IS 〜偽りの腕に抱くもの〜【本編完結】   作:sha-yu

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準備その2。

今回は、とうとう将冴の機体が……


215話

 

「ダイモンを……倒してから……ふふっ」

 

 

僕の答えを、織斑先生は呆気にとられたように繰り返すとニヤリと不敵に笑い、僕の頭をガシガシと乱暴に撫で回した。

 

 

「な、ちょ、織斑先生!?」

 

「いいだろう。委員会の方は私に任せろ。できる限り、執行を先延ばしにする」

 

「私も掛け合うわ。ロシア代表の声も、バカにならないでしょうからね」

 

 

織斑先生も楯無さんも……自分の立場が危うくなってしまうかもしれないのに、そんなことを……。

 

すると、今度は一夏が僕の前に立った。

 

 

「やっぱり、将冴は何考えてるかわかんねぇよ。でも……」

 

「ああ、その答えは、一番正しい答えだ」

 

「そのまま拘束されるおつもりでしたら、1発ひっぱたいてやりましたわ」

 

「今度は、私たちも行くからね。セシリアの言う通り、将冴に1発入れるつもりだったけど、妥協してダイモンにしてあげるわ」

 

「私も、行く……!将冴君を助けに行けなかったから、今度は……!」

 

「みんな……これは僕の我儘なんだよ?みんなが付き合う必要は……痛てて!?」

 

 

突然両頬をつねられてします。つねったのはラウラとシャルだ。

 

 

「兄さん。兄さんは1人で背負いすぎだ。そのせいで今回のようなことが起こったのだぞ!」

 

「うっ……」

 

「ラウラの言う通り。ここに頼れる妹が2人いるんだよ?もっと頼ってよ」

 

「それとも、私達は頼りないか?」

 

 

妹2人まで……まったく、こんな我儘に付き合うなんて、本当に……最高の妹じゃないか。

 

 

「そんなことない……そんなことないよ、2人とも」

 

 

そういうと、2人は笑みを浮かべてまた僕の頬つねった。だから痛いって。

 

 

「将冴……」

 

 

クラリッサが心配そうに、僕の名を呼んだ。

 

……それはそうだ。スペシネフに取り込まれるなんてことがあったばかりで、こんなことを宣っているのだから。

 

 

「私の思った通りの答えを出したな……」

 

「クラリッサ……」

 

「……さっきはあんなことを言ったが、私はもう戦って欲しくない。だけど……将冴がそう決めたのなら、私もそれに従う。だから私も、それを背負う。将冴を助けるときに誓ったんだ。将冴が背負うものは、私も背負うと……もう1人で背負いこませない。私も一緒に背負う」

 

「……うん。ありがとう、クラリッサ」

 

 

僕は……自分を過信していた。なんでも1人で背負い込めると。でも、それは間違いだった。スペシネフに取り込まれたことが証拠だ。

 

僕は弱い。簡単に負の感情にとらわれるほどに。だから、これからは……。

 

 

「あー、お楽しみのところ申し訳ないんだけど、束さんもしょーくんとお話ししたいなぁ?」

 

「束さん!?」

 

 

どっから現れた!?ていうか、なんでスーツ姿!?いつものエプロンドレスは!?うさ耳は!?

 

 

「しょーくん、ちょっと驚きすぎじゃない?私だって、真面目な格好くらいするんだよ?」

 

「束さんのスーツ姿とか、一生に一度見れたら奇跡だと思います……」

 

「その評価は酷すぎない!?」

 

 

まぁ、ふざけるのはこのくらいにして、束さんがここに現れたということは、何か大切な用事があるとということだろう。この状況だから、度を越したおふざけはない……はず。

 

 

「こほん。しょーくん、まずは無事に目が覚めて何よりだよ。くらちゃんやみんなに……そして束さんに感謝しなさい!」

 

「はい、それはもちろん」

 

「むふふ、素直なしょーくんは好きだよ」

 

「それで、束。ここに来たのは、そんなことを言うためではないだろう?」

 

 

織斑先生の言葉に束さんは真面目な顔で頷いた。

 

 

「ダイモンが、また動き出したみたいだからね。ここにいるみんなに伝えようと思ってきたんだよ」

 

 

束さんがそういうと、ひとりでにプレジェクターが作動し、画像を映し出した。束さん、IS学園のシステム掌握したのか?

