果たしてクラリッサは何をするつもりなのか。
「将冴……」
私は腕を広げて、ゆっくりと将冴に近づく。近づきながら、機体の状況を確認すると、AICが使えなくなっているようだ。レールカノンも……出力が落ちてきている。侵食の状況が進んできた証拠だ。
スライプナーも、先ほど飛ばしてしまったから手元にない。
今攻撃されれば、ほとんど無防備な状態だ。
「ウゥ……クル……ナ……」
「意識が戻りかけているんだろう?私がわかるか?」
まだ顔を手で隠している。だけどこちらを見る為に、右目だけが見える。ここからでもわかるくらいに、目が赤くなっている。血走ったような……今にも血が流れ出そうな……。
「私がわかるんだろう。だから顔を隠すんだろう。大丈夫だ、私は将冴を拒絶しない」
「ミルナ……クル、ナ……」
『くらちゃん、しょーくんの感情値がまた下がったよ。でもまだ……』
言葉だけではダメだ……将冴を取り戻すには、言葉だけでは……。
将冴のビームサイズが届く距離まで近づくと、将冴はビームサイズを私に向けた。ロングランチャーも一体となっているため、私に銃口が向いている。
この至近距離で撃たれれば、すぐにエネルギーが尽きるな……だが
「撃ちたければ撃てばいい……だが、将冴は撃てない。今までも撃っていない。私が……クラリッサだとわかるから撃たなかったんじゃないのか?」
「う……う……」
「……」
銃口を向けられているのを気にせず、さらに将冴に近づく。将冴は、それに反応し、ビームサイズを振り上げた。
「グッ、アアアア!」
「ぐうっ!?」
容赦なく振り下ろされたビームサイズが私を容赦なく切り裂いた。ISの絶対防御はまだ作動しているが……エネルギーがほとんど残っていない……。
「大丈夫……大丈夫だ……これくらい、どうってことない……」
「ア……ウ……」
「将冴、お前が抱いた感情に比べれば、なんともない」
将冴の左手を掴み、グイッと引っ張る。
ようやく見せてくれた顔は……泣いていた。スペシネフの影響か、真っ赤になった目から涙を流していた。
「ミルナ……」
「だめだ。もう1人で泣くんじゃない。もっと私の前で泣いてくれ。将冴が抱えるものを、全部教えてくれ。これからは、私も背負うから」
「く、ら……」
「将冴が抱えるものが、どんなに黒い感情でも構わない。私にも背負わせてくれ。私は、絶対に将冴のことを嫌ったりしないから」
私はそのまま、将冴と口付けをした。
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……また……光?
でも、さっきとは比べ物にならないくらいの、強い光……。
この光は……。
《闇を晒してもいいのか?》
闇……そうだ、僕は今……。
でも……この光なら……。
僕を……包んでくれる。
《また、闇を生み出すだけだぞ》
……そうかもしれない。
でも、溜め込む必要はない。
だって、聞こえたんだ。
一緒に背負うって。
嫌ったりしないって。
僕の……僕の大好きな人が、そう言ってくれたんだ。
だから、僕は行くんだ。
声の元へ……クラリッサの元に
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「束様、将冴様の感情値が!」
「わかってるよ、くーちゃん!スペシネフのシステムに侵入!対シャドウワクチンのデータを書き込むよ!」
「データ解凍終了しています。いつでも!」
「データ書き込み開始!同時にスペシネフのエネルギー回路をV.コンバータ以外遮断。データ書き込みが終了し、ワクチンがコアネットワークに流れたら強制待機状態に」
「すでに取り掛かっています。あと10秒ください」
「データ書き込み、12秒で終わるよ」
「はいっ……終わりました!」
「よし。さぁ、束さんの本気を味わえ、ダイモン!」
「……ワクチン、コアネットワーク全体に行き渡っています。侵食、止まりました!」
「やった……やったよ!くらちゃん!……くらちゃん?」
「束様、シュバルツェア・ツヴァイクがエネルギー切れで待機状態に……スペシネフも待機状態になっています!」
「ってことは?」
「2人とも、海に……」