今回は、とうとう将冴の機体が……
「ダイモンを……倒してから……ふふっ」
僕の答えを、織斑先生は呆気にとられたように繰り返すとニヤリと不敵に笑い、僕の頭をガシガシと乱暴に撫で回した。
「な、ちょ、織斑先生!?」
「いいだろう。委員会の方は私に任せろ。できる限り、執行を先延ばしにする」
「私も掛け合うわ。ロシア代表の声も、バカにならないでしょうからね」
織斑先生も楯無さんも……自分の立場が危うくなってしまうかもしれないのに、そんなことを……。
すると、今度は一夏が僕の前に立った。
「やっぱり、将冴は何考えてるかわかんねぇよ。でも……」
「ああ、その答えは、一番正しい答えだ」
「そのまま拘束されるおつもりでしたら、1発ひっぱたいてやりましたわ」
「今度は、私たちも行くからね。セシリアの言う通り、将冴に1発入れるつもりだったけど、妥協してダイモンにしてあげるわ」
「私も、行く……!将冴君を助けに行けなかったから、今度は……!」
「みんな……これは僕の我儘なんだよ?みんなが付き合う必要は……痛てて!?」
突然両頬をつねられてします。つねったのはラウラとシャルだ。
「兄さん。兄さんは1人で背負いすぎだ。そのせいで今回のようなことが起こったのだぞ!」
「うっ……」
「ラウラの言う通り。ここに頼れる妹が2人いるんだよ?もっと頼ってよ」
「それとも、私達は頼りないか?」
妹2人まで……まったく、こんな我儘に付き合うなんて、本当に……最高の妹じゃないか。
「そんなことない……そんなことないよ、2人とも」
そういうと、2人は笑みを浮かべてまた僕の頬つねった。だから痛いって。
「将冴……」
クラリッサが心配そうに、僕の名を呼んだ。
……それはそうだ。スペシネフに取り込まれるなんてことがあったばかりで、こんなことを宣っているのだから。
「私の思った通りの答えを出したな……」
「クラリッサ……」
「……さっきはあんなことを言ったが、私はもう戦って欲しくない。だけど……将冴がそう決めたのなら、私もそれに従う。だから私も、それを背負う。将冴を助けるときに誓ったんだ。将冴が背負うものは、私も背負うと……もう1人で背負いこませない。私も一緒に背負う」
「……うん。ありがとう、クラリッサ」
僕は……自分を過信していた。なんでも1人で背負い込めると。でも、それは間違いだった。スペシネフに取り込まれたことが証拠だ。
僕は弱い。簡単に負の感情にとらわれるほどに。だから、これからは……。
「あー、お楽しみのところ申し訳ないんだけど、束さんもしょーくんとお話ししたいなぁ?」
「束さん!?」
どっから現れた!?ていうか、なんでスーツ姿!?いつものエプロンドレスは!?うさ耳は!?
「しょーくん、ちょっと驚きすぎじゃない?私だって、真面目な格好くらいするんだよ?」
「束さんのスーツ姿とか、一生に一度見れたら奇跡だと思います……」
「その評価は酷すぎない!?」
まぁ、ふざけるのはこのくらいにして、束さんがここに現れたということは、何か大切な用事があるとということだろう。この状況だから、度を越したおふざけはない……はず。
「こほん。しょーくん、まずは無事に目が覚めて何よりだよ。くらちゃんやみんなに……そして束さんに感謝しなさい!」
「はい、それはもちろん」
「むふふ、素直なしょーくんは好きだよ」
「それで、束。ここに来たのは、そんなことを言うためではないだろう?」
織斑先生の言葉に束さんは真面目な顔で頷いた。
「ダイモンが、また動き出したみたいだからね。ここにいるみんなに伝えようと思ってきたんだよ」
束さんがそういうと、ひとりでにプレジェクターが作動し、画像を映し出した。束さん、IS学園のシステム掌握したのか?
