回想とか入ります。ご了承ください。
織斑先生に車椅子を押してもらいながら、廊下を進んでいる。僕は自己紹介に若干の不安を抱えていた。僕の様子に気がついたのか、織斑先生が話しかけてくる。
「どうした、何か不安なことでもあるのか?」
「ええ、まぁ。自己紹介に、若干のトラウマがありまして」
「トラウマ?」
「はい。あれは日本に帰ってきて、中学に編入するとき……」
僕は1年前に起こったことを思い出す。
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〜1年前〜
「ここがお前のクラスだ」
担任の先生に連れてきてもらった教室。中を見ると、まだ先生が来ていないからか、隣の席同士で話したりしている。学校なんて1年ぶりだからな。すごい緊張する。
「それじゃあ、入るぞ」
「はい」
僕は緊張を隠しきれないまま、先生と教室に入る。
「静かにしろー」
先生の声に、話し声がとまり僕の方に視線が集まった。
「先週に伝えたから知ってると思うが、転入生が来た。今から自己紹介してもらう」
先生が視線で合図をくれる。
自己紹介だよね……自己紹介……自己紹介……
『はじめまして、柳川将冴です。先日までドイツにいました。体に障害があるので車椅子ですが、仲良くしてください。よろしくお願いします』
できた。完璧だろう。
……あれ?なんかみんなぽかーんとした顔をしてる。
「将冴、自己紹介は日本語で頼む」
「え……」
……あ、今ドイツ語で……。
「す、すいません!」
その瞬間、全員に笑われた。
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「そんなことが……」
「まさかあんな失敗するとは思いませんでした。なので少しトラウマなんですよ」
「まぁ、今回は大丈夫だろう。着いたぞ。ここが1年1組の教室だ」
教室の外から中を見ると、まだ自己紹介をしているところだった。立っているのは……一夏だ!久しぶり会ったよ。少し背が伸びたかな。
かすかに声が聞こえる。
「織斑一夏です。よろしくお願いします。…………以上です」
教室の中にいる人たち全員がずっこけた。一夏相変わらずだなぁ。
「あの馬鹿者が……将冴、ちょっと待ってろ」
「はい、わかりました」
出席簿を手に、織斑先生が教室に入ってまっすぐに一夏のところへ行き、出席簿を思いっきり一夏の頭に振り下ろした。
パァン!
「げっ!関羽!?」
「誰が三国志の英雄だ!」
スパァン!
また出席簿が振り下ろされた。ご愁傷様、南無南無。と、次の瞬間。
『キャアァァァァ!!』
キィンと、耳に響く絶叫。いったいなんなんだ?
「千冬様よ!ブリュンヒルデの!」
「ああ、千冬様!私もぶってください!」
「願わくばその御御足でふんずけてください!」
「私を調教してぇー!!」
あ、察し……世界的に有名なブリュンヒルデは、女性にとっては尊敬する相手。それが目の前にいるんだ。それに、この教室にはその弟の一夏もいる。ボルテージMAXだ。
「静まれ!」
織斑先生がそう言った瞬間に、教室はしんと静まり返った。流石というかなんというか。
「まだ自己紹介は終わってないだろう……が、その前に1人紹介する者がいる。入ってこい」
織斑先生に呼ばれ、教室に入る。
「はじめまして。織斑一夏と同じ男性操縦者の柳川将冴です。見ての通り体に障害があり、車椅子ですがよろしくお願いします」
よし、日本語で話せた。
問題ないはず……
「き……」
……まずい。僕は急いで耳を塞いだ。
『キャアァァァァ!!』
再び絶叫。
「2人目!?ニュース見て知ってたけど二人とも一緒のクラスなの!?」
「弟系よ!保護欲をそそられる弟系!」
「身の回りの世話をしてあげたい!私色に染め上げたい!」
「おり×やな……ぶっふぉ!?」
最後の、なんかおかしいよ?
