる」
「なっ!?」
思わず声を出してしまったが……そんなことが起これば、世界は……。
「姉さん、それは何かの冗談では……」
「箒ちゃん、今回ばかりは、私も冗談は言わないよ」
「っ……」
今の束は、何もふざけてはいない。過去に例を見ないほどに、本気なのだ……。
「篠ノ之束博士……その、何故ISが侵食を受けているのですか?」
「君は……ラウラ・ボーデヴィッヒだっけ?それは、この状況で話したことを考えたら、すぐに答えが出るよね」
この状況……将冴がスペシネフで暴走状態で……まさか……
「ダイモンは……しょーくんとスペシネフを使って、コアネットワークを通して全ISコアを侵食している」
ついに明かされるダイモンの目的。