 

画像には……ひとつの機影が写っていた。僕が学園祭の時に戦った、ミルトンによく似た大きな……とても大きな機影が……。

 

 

「これは……」

 

「ダイモンが作った要塞、かな。多分、今まで見てきたどの機体よりも大きいよ。IS学園の敷地と同等くらいには……」

 

 

束さんの言葉に、みんなが息を飲む。そんなに大きなものが……だけど、そんなものがどこに現れたんだろう。目立つはずだし、すぐに気付かれるんじゃ……。

 

 

「これの厄介なところは大きさだけじゃないんだよね……」

 

 

映像が少し離れた位置にくる。

その機体の背景を見て、僕は悟った。まさかそんな……。

 

 

「なんだこれ、夜景……にしては、なんか……」

 

「宇宙、だよ」

 

「宇宙!?」

 

 

やっぱり……月が大きく写ってるし、デブリのようなものも見える。

 

しかし、これで納得がいったかな。束さんが何年かけてもダイモンを見つけられなかった理由が。

 

 

「見つかるわけないよね。地球上探してたって、そこにダイモンがいないんだからさ!まさか、束さんが自分の未熟さを嘆く時が来るとは思わなかったよ……」

 

 

体育座りでうずくまり、拗ねる束さんというなんとも珍しい絵が見れたが、今はそれよりもダイモンをどうするかだ。

 

 

「宇宙、か……どうするのだ、束。束が感知したということは、この機体は地球に降下してきているのだろう?」

 

「うん。でも地球に降りてきた時に、どれだけの被害が出るか……」

 

「被害を出さないようにするには、宇宙で叩くしかない、か……」

 

 

宇宙で叩く……そんなことが可能なのだろうか。ISは宇宙活動を目的として作られたパワードスーツだけど、現在稼動しているISは軍事目的が主で、宇宙活動ができるかどうか……。

 

 

「まぁ、束さんに死角はないさぁ!これをご覧あれ!」

 

 

画像が変わり、今度はISのスペックデータが……ってこれ、テムジン?でも、色が真っ白だ。それに、背中には見慣れないユニットが……。

 

 

「『テムジンタイプa8』。宇宙活動が可能で、スペックもテムジン以上に仕上げたよ。小難しい用語なんか言っても理解できないと思うから、簡潔に説明すると、ライデン並みの射撃能力と、アファームド並みの近接格闘能力と、フェイ・イェン並みの運動性能を兼ね備えた機体だよ」

 

「何その私の考えた最強のISみたいな無茶苦茶な性能……」

 

 

鈴が思わず束さんに突っ込んでしまっているが、これに関しては僕も突っ込みたい。なんてものを作っているんだこの人は……。

 

 

「当たり前だけど、テムジンだからしょーくん用に調整してある。そして、現状宇宙に上がれる機体は……このテムジンだけだよ」

 

「そんな……束さん!それじゃ、将冴はまた1人でダイモンと!?」

 

「姉さん、なんとか私達も宇宙に行けないのですか!?将冴1人に行かせるのは……」

 

「……残念だけど、この機体が地球に降りてくるのは明日の夜。それまでに、みんなの機体を宇宙活動用に調整するのは束さんでも不可能だよ」

 

「全部でなくても、1つだけを調整するというのはできないのでしょうか!?」

 

「君たちが思ってるほど、宇宙活動用調整は簡単なものじゃないんだよ。1つの機体でも、一週間はかかる。このテムジンは……特別製だから宇宙でも動かせるけど」

 

 

束さんがここまで無理と断言するからには、本当に無理なんだろう。みんなもそれがわかっているからか、表情が暗い。クラリッサも、僕の義手を握ってくる。

 

 

「……束さん。僕がその機体を使って、あの要塞に勝てる可能性はどれくらいですか?」

 

「わからない。あれがどれだけの力を秘めているかわからないし……」

 

「そうですか」

 

 

勝率不明……それに、宇宙での戦いというなら、負けたら一貫の終わり。なかなかにスリリングなことになってるね。

 

 

「将冴、行くつもりなんだな……」

 

「僕しかいけないみたいだからね。それなら行かなくちゃ」

 

「俺たちも行くって言ったばかりなのに……」

 

「また兄さんを1人で行かせてしまうのかっ……!」

 

 

ここにいるみんながまた俯いてしまう。

だけど……今回は違う。

 

 

「1人じゃないよ」

 

「え?」

 

「僕は、今までダイモンのことは僕の問題だから、1人で解決しようとしていた。でも、今は違う……みんなが僕のために戦ってくれると言ってくれた。クラリッサが一緒に背負うと言ってくれた。もう、僕1人の戦いじゃない。僕は1人で戦うわけじゃない」

 

「将冴……」

 

「絶対に負けない。みんなのためにも」

 

 

みんなは黙ったまま僕を見た。

だけど、みんなの目が何を言いたいか物語っていた。

 

 

「結論はついたみたいだね。しょーくん、機体の説明するから、ついてきてくれるかな。できれば、1人で」

 

「束さん、私も……」

 

「ううん、これは……これに関しては、しょーくんだけにしか話せないんだ」

 

「クラリッサ、部屋で待っててくれる?戻ったら、話したいことがあるから」

 

「将冴……わかった」

 

「それじゃ、行ってくる」




3,000文字超えた……。書けるときと書けないときの差が……
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