更新が安定せず申し訳ありません。
本当に終盤に近づいてきたので、ここからはスパートかけていきたいと思います。最後までお付き合いくださいませ。
この教室にいる全員が言葉を失っている。
無理もないか。全ISが乗っ取られそうになっているのが、しょーくんのせいだって聞かされれば、誰だって。
「どうして……どうして将冴ばっかりそんな目に会わなきゃいけねぇんだよ!」
しょーくんばっかり、ね……。うん、そうだね。いっくんの言う通りだ。しょーくんには、災難しか降りかからない。
でも……
「みんな」
でもそれは……
「ごめんなさい」
私のせいなんだ。
「束……なぜ謝っているんだ」
「私が、バーチャロンなんて作らなければ、こんなことにはならなかった。しょーくんはISとは無関係の世界で生きることができた。私が……」
「姉さん……」
私が、興味本位でしょーくんの両親のデータを見なければ、私が変な気を回してしょーくんにバーチャロンを与えなければ……こんなことにはならなかったんだ。
「顔をあげてください。篠ノ之博士」
私にそう言葉をかけてきたのは、MARZが買収したデュノア社の社長の娘だった。
「ここにいるみんな、篠ノ之博士のせいだなんて思っていませんし、将冴だってそんなこと思ってません。きっと、ここに将冴がいても、篠ノ之博士に謝ってほしくないと思います」
「シャルロットの言う通りだ。兄さんは、そんなに小さい男じゃない。それに、兄さんがIS学園にいないことなんて、私は考えたくない」
「君たち……」
なんだよこの二人は……。そっか、しょーくんが言ってたっけ。妹が二人できたって。
「束、今はそんなことをしている場合じゃないだろう」
「ちーちゃん……」
「将冴を助けるために、お前はここにいるんじゃないのか?」
ちーちゃんめ……私を泣かせるつもりなのかな。
でもその通りだね。
「ちょっとガラじゃなかったね。話を続けるよ」
私は再びプロジェクターにスペシネフのデータを映し出した。
「そもそも、なぜダイモンがスペシネフを狙ったか……それは、スペシネフ……いや、バーチャロンがISコアとV.コンバータを同時使用することが前提となって作られている機体だからだよ」
「それはどういう意味だ?」
「そうだね……銀の福音事件の時を例に挙げてみようか。あれは、ダイモンが後付けでV.コンバータと似たようなものを福音に取り付けたから起きた事件なんだ」
ちーちゃんが詳しく聞きたそうな顔をしているけど、とりあえず続けようか。
後で報告書にして渡すから……。
「福音はもともとV.コンバータを積み込んだ機体じゃない。だから乗っ取られるまで時間があったし、福音だけが乗っ取られる対象となった」
「でもバーチャロンは……」
「うん。バーチャロンのISコアはV.コンバータと深く繋がってる。バーチャロンのV.コンバータを、福音を乗っ取るために使ったものに変えたら……」
「コアネットワークを通して、全ISにそのデータが送られる……」
金髪ドリルの女が言った通りだ。
これが今回の騒動の全容といえよう。
はぁ、なんだか説明ばっかりで疲れた……この格好もそうだけど。
……束さん、なんでこんな格好したんだろう……。
「それで、束。対策は立てているのか?」
対策、ねぇ……すごく不確定要素が多い対策は立てたけど……あの子があの調子じゃどうにもならないし、とりあえず希望を持たせるような言い方はやめておこうか。
「今は、全ISコアが乗っ取られないように侵食を食い止めるくらいしかできない……かな」
「……そうか。ISが全部乗っ取られるまでのタイムリミットは?」
「そうだね……だいたい一週間って言ったところかな。侵食を食い止めるとは言ったけど、専用機以外の訓練機なんかは優先度が低いから、その辺は2日か3日くらいでダイモンに乗っ取られるかもしれない」
「コアを全て外す、というのはダメなのか、姉さん」
「そんなことをすれば、ダイモンが攻めてきた時の対処ができないから、あまりお勧めしないよ。どこの国だって、そんなことはしたくないだろうし」
