ちょっと発狂しそう。
あの作戦から一週間が経った。
少年はまだ目を覚まさない。ラウラは渡さなければならないと言っていたものを渡せないままでいる。
この一週間は、事後処理をしていた。
亡くなった2人の一般人……名前は
2人は日本のIS研究を行っている倉持技研の研究員らしい。なんでも、新しいISの開発を行っていたとか。それでテロリストに狙われたというのが、ドイツ軍の考えだ。
そして、両手両足を失う大怪我を負った生存者、
私が守れず、四肢を失ってしまった。会わせる顔がない。
「クラリッサ……おーい、クラリッサー!」
ペチンと、頭を叩かれた。目の前には同僚のルカ・ミヒャエルが立っていた。
「ルカか……なんだ?」
「なんだ?じゃないわよ。IS操縦者は至急第一訓練場に集まれってさ。ほら、例のブリュンヒルデの」
ああ、そういえば今日から世界最強のブリュンヒルデ織斑千冬がドイツ軍のIS操縦の教官に来るのだったな。
弟を誘拐され、ドイツ軍がそれを助ける手伝いをしたから一年間だけ教官をしろと要求したら通ったという、なんとも気の抜ける話だ。
前なら、ブリュンヒルデの指導を受けれると知ったら飛び上がって喜んだが……今はそんな気分じゃない。
「クラリッサ、あんたまだ引きずってんの?一週間前の作戦のこと」
「そんなことは……ない」
「いい加減ふっ切りなさいよ。あんたはちゃんと命を助けた。それで十分じゃない。上層部だって、あんたを大尉に昇格させるって言ってんのよ?」
あの作戦成功を受けたドイツ軍は、私を昇格させるらしい。もちろん、昇格は嬉しい。だけど……今回の結果では、素直に受け取れない。
「今は放っておいてくれ」
「ちょっと、どこに行くのよ!この後、ブリュンヒルデの指導があるのよ!」
後ろでルカが叫んでるが、私は無視して外へ出て行った。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
第一訓練場で十数名のIS操縦者が整列していた。
私達の前には、ドイツ軍服を着こなしているブリュンヒルデ、織斑千冬が立っていた。
いや、織斑教官というべきだな。今日から特別教官として、一年間指導してもらうことになっている。
「時間か……静粛に!今日からお前たちの教官を務めることになった織斑千冬だ。引き受けたからには甘やかしたりなどはしない。覚悟して付いて来い!」
『はい!』
声をそろえて返事をする。織斑教官は鋭い目つきで一人一人を吟味するように見ている。
そして、手元の資料に手をかけた。
「名簿によるともう一人いるようだが……誰か知っているものはいるか?」
もう一人……おそらくクラリッサ中尉のことだろう。大尉に昇格するときいたが、まだ中尉と呼ばせてもらおう。
クラリッサ中尉は、まだあのことが払拭できていないのだろうか。
「ふむ……誰も知らないか。いないならしょうがない。訓練を始める。まずは体力作りからだ、ここにメニューを書いておいた。それぞれしっかりとこなせ。私はサボタージュしたやつを連れてくる」
そう言って、織斑教官はメニューを書いた紙を渡し、訓練場から出て行った。
わざわざ連れてくるなんて……何を考えているのだろう。
しかし、このメニューは……
「桁が一つ違うのではないのか?」
本当だとしたら、とんだ鬼教官だ。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ドイツ軍の中で、建物と木々が影になって滅多に人のこないベンチがある。私はそこで、買ったばかりの熱い缶コーヒーを飲みながらほうけていた。
考えても考えて、あの少年の姿が浮かぶ。きっと私を憎んでいるだろう。一生走ったりできないのだ。男の子ならゲームなんかもするだろう。でもやるための手がない。
私は、まだ中学生の子供の自由を、将来を奪ってしまった。
「くっうぅ……」
重い。責任が……重くのしかかっている……私には支えきれない。
「私は……〈スパァン〉痛い!?」
突然、頭を強い衝撃が襲った。
ふと横を見ると。
我が軍の軍服を着た東洋人が書類を挟むボードを持って立っていた。このひとは……まさか……
「こんなところで堂々とサボタージュとは、いい度胸だな。クラリッサ・ハルフォーフ」
間違いない。ブリュンヒルデ、織斑千冬だ。
「ど、どうしてここに……」
「私の訓練に出なかった馬鹿者を連れていくためだ」
私のことだ。
「すぐに第一訓練場に……と、言いたいところだが、お前とは話をしておかなければならないようだな」
「え?」
予想外の言葉だった。
さっきまでの張り詰めていた空気が、少し和らいだ。
織斑千冬の目が、少し優しく感じた。
「隣に座るぞ」
「え、あの……」
有無を言わさず、どかっとベンチに座った織斑千冬。
「まずは礼を言わせてくれ」
礼?全く接点のない私に、織斑千冬はなぜ礼など。
「将冴を……助けてくれてありがとう」
柳川……少年のことか……織斑千冬とあの少年は、知り合いなのか……?
「あなたは……柳川ショウゴの……」
日本語のイントネーションは難しい。少し変に発音してしまった。
「あの家族には、世話になっていてな。IS関係でも、プライベートでもな……」
聞くと、自分が忙しいときに弟を預かってもらっていたりしたらしい。それで、深い交流を持っていたという。
「なぜ、私が助けたと知っているのですか?」
ドイツ軍がそうペラペラと喋るとは思えないが……。
「なに、少し脅してやっただけさ。3人が誘拐されたというのは、とあるツテで聞いていたのでな」
とあるツテ、の部分で少し嫌な顔をしていたが、突っ込んだら何かされそうだったのでやめた。
「お前が助けてくれたと聞いて安心した。両親の方は……仕方ないとしか言えないな。だが、将冴を救ってくれた。ありがとう」
「礼を言われるようなことはしていない……私は……」
この重責は、私に一生ついて回る。
「目の前で、彼が血塗れになっていた。手がグチャグチャになっていて、足は引きちぎれていた。私が油断せずにいれば、そうはならなかったはずだ……こうなることは、軍に入っていれば起こりうることだと知っていた!だが、他人事のように考えていた。目の前で起こった瞬間、信じられないと頭が拒否していた……覚悟が足りなかったんだ……」
織斑千冬は、何も言わずに聞いている。
自分でもわかっている。これはただの愚痴のようなものだ。知らぬ存ぜぬで通せることではないのだ。
「ハルフォーフ。お前がどう思っているかは知らない。でも、お前のおかげで1人の命が助かったのは事実だ。それはわかってくれ」
織斑千冬は、すっと立ち上がり、私に背を向けた。
「訓練のあとに伝えるつもりだったが、今伝えてやろう。将冴が目を覚ましたぞ。この後どうするかは、自分で考えろ。訓練は明日から参加しろ」
そう言って立ち去っていった。
私は、すっかり冷めてしまった缶コーヒーを飲み干した。
ラウラが千冬を鬼教官って言ってることに違和感……
なんか駄文臭がすごい。プロローグ終わったら将冴の設定あげます。バックグラウンドも。
GEの方を読んでもらったらわかるのですが、主人公の名前は同じですがまったく別の人です。
名前を考えるのが面倒なんだ……