クラリッサといちゃいちゃするためにも、話を早く進めよう。
翌日、教室に行くとなんか騒がしい。
他のクラスの人たちも、廊下から1組の教室を覗いてる。
幸いにも後ろの扉は開いていたのでそこから教室に入る。
教室の前の方では一夏と鈴が向かい合っていた。鈴は腕を組んでいて、一夏は何が何だかわからない様子だ。
んー、昨日行ったことをもう実行するつもりだろうか?
「一夏!私と勝負しなさい!」
実行した。これは予想外。
「勝負って、なんでそんな……」
「あんたは黙って受けとけばいいのよ!それとも、私に負けるのが怖いの?」
さすがセカンド幼馴染。一夏が勝負に乗るであろう挑発。
「そんなわけないだろ!わかった、受けて立つ。内容は?」
「もうすぐあるクラス対抗戦。それで優勝したほうが勝ちよ。負けた方は勝った方の言うことをなんでも一つ従うこと。いいわね?」
「いいぜ。絶対に負けないからな」
「あんたに吠え面かかせてやるわ!」
鈴は勝負を取り付け、教室を出る。出る瞬間に僕に気づいたのか、こっちに勝ち誇ったような顔をしてきた。
流石、鈴の行動力には脱帽だよ。
「一夏」
宣戦布告された一夏を呼ぶ。これからどうするのか聞いておかないと。
「将冴、おはよう」
「おはよう。鈴に宣戦布告されてたね」
「ああ。なんかよくわかんねぇよ。昨日だって、約束覚えていたのに突然怒り出すし」
意味を履き違えていたら覚えていないのと同じことだよ。一夏はもう少し相手の気持ちを察するべきだ。これから世に出たら苦労するよ?
「てか、あいつクラス代表じゃないだろ。つい流れで受けるなんて言っちゃったけど」
「専用機持ちが変わってくれって言ったら変わるでしょ。みんなスイーツフリーパス欲しいだろうし」
「そういうもんか?」
「そういうもの」
一夏には女心というものを叩き込まないとダメだろうか……まぁ、理解したところで唐変木は変わらなさそうだけど。
「で、対抗戦どうするの?セシリアさんとの時みたいに、鈴は油断しないだろうし、ビギナーズラックみたいなのはないよ?」
「ああ、わかってるさ。それで、将冴頼みがあるんだけど……」
「断るよ」
「な!?なんも言ってないだろ!」
「練習付き合ってくれ、とでも言うつもりだったんでしょ?僕は一夏も鈴も応援するから、どちらかについて手助けするつもりはないよ」
勝負したらと焚きつけたのは僕だけど、それは勝負が成立する前だしいいだろう。
それに、僕が一夏の練習に付き合っても、一夏が得られるものは少ないと思うし。僕の動きは機体ありきだから。
「そっか……」
「セシリアさんがいるでしょ?剣だって、箒さんがいる。2人に特訓してもらいなよ」
「わかった、そうするよ。そろそろ千冬姉も来るな。席に戻るよ」
「うん。叩かれないように頑張ってね」
「今日は大丈夫だって」
そう言って自分の席に戻っていった。
さて、今日は何回叩かれるかな。一夏
ーーーーーー
ーーーー
ーー
昼休み、さっさと昼食を済ませてしまった僕は、何の目的もなく校内をうろついていた。
思えば、じっくりと校内を見て回ったことないなぁ。
結構いろんな施設があるんだなぁ。
整備室なんかもある。中を見てもいいのかな?
恐る恐る扉を開くと、中には2人の女子生徒がいて、ISをいじってる。どちらも水色の似たような髪型。どことなく似ているけどリボンの色が違うから学年が違う。一人は2年生でもう一人は1年生……姉妹かな?