何を言っても聞かないんだよ、椅子にふんぞり返っている連中は。
「束、話はそれで全部か?」
「うん。これからどうするかは、みんなの勝手だよ。だけど……今後、私がみんなに協力を頼む時は、力を貸して欲しい」
「束……」
「もちろんだぜ、束さん!」
「ああ、姉さんがそこまで言ったんだ。協力しないはずがない」
ちーちゃん、いっくん、箒ちゃん……その他の人も、頷いてくれる。珍しく真面目になって見るものだね……。
「ありがとう。ちーちゃん、地下の施設借りてもいい?」
「ああ、特別に許可をもらっておこう」
「じゃあ、私は地下にいるよ。何かあったらそこまで来てね」
私はそそくさと部屋を出た。なんだか、長居したくなかったからね……。
その瞬間、くーちゃんから連絡がきた。
「くーちゃん、そっちはどう?」
『はい、侵食に関しては、専用機を中心に防御を固めています。あと、スコール様とオータム様がスペシネフ以外のバーチャロンを回収してくださいました』
「わかった。2人には、連絡があるまで待機って伝えておいて。私も、すぐに地下に向かうから」
『かしこまりました』
さて……くらちゃん、あとは君だけだよ……。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「……」
IS学園の屋上。半分崩れてしまったそこに、私はいた。
柵に寄りかかり、どこを見るでもなく、ただ呆然と。
『そんな腑抜けた人がいても、何もできない。しょーくんは救えないよ』
篠ノ之束博士に言われてしまった。
本当に……その通りだな……。
「何が、私が将冴を守るだ……あの時から、私は一度も将冴を守れていないじゃないか!」
ガン、と柵を力任せに殴った。
何度も、自分の不甲斐なさ悔しくて、何度も何度も、手から血がにじむまで。
「私は、将冴に何ができた……足手まといになっただけじゃないか……」
どうして、私はこんなにも無力なんだ……。
「何してるの、クラリッサ」
突然声をかけられ、目を向けると、そこにはルカの姿があった。どうしてここに……。
「なんでここにいるって顔してるわね。織斑さんに許可をもらったのよ。今は、リョーボさんをホテルまで送って、戻ってきたところ」
「そう……か……」
「……なるほど。ただいま自分の不甲斐なさを悔やんでますって感じなのね」
ルカは私の横に来ると、柵に背中を預けた。
「将冴君、いなくなっちゃったけど、クラリッサはどうするの?」
「私は……」
何ができるんだ?口だけで、将冴を守るだなんてほざいておきながら、何もできなかった私が……。
「行かなくていいの?」
「どこに……行けばいいんだ……」
「わかってるくせに、何言ってんのよ」
「……」
「あんた、将冴君のことこのまま諦めるの?」
「私が、将冴のもとに行っても……何もできない……」
いつも、戦っているのは将冴だ。守ると言ったって、何もできない。私は……
「はぁ……クラリッサ」
「……なんだ」
「歯、食いしばりなさい」
その瞬間、ルカが私の左頬を掌で叩いた。
パシンッ、という音の後、少しの間、何をされたのがわからず、頬の痛みで叩かれたのだと気付いた。
「私の知ってるクラリッサは、こんなところでウジウジしてないわ。すぐにでも助けに向かうために何か行動をする。私の同僚……親友は、世界の誰よりも、将冴君が好きなんだから」
「ルカ……」
「悔しかったんでしょう?悔しくて悔しくて、その感情を何かにぶつけなきゃやってられなかったんでしょう?」
ルカが皮がむけ、血が滲んでいる私の手を優しく包んだ。
「その悔しさ、こんなものにぶつけるだけでいいの?」
「私は……」
「後は、あんたが決めなさい」
ルカは、私の手に何か掴ませて、屋上から立ち去った。
私は、掴ませられたものを見る。
それは、黒いレッグバンド……。
「シュバルツェア・ツヴァイク……」
私の使っていた、専用機だった。
クラリッサとルカの掛け合いは、書いていて作者も楽しい。
原作でクラリッサの出番増えないかな……