大学の定期試験期間ですが、全く勉強してません。
勉強しなくてもいいよね……。
クラリッサさんに膝枕して慰めて欲しい……。
日本へ帰る当日。
僕と千冬さんは、ルカさんが運転する車で空港に向かっていた。助手席にはラウラが座って、どこかに電話している。
「……ダメだ。通じない」
「ラウラ?誰に電話してるの?」
「クラリッサだ。あいつも来る手筈だったんだが……」
クラリッサさん……。
あのデートから、クラリッサさんとまともに話をしていない。日本へ帰る準備で忙しかったのもあるけど、クラリッサさんがさけているように感じた……。
今日、来ないのかな……。
「二人とも、空港に着きました」
ルカさんが車を停めた。
そこからラウラの手を借りて車椅子に乗り、荷物を降ろした。
「将冴、私が車椅子を押そう」
「ありがとう、ラウラ」
ラウラが車椅子を押してくれる。その横を千冬さんが並んだ。ルカさんは駐車場に車を停めに行ったみたいだ。
駅の荷物検査のところまで行くと、ドイツ軍服の集団とリョーボさんがいた。皆、寮にいた人たちだ。
「リョーボさん!」
「よう、将冴。見送りに来たよ」
「ありがとうございます。皆さんも……」
思わず目が潤んでしまう。
おかしいな……お父さんとお母さんが亡くなった時は泣かなかったのに……。
「ほら、将冴」
「うん……」
千冬さんが僕の肩に手をやる。
涙が流れてどうしようもないけど、皆の方を向く。
「一年間、ありがとうございました。男の僕を受け入れてくれて、助けてくれて……皆さんといた一年間は、絶対に忘れません!」
涙でぐしゃぐしゃの顔でお礼を言った。リョーボさんは、「またドイツに来な」と頭を撫でてくれる。
寮の皆も……
「絶対にまた来てね!」
「今度は私が日本に行くからね」
「元気でね!」
と、声をかけてくれる。
「将冴」
「ラウラ……」
「勝ち逃げは許さないからな。次は私が勝つ」
「……うん、僕も負けないから」
互いに握手をする。
「元気でな。また会おう」
「はい!また……絶対に!」
時間が迫り、千冬さんが車椅子を押して保安検査所をくぐった。
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「こーんな所にいた」
滑走路が全て見える場所で外を眺めていたら後ろから話しかけられた。
そこにはルカが立っていた。
「ルカか……」
「いいの?お見送りに行かなくても」
「……いいんだ。別れが辛くなる……」
それに伝えたいことは、デートの時に伝えた。返事はもらっていないけどな。
「……あんた、デートした時から将冴君をさけてるでしょ?聞いても答えないだろうから聞かないけど。というか、だいたい察しはつくけど」
「お前は本当に末恐ろしいな……」
何も言ってないのに察するとは。ルカの頭はどうなっているのか……。
「一言くらい何かあるでしょ?」
「人がどれだけの決心をしてデートに挑んだと思っているんだ」
「知ってるわよ。だけど……」
スパァンと頭を叩かれた。……痛い。
「将冴君だってあんたに何か伝えたいかもしれないでしょ!あんたがどうのってことじゃないのよ!」
「わかっている!わかっているさ……でも……」
怖い。あの時の返事を言われそうで……。
「ルカ……恋愛というのは、こんなにも怖いのか……」
「当たり前でしょ。バカ」
「そうか……」
私は、ISの通信を繋げた。
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飛行機に乗り込んだ。
驚いたことにファーストクラス。千冬さんはどんだけVIP待遇されているのだろう……。
窓際の席に座り、車椅子を拡張領域にしまう。
「将冴、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫です。永遠のお別れじゃないですし、絶対にまた会いに行きます」
「そうか。長いフライトになる。休めるうちに休んでおけ」
「はい」
飛行機が動き出すまで、まだ時間はある。
何気なく窓の外に目をやる。
「クラリッサさん……」
小さく呟く。
ドイツを発つ前に、会いたかったな。あの時の返事は……まだ僕の中でまとまっていない。
クラリッサさんとそういう関係になるのは、想像がつかないんだ。
その時、網膜に投影されて、ISが通信をキャッチした。誰だろう?
離陸前だし、つないでみよう。
「はい、どちら様でしょう?」
『……私だ。クラリッサだ』
「クラリッサさん!?」
まさかクラリッサさんから連絡が来るなんて。
隣に座っている千冬さんは、僕の声でこっちを見た。
『今日は見送りに行けなくてすまない。将冴と面と向かって話すと、別れの決心が揺らいでしまいそうだったから……』
「……」
『将冴と会うのが怖かったんだ。臆病者と、笑ってくれてもいい』
「クラリッサさん、あの時の返事……」
『……っ』
息をのむ音が聞こえる。
クラリッサさんも、緊張しているのがわかる。
「まだ、僕の中で整理がついていません。クラリッサさんと別れたくない、もっと一緒にいたい。この気持ちがそうなら、そういうことなんだと思います。でも……」
『将冴……』
「ちゃんと僕の中で答えが出るまで待ってください。それがいつになるかわかりませんが、絶対にその時はクラリッサに伝えに行きます。たとえ世界の裏側でも」
『……ああ』
「だから、僕を待っていてくれますか?」
『待っている。ずっと……私はお前の嫁なのだからな!』
離陸のアナウンスがされた。
「また……いや、『まだ』それは間違いですよ」
そう言って、通信を切った。
僕は、日本へと戻る。
とりあえず一区切り。
次から原作に追いつきます。
長い前日章でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。
次回もお楽しみ。