「うるさい小娘ども!」
その瞬間に、また静まる。織斑先生は絶対なのか。
「将冴……将冴なのか!?」
一夏が立ち上がり、僕を見た。
「久しぶり、一夏」
「お前、この2年どこに居たんだよ!俺も鈴も心配して……」
「まぁ、その話は後で。まだ自己紹介の途中だよ。織斑先生にまた叩かれるかもしれないし」
その言葉に、一夏は席に座った。
改めて全体を見渡して見ると、窓際に箒さんがいる。箒さんもこっちを見ていたので軽く手を振っておいた。
「将冴、自分の席に行けるか?」
「はい」
一つだけ空いてる席を見つけ、車椅子を動かした。
そして、また自己紹介が始まる。
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自己紹介も終わり、このまま授業が始まるということで、少し休憩時間をもらった。
他のクラスも同じだったようで、廊下の外には生徒が詰めかけている。多分、僕と一夏を見に来たんだろうな。
と、一夏が僕のところに向かってくる。
「将冴、久しぶりだな。二年もどこに行ってたんだ?」
「織斑先生から聞いてない?……って、話せないのか。どこから話すべきか……」
僕は今までのことを掻い摘んで話した。モンドグロッソで誘拐されたこと。ドイツで一年間過ごしたこと。日本に帰って来てすぐに重要人保護プログラムにより元の家に住めなくなったこと。
「そうだったのか……その足も……」
「うん、誘拐された時にね」
一夏と話していると、また1人近づいてくる人がいた。箒さんだ。
「一夏、将冴」
「お前……箒か。久しぶりだな」
「ああ、久しぶり。将冴も、あの時以来だな」
「うん、そうだね。箒さん」
「二人共知り合いなのか?」
「箒さんとは同じ中学だったんだ」
「そうだったのか。すごい偶然もあるもんだな」
本当にすごい偶然だよ……一夏と箒さんもね。
「将冴、すまないが一夏を借りてもいいか?」
「どうぞ」
「すまない。一夏、二人きりで話しがしたい」
「あ、ああ。わかった」
箒さんは一夏を連れて教室を出て行った。
さて、こうなると周りの視線は僕に来るわけで……
「ちょっとよろしくて?」
ふと、僕に話しかけてくる人が。
金色の髪がロールしていて、目はサファイアのような色……この人は確か……
「えっと、確かイギリス代表候補生の……」
「あら、ご存知でしたの。ま、当然ですわね。改めて、セシリア・オルコットと申します」
軟禁中にISの情報見ておいてよかった。
「ご丁寧にどうも。柳川将冴です。お話できて光栄です」
「礼儀は弁えているようですわね。いい心がけですわ」
「それで、僕に何か?」
「いえ、世界で2人しかいない男性IS操縦者がどのような者か見ておこうと思いまして。あなたはまともな方のようですわね」
「それはよかった。まともじゃないなんて言われたら、どうすればいいか困ってたよ」
「せいぜい頑張ってくださいな」
んー、常時上から目線な態度だな。あれかな、典型的な女尊男卑の……ここは波風立てないように。
「そうします。できれば、今後ご教授いただけると嬉しいです」
「ええ、いいですわ。貴族たるもの、常に庶民には手を差し伸べる。ありがたく思いなさいまし」
「はい、よろしくお願いします」
と、手を差し出す。イギリスには礼をする習慣はなかったと思うから、握手だ。
セシリアさんも、意図をわかってくれたようで、手を握ってくれる。
「あら?」
セシリアさんが不思議そうに声をあげる。
「あなた、手袋をしてますの?」
「ええ、まぁ……失礼でしたか?」
「いえ、そういうわけではありませんが……気になったもので」
義手を隠すために手袋をしたままだったけど……ISの授業が始まれば、いやでもバレるか。
「何か、お怪我でも?」
「まぁ、怪我といえば怪我ですね」
僕は両方の手袋を外した。
「なっ!?」
セシリアさんは言葉を失い、周りのクラスメイトや廊下の生徒も驚きの表情を見せる。
「本当は、両手もないんです。足と一緒に、事故で無くしてしまって」
誘拐された時に、とは言わないでおこう。
「そう……だったんですの……」
セシリアさんには、少しショックが強かっただろうか。でも、隠していけるわけでもないし、いつかはバレるから早いほうがいい。
と、そこで始業のベルが鳴る。セシリアさんは「失礼します」と言って自分の席に戻る。
一夏と箒さんは、ベルが鳴り終わる頃に教室に入ってきた。
セシリアが偉そうな時の喋り方が迷子。
勉強不足かな……なんとかします。