「それでね、ここの部分をこうすれば……」
「あ、そっか。じゃあ、これをこっちに……」
「そうそう!さすが簪ちゃん、私の妹だねぇ」
姉であろう2年の先輩は、簪と呼んだ一年生の頭を撫でた。簪さんは少し嬉しそうに顔を赤らめている。や
「あら?」
お姉さんの方が僕に気づき、それに続いて妹さんの方も僕の方を向いた。
「あ、すいません。勝手に入ってしまって……」
「いいのよ。別に立ち入り禁止ってわけじゃないし」
「あ、貴方確か、1年1組の……」
どうやら僕のことを知っているようだ。まぁ、当然といえば当然か。男だし、車椅子だし。
「柳川将冴です。初めまして」
「ご丁寧にどうも。私は更識楯無。生徒会長をしているわ」
「妹の、更識簪です。よろしく……」
「よろしくお願いします」
楯無さんと簪さん。改めて見ると、似ているな。
「君が噂の車椅子男性操縦者ね。資料で見るより、可愛らしい顔をしてるわね」
「可愛らしい顔……」
男として、その言葉はなかなか心に突き刺さる。
まぁ、気にしないでおこう。
「お二人はここで何を?」
「簪ちゃんの専用機を作っていたの。ね?簪ちゃん」
「うん……」
どうも簪さんは、僕を警戒しているようで……。
それにしても、専用機か。ということは簪さんは代表候補生か何かだろうか?でも、作っていたというのは……何か事情があるのかな?
「専用機を作るって、どこかの企業や研究所が作ってくれるんじゃ……」
「最初はその予定だったの。でも、開発元の倉持技研がもう一人の男性操縦者である一夏君の専用機の方に人員を割いてしまってね」
「それで、私が自分で作ることになったの」
一夏……君は、君の知らないところで迷惑をかけていたようだよ。
「友人が迷惑をかけたようで……」
頭を下げる。僕が謝ったところでどうにかなるというわけではないだろうけど……。
「別にいい。あなたも、織斑一夏も悪くない。それに自分でISを作れるのは楽しいから」
「さすが簪ちゃんだわ!本当に優しい子ね〜」
楯無さんが、また簪さんの頭を撫でる。簪さんは恥ずかしそうに、楯無さんの手を軽く振り払う。
「もう姉さん!恥ずかしいからやめてよ」
「ふふ、いいではないかいいではないか〜」
指をわきわきさせながら、簪ちゃんに近づく楯無さん。
これは止めたほうがいいのだろうか?
「何がいいではないかなのですか?」
僕と背後で怒気を含んだ声が聞こえた。ゾワッと寒気がして、背筋が伸びる。
恐る恐る背後を振り返ると、メガネをかけたポーニーテールの3年生が立っていた。学年はリボンの色でわかった。
その3年生の視線は、まっすぐ楯無さんに向いていた。
「う、虚ちゃん……ごきげんよう」
「会長、仕事をサボって何をしているのですか?」
「か、家族サービス……」
「家族サービスは仕事が終わってからにしてください。さ、行きますよ」
ガシッと楯無さんの首根っこをつかみ、引きずっていく虚さん。
「会長がおさわがせしました。失礼します」
「虚ちゃん、首絞まってる!ギブッ、ギブゥー!」
あっという間に会長を連行していってしまった。僕と簪さんは呆然としている。今のはいったい……。
「騒がしくてごめんね。いつものことだから気にしないで」
簪さんはそう言うと、ISの近くにあるコンピューターを操作し始めた。
「これ、打鉄だよね?」
「うん。それを改修しているの。第三世代用に。正式な名前は打鉄弐式っていうの」
「へぇ」
確かに、所々違う部分がある。
っと、邪魔しちゃ悪いかな。
「それじゃあ、簪さん。僕はもう行くね」
「うん、なんのお構いもできなくてごめんね」
「気にしないで。それじゃ、またね」
手を振って整備室を出て行く。それにしても、自分でISを作るか……僕も、整備くらいはできたほうがいいかな。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
