部屋に戻る途中の廊下に、見覚えのある3人がいた。
そうだった、織斑先生が言ってたっけ。アメリカから増援があったって。この3人なのは予想できたけど。
3人のうちの1人……ナターシャさんが僕を見つけ、こちらに向けて駆け出してきた。
「ショウゴ!」
あ、車椅子だから逃げ場ないや……。
案の定、全く逃げれなかった僕の顔に、ナターシャさんの豊満な胸が押し当てられた。苦しい……。
「本当に良かった……ジェニーとステフから話を聞いたときは心臓が止まるかと思ったわ。助け出しても、何日も目が覚めないから……」
「んむぅ……!」
「ナターシャ少尉、ショウが窒息してます」
「え?あ、ごめんなさいショウゴ!」
ジェニーの一声のおかげで窒息死は避けられた。何度これで死にかけたことか。
「大丈夫?ショウ」
「う、うん……心配してくれてありがとう、ステフ」
「ショウゴ、ごめんなさい。目が覚めたことが嬉しくってつい……」
「謝らないでください、ナターシャさん。ご心配をおかけしました。それに、助けに来ていただいて……」
「気にしないで。あなたにはあの時助けてもらったんだから。それに福音だって……お礼を言わなきゃいけないのは私の方だわ」
福音に関しては束さんがやってくれたから、僕より束さんにお礼を言ってあげたほうがいいと思うけど……。
まぁ、束さんはお礼を言われたところで軽くあしらってしまうだろうけど。
「そういえば、ショウ。さっき小耳に挟んだんだけど、あんた明日ダイモンと戦いに行くって……」
「うん。そうだよ」
「ショウ、目が覚めたばかりなのにもう戦いに行くの!?」
「駄目よ、ショウゴ!そんなの、いくらあなたでも……」
ナターシャさんが僕の肩を掴み、そう説得してくる。ナターシャさん、ジェニー、ステフが心配してくるのは当たり前だ。けど、行かなきゃいけない。僕しか行けないんだから。
僕はナターシャさんの腕をそっと掴み、首を横に振った。
「これは、僕が結末をつけなきゃいけないんです。それに、時間も残されていない。大丈夫です。僕は必ず勝って戻ってきますから」
「ショウゴ……」
「……ショウ、帰ってきたら、日本案内しなさいよ。約束だからね。破ったら承知しないから」
「ジェニーだけズルい!私もだからね!」
「はは……うん、わかった。約束する」
勝たなきゃいけない理由が増えたな。まぁ、絶対に勝つつもりだから、増やせるだけ増やしてやろうか。
「ショウゴ!あなたが帰ってきたら、あのクラリッサから奪い取ってやるから!だから、ちゃんと帰ってきて私とクラリッサの勝負を見届けなさい!はい、約束!」
「え、あ、は、はい!」
半ば強引に約束を取り付けて、ナターシャさんはスタスタとどこかへ行ってしまった。ナターシャさんを追いかけるように、ジェニーとステフも僕に手を振ってからついていった。
「はは、あんな約束しちゃった。クラリッサ、怒るかな……」
戻ろう。クラリッサが待ってる。
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寮の部屋に戻ると、中は真っ暗だった。
おかしいな、クラリッサが戻ってるはずなんだけど……。
電気をつけると、そこにはテーブルに突っ伏しているクラリッサの姿があった。
「クラリッサ……寝ちゃったのか」
多分、僕が目覚めるまでずっと気が気じゃなかったんだろう。スペシネフにとらわれてから、気が休まるはずもない。
「ごめんね、クラリッサ……心配かけて」
改めてクラリッサにそうつぶやきながら、頬を撫でた。
「ん……」
小さく反応したクラリッサはゆっくりと目を開き、僕の顔を見つけた。
「将冴……戻っていたのか。すまない、少し寝てしまっていた」
「気にしないで。ずっと気が休まらなかったんでしょ?今コーヒー淹れてくるから」
キッチンへ向かい、手早く作れるインスタントコーヒーを淹れてクラリッサの元へ持っていく。
いつもクラリッサに作ってもらってばっかりだったから、これくらいはね。
「はい、クラリッサ」
「すまない、将冴」
コーヒーを受け取ったクラリッサは、口をつけずにジッとコーヒーを見つめた。
「クラリッサ?」
「……本当に戻ってきたんだな」
「……うん。ちゃんと戻ったよ」
「将冴が戻ってこなかったらどうしようと、ずっと考えていたんだ。縁起でもないかもしれないが……。でも、どれだけ考えても、将冴がいない未来を考えられなかった」
「……」
「だから……本当に……」
クラリッサの涙が、ポタポタとコーヒーに落ちていく。
僕は義足をつけてクラリッサに歩み寄り、そっと抱き寄せた。
「……ありがとう、クラリッサ。助けてくれて。スペシネフにとらわれている時の記憶はほとんどないけど、でもクラリッサが呼びかけてくれたのは感じていたよ」
「将冴……」
クラリッサは顔をあげて、僕と唇を重ねた。
触れ合えなかった分を補うように長く、ゆっくりと。そして惜しむように、唇を離した。
「……ふふ。クラリッサ、涙がで顔くしゃくしゃになってる」
「うっ、あまり見ないでくれ!」
「眼帯、外した方がいいんじゃない?ジッとして」
「っ!?ダメだ!」
眼帯に手をかけようとすると、クラリッサが顔を背けた。眼帯を取るのを拒否した?
「左目、何かあったの?」
「……」
「クラリッサ、見せて」
クラリッサは戸惑った様子でいたが、僕に背を向けたまま眼帯を外した。
「……将冴、これを見ても、驚かないでくれ」
クラリッサが目を瞑ったまま僕の方を向く。左目に傷などはない。
ゆっくりと瞼を開けると、クラリッサの左目は……
「色が……薄く……」
「
「……これ、僕のせい?」
「それは違う!これは私がやったことだ。将冴のせいではない」
僕がスペシネフにとらわれなければ……クラリッサの目は……。
「……やはり嫌だろう。こんな目の女なんて……」
「クラリッサ、いつ僕がそんなこと言ったの?」
「え……?」
そっとクラリッサの左目に瞼の上から触れる。こんなことで、僕がクラリッサのことを嫌いになるものか。
「嫌いになるわけがない。絶対に、これからもずっとクラリッサのことが大好きだよ」
「将冴……」
「だから、もうそんなことは言わないで……」
クラリッサの目をこうしてしまったのは僕のせいだ……責任は僕が取る。僕はずっと、クラリッサと……。
「私も……将冴が好きだ……大好きだっ!絶対に、離れたくない」
「僕もだよ、クラリッサ」
もう一度、クラリッサとキスをした。
そして、そのまま僕とクラリッサはベッドに倒れこんだ。
ベッドでクラリッサと一緒に裸になって横になっていると、クラリッサは僕の手をギュッと握ってきた。
「必ず、帰ってきてくれ」
「うん。必ず……ダイモンを倒して帰るよ」
将冴とクラリッサが初夜。
この情事の様子は……本編終了後に書こうかなと思います。