画像には……ひとつの機影が写っていた。僕が学園祭の時に戦った、ミルトンによく似た大きな……とても大きな機影が……。
「これは……」
「ダイモンが作った要塞、かな。多分、今まで見てきたどの機体よりも大きいよ。IS学園の敷地と同等くらいには……」
束さんの言葉に、みんなが息を飲む。そんなに大きなものが……だけど、そんなものがどこに現れたんだろう。目立つはずだし、すぐに気付かれるんじゃ……。
「これの厄介なところは大きさだけじゃないんだよね……」
映像が少し離れた位置にくる。
その機体の背景を見て、僕は悟った。まさかそんな……。
「なんだこれ、夜景……にしては、なんか……」
「宇宙、だよ」
「宇宙!?」
やっぱり……月が大きく写ってるし、デブリのようなものも見える。
しかし、これで納得がいったかな。束さんが何年かけてもダイモンを見つけられなかった理由が。
「見つかるわけないよね。地球上探してたって、そこにダイモンがいないんだからさ!まさか、束さんが自分の未熟さを嘆く時が来るとは思わなかったよ……」
体育座りでうずくまり、拗ねる束さんというなんとも珍しい絵が見れたが、今はそれよりもダイモンをどうするかだ。
「宇宙、か……どうするのだ、束。束が感知したということは、この機体は地球に降下してきているのだろう?」
「うん。でも地球に降りてきた時に、どれだけの被害が出るか……」
「被害を出さないようにするには、宇宙で叩くしかない、か……」
宇宙で叩く……そんなことが可能なのだろうか。ISは宇宙活動を目的として作られたパワードスーツだけど、現在稼動しているISは軍事目的が主で、宇宙活動ができるかどうか……。
「まぁ、束さんに死角はないさぁ!これをご覧あれ!」
画像が変わり、今度はISのスペックデータが……ってこれ、テムジン?でも、色が真っ白だ。それに、背中には見慣れないユニットが……。
「『テムジンタイプa8』。宇宙活動が可能で、スペックもテムジン以上に仕上げたよ。小難しい用語なんか言っても理解できないと思うから、簡潔に説明すると、ライデン並みの射撃能力と、アファームド並みの近接格闘能力と、フェイ・イェン並みの運動性能を兼ね備えた機体だよ」
「何その私の考えた最強のISみたいな無茶苦茶な性能……」
鈴が思わず束さんに突っ込んでしまっているが、これに関しては僕も突っ込みたい。なんてものを作っているんだこの人は……。
「当たり前だけど、テムジンだからしょーくん用に調整してある。そして、現状宇宙に上がれる機体は……このテムジンだけだよ」
「そんな……束さん!それじゃ、将冴はまた1人でダイモンと!?」
「姉さん、なんとか私達も宇宙に行けないのですか!?将冴1人に行かせるのは……」
「……残念だけど、この機体が地球に降りてくるのは明日の夜。それまでに、みんなの機体を宇宙活動用に調整するのは束さんでも不可能だよ」
「全部でなくても、1つだけを調整するというのはできないのでしょうか!?」
「君たちが思ってるほど、宇宙活動用調整は簡単なものじゃないんだよ。1つの機体でも、一週間はかかる。このテムジンは……特別製だから宇宙でも動かせるけど」
束さんがここまで無理と断言するからには、本当に無理なんだろう。みんなもそれがわかっているからか、表情が暗い。クラリッサも、僕の義手を握ってくる。
「……束さん。僕がその機体を使って、あの要塞に勝てる可能性はどれくらいですか?」
「わからない。あれがどれだけの力を秘めているかわからないし……」
「そうですか」
勝率不明……それに、宇宙での戦いというなら、負けたら一貫の終わり。なかなかにスリリングなことになってるね。
「将冴、行くつもりなんだな……」
「僕しかいけないみたいだからね。それなら行かなくちゃ」
「俺たちも行くって言ったばかりなのに……」
「また兄さんを1人で行かせてしまうのかっ……!」
ここにいるみんながまた俯いてしまう。
だけど……今回は違う。
「1人じゃないよ」
「え?」
「僕は、今までダイモンのことは僕の問題だから、1人で解決しようとしていた。でも、今は違う……みんなが僕のために戦ってくれると言ってくれた。クラリッサが一緒に背負うと言ってくれた。もう、僕1人の戦いじゃない。僕は1人で戦うわけじゃない」
「将冴……」
「絶対に負けない。みんなのためにも」
みんなは黙ったまま僕を見た。
だけど、みんなの目が何を言いたいか物語っていた。
「結論はついたみたいだね。しょーくん、機体の説明するから、ついてきてくれるかな。できれば、1人で」
「束さん、私も……」
「ううん、これは……これに関しては、しょーくんだけにしか話せないんだ」
「クラリッサ、部屋で待っててくれる?戻ったら、話したいことがあるから」
「将冴……わかった」
「それじゃ、行ってくる」
3,000文字超えた……。書けるときと書けないときの差が……