夜、クラリッサに電話をかける。
1コール目で通話がつながった。
「こんばんは、クラリッサ。あ、そっちはまだお昼だったっけ?」
『構わないよ。また電話してくれてありがとう』
「クラリッサが寂しがると思って」
『なっ!私はそんな……』
「ふふ、冗談だよ。僕が話したかっただけ」
『そうか。どうだ?学園の暮らしは慣れたか?』
「うん。おかげさまで」
『私は何もしていないぞ?』
「こうしてお話しできるだけで、助かってる。僕のこと子供扱いしないし……」
『ん?何か言ったか?』
「なんでもないよ」
『そうか。……将冴、少し伝えなければならないことがあるんだ』
「ん?何?」
『しばらく忙しくなりそうでな。電話できる時間が取れないんだ』
「そうなんだ……もしかして、ラウラの転入で?」
『ああ、いろいろと手続きが面倒でな。早めに転入させたいという上の指示で、シュバルツェ・ハーゼはてんてこ舞いなんだ』
「そうだったんだ。まぁ、ラウラは隊長だし、軍の方も問題なく事を進めたいよね」
『そういうことだな……本当に済まない』
「しょうがないよ。クラリッサは副隊長で余計に忙しいよね。頑張って、応援してる」
『ああ……ありがとう。落ち着いたら、必ず連絡する』
「うん、待ってる」
『それじゃ、仕事に戻るよ。またね』
「またね」
通話を切った携帯を手に持ったままベッドに倒れこむ。クラリッサと話しできなくなるのはちょっと寂しいな。ほぼ毎日のように話してたからなぁ……。
通話料すごいことになってそう……。
と、その時携帯が震える。
画面を見ると、知らない電話番号だった。間違い電話かな?通話ボタンを押す。
「はい、もしもし。どちら様でしょうか?」
『……』
無言。いたずらかな?
「もしもし?」
『……』
不気味だなぁ。もう切ろうかな。
『……対抗戦』
「え!?」
ボソッと小さな音が聞こえる。
『対抗戦、襲撃に注意しろ』
ブツッ
今のは……女の人の声だった。どこかで聞いたことある気がする声。襲撃に注意しろって……どういうことなんだろう?
ーーーーーー
ーーーー
ーー
携帯を投げ捨て、ソファにどかっと座り込んだ。あー、なんか妙に疲れた。
「あらオータム。彼にもう伝えたの?」
「伝えたよ。ったく、私は電話嫌いなんだよ。なんだか気恥ずかしくなるから」
「うん、知ってた」
「確信犯かよ。くそっ……おーい、エム。そこの酒取ってくれよ」
ガキみたいに小さいエムに向かって命令する。酒でも呑まねえとやってらんねーよ。
「自分で取れ。ガキじゃあるまいし」
「テメェには言われたくねえよ!」
「ほらほら、喧嘩しない!」
ったく、めんどくせぇな……。
仕方ないから自分でテーブルの上に置いてあった酒の瓶を取り、そのまま酒を喉に流し込んだ。
「……プハッ!やっぱり最初の一口は美味いなぁ」
「飲みすぎないでね。……でも、大丈夫かしらね。将冴君」
「知らねぇよ。『ダイモン』の連中に襲われるのはわかってんだ。それに、あいつは強いんだろ?」
「束博士が言うにはね」
「なら問題ねぇだろ。今は心配するより酒だ酒」
「……だらしないな」
「いちいちウルセェガキだな。一発ぶん殴ってやろうか?あ?」
「やめなさいって。明日も早いんだから、さっさと休みなさい」
スコールはそう言って部屋を出ていった。なんだよ、付き合ってくれねぇのかよ。
「私も寝る」
「おう、ガキは寝ろ寝ろ」
エムは私を無視して部屋を出て行く。全く、本当に愛想がねぇな……。
「さて……将冴はどう対処するかね」
もう一口酒を流し込んで、私は寝室へ向かった。
次はようやくクラス対抗戦!長かった……本当に……。
ここが終われば、シャル、ラウラの転入ですね。個人的に、書くの楽しみです。
次からオリジナル色が濃くなるかも。