今回でとりあえず一区切り、といったところでしょうか。次から章を変えます。多分。
車に揺られている感じがする。
今日は寮に帰るからって束さんとクロエさんに半ば無理やり睡眠薬飲まされて……ああ、今車乗ってるんだ……車!?
「クロエさんダメ!」
「おはようございます、将冴様。何がダメなんですか?」
「……あれ?」
運転席にいるクロエさんは、法定速度で車を走らせていた。てっきりまたあのカーチェイス並みの速度で走ってるかと思ったけど、大丈夫だったようだ。
「いえ、安全運転のようで安心しました……」
「前に将冴様が失神してしまいましたから。流石に学習いたします。それより、もうすぐ到着いたします」
「もう着いたんだ。かなり寝てたんですね」
まぁ、睡眠薬飲まされたから……。そりゃぐっすりだろうね。
そうだ、みんなに会う時は義肢をどうしよう。短時間なら両手両足につけても大丈夫だけど……。あえて義肢を付けずに会うとか……。
そんなことを考えていると、車が止まった。
ここは、寮の近くかな。
「到着いたしました。今荷物を降ろしますね」
「あ、僕が降ろします」
僕は義肢を両手両足につけ、車を降りた。
後部座席に乗せていた荷物を降ろす。荷物は多いけど、今なら全部持てる。
「クロエさん、2ヶ月間ありがとうございました。何から何まで」
「いえ、お礼を言われるほどのことは。そうだ、こちらをお持ちください」
渡されたのは名刺のような紙。
そこには電話番号のようなものが書いてある。
「ラボの電話番号です。義肢やバーチャロンのメンテナンスをしてほしい時はこちらに連絡をください」
「わかりました。では、クロエさん。お元気で」
「はい、将冴様も」
クロエさんは車に乗り込み、エンジンをふかす。
次の瞬間、タイヤを擦りながら急発進し、あっという間に見えなくなった。
峠でも走るつもりなのだろうか……。
「っと、早く寮に入ろうかな」
荷物を背負い直し、寮へ向かった。
流石に2ヶ月間では何か変わるということはなく、寮の入り口は前のままだった。
「久しぶりって感じがしないなぁ」
そう呟きながら扉を開けた。
中に入ると、リョーボさんが何やらダンボールを運んでいたところだった。こちらに気づいたリョーボさんは目を見開いた。
「将冴、帰ってきたのか!」
「はい、ただいまです。リョーボさん」
リョーボさんはダンボールを床に置き、両肩をバンバンと叩いてきた。そのまま腕があるのを確認するかのように両腕を撫でる。
「本当に体が戻ったんだね。ねえちゃんやクラリッサも喜ぶね。それに……」
サワサワとお腹を触ってきた。
「ちょ、何するんですか!?くすぐったいですよ!」
「がっちりトレーニングしてきたみたいだね。肩の筋肉触ったらわかったよ」
「筋肉の衰えを感じてしまいまして……体力作りのついでに……」
「ハッハッハ!ついでで筋肉つけてきたのかい。お前さんは本当に面白いね。そうだ、ブリュンヒルデのねえちゃんなら部屋にいるよ」
「千冬さんがいるんですか?」
「わざわざ休みを取ってきたんだとさ。将冴が帰ってくるからって。まぁ……他の理由もあるだろうけど」
他の理由?なんだろう。
千冬さんがいるなら、早く顔を見せに行こう。
「じゃあ、僕は部屋に行きますね」
「ああ」
リョーボさんと別れ部屋へ向かう。
部屋に近づくにつれ、何やらバタバタと音がする。
千冬さん、何してるんだろうか?
扉の前に立ち、コンコンとノックする。するとピタッと音がやむ。
「千冬さん?将冴で……」
バンッ!
言い終わる前に扉が開き、そこには千冬さんが立っていた。嬉しそうな顔をしてる。表情が分かりづらい千冬さんが嬉しそうだとわかるくらい、嬉しそうな顔をしてる。
「ち、千冬さん?」
「おかえり将冴」
「え?」
ギュッと抱きしめられた。
束さんに散々抱かれたけど、千冬さんにこうされるのは初めてだ。
束さんよりは小さいのかな……何を考えているんだ僕は。
「え、えっと……ただいま」
「中に入れ。いつまでも荷物を持っていては疲れるだろう。今、茶を煎れる」
千冬さんに促され、部屋に入る。
部屋は……少し散らかってるけど、前ほどじゃない。でも部屋の隅にゴミ袋が積まれている。つまり、さっきまで掃除していたのだろう。
まったく、僕がいないからってサボっていたんだね。まぁ、片付けをしようとして、逆に散らかるようなことはないみたいだから良かったかな。
「将冴、お茶だ」
「ありがとうございます」
千冬さんが持ってきたお茶を受け取り一口。
うん、淹れ方はちゃんと覚えていたみたいだ。
と、千冬さんがジーっと僕の腕や足を見ているのに気づいた。
「本当に、戻ったんだな」
「はい、義肢ですけどね……でも、普通の腕や足と変わりませんよ。触った感触もありますし、痛みも感じます」
「そうか。束はしっかりやってくれたのだな」
「はは、結構遊ばれましたけどね」
ずずっともう一口お茶を飲む。
そうだ、千冬さんにはアレについても説明しなきゃ。
「千冬さん。これを」
僕はピアスを見せる。
「ピアス……束に開けられたのか?」
「いえ、そうではなくて……展開したほうが早いかな」
僕は左手を粒子化する。そしてテムジンの腕を部分展開した。
「な、ISだと!?」
さすがの千冬でも、驚きを隠せなかったようだ。
まぁ、突然ISを出されたら当然だし、僕は男だし。
「……束か……」
「いえ、正確にはお父さんとお母さんです」
「玲二さんと有香さん?」
「2人の研究を束さんが形にして、僕にくれたんです。男の僕が動かせるのは、お父さん達が研究していたもののおかげです。束さんが言うには、お父さんとお母さんは僕のためにこれを作ったって……」
動かせる原理を説明するには、僕の頭が足りない。
千冬さんは、納得してくれたようで、お茶を一口飲む。
「まぁ、お前がISを持っていても問題は起こさないだろう。問題はそれがばれた時だな」
「一応、人前では使わないようにするつもりです。束さんのラボで使い方は一通りやったので、扱いにも細心の注意を払います」
「そうしてくれ。しかし、いつまでも隠しきれるものでもなさそうだ。ばれれば日本へ強制帰還命令。拘束されるかもしれない……どうしたものか」
「……今考えても、いい答えは浮かびません。ばれた時に考えましょう」
テムジンの腕を粒子化する。
楽観的とは自分でも思う。けど、こうする以外にないのも、事実だろう。
「……そうだな。今はお前が帰ってきたことを喜ぼう」
「そうしましょう。そうだ、他の人達は今日はどうしたんですか?千冬さんが訓練していないとなると……」
「ああ、あいつらなら新しい部隊が設立されてな。それの処理で手を焼いている」
「新しい部隊?」
「シュバルツェ・ハーゼというIS特殊部隊だ。隊長はラウラで、副隊長はクラリッサだ」
ラウラさんが隊長!?僕と同じ年なのに、すごいな。前にクラリッサさんが、ラウラさんは強いと言っていた気がするけど、隊長になれるほど強かったんだ。
そしてクラリッサさんが副隊長。2人に何かお祝いでもしてあげたいな……。
「みんな帰るのは遅くなるな……夕食までには戻ると思うが……」
その時、部屋の扉をノックする音がした。
誰だろう?リョーボさん?
「この時間に誰だ?」
「あ、僕が開けます」
扉に手をかけ、ゆっくり開く。
そこには肩で息をするクラリッサさんがいた。
「クラリッサさん、こんにちは」
「はぁ……はぁ……将冴……」
突然顔を抑えられた。そしてクラリッサさんの顔が近く……
「むぐっ!?」
「ん〜〜」
口に何か……目の前にクラリッサさんの顔が……あれ、クラリッサさん眼帯してる?いや、そんな場合じゃ……。
「クラリッサ……」
千冬さんが突然のことで焦っているのか、か細くそんな声が聞こえた。
えっと、これは……
「んっ、将冴……」
顔が少し離れる。
クラリッサさんの目はトロンとしていて、顔も赤い……。
「ま、漫画では、再会した時こうするって……」
「えっ、あっ……うん……そうだね」
「それで……な、その……将冴!」
「な、なに?」
「お前は私の嫁だ!」
「は、はい!」
……え?
「あー、二人とも。邪魔なら出て行こうか?」
ちょっと待ってください千冬さん!!
はい、というわけでクラリッサと将冴なエンダーしました。
急展開すぎる?いいんじゃないかな。原作のラウラもこんな感じ……え?違うって?……いいんじゃないかな←