くそぅ、クラリッサはまだか!
アリーナの中は静まり返った。みんな何が起こっているのかわかっていないんだ。でも、そんなみんなを現実に引き戻したのは、アリーナの入り口に隔壁が下された音だった。
「え、隔壁が……下りた?」
入り口近くにいた僕は、目の前で隔壁が下されたのを直視した。
そして、次に起こったのは爆発音だった。それは一夏と鈴が試合をしている場所からだ。突然現れた球体が無差別にビームを連射し始めた。
一夏達には当たっていないけど、競技場と観客席とを隔てて張られているシールドにビームが当たる。まずい、あの球体は天井のシールドを破って侵入してきた。なら、観客席に張られたシールドを破ることができる。
僕がそれに気づいた時、観客席はパニックに陥った。
生徒が全員、出入り口に押し寄せた。
「皆さん、落ち着いてくださいまし!」
「今は隔壁が……うわっ!」
入り口近くにいた僕とセシリアさんは落ち着くように呼びかけるが、誰も耳を傾けない。一気に押し寄せた人たちが、僕の車椅子を押しのける。
「将冴さん!?」
「やなしー!」
地面に倒れた僕に、押し寄せた人たちは気づいてない。みんな早く出たい一心なんだ。結果、僕の義手を踏んで行かれる。
「があっ!?」
痛覚も通っているから、踏まれた痛みが僕を襲う。
踏まれた義手を見ると、どちらもあらぬ方向に折れている。
でも、このパニックは収まらない。どうすれば……。
ガァン!
「落ち着きなさい!」
何かを思いっきり殴った音と、セシリアさんの怒号が響いた。
その音で、生徒がそちらを振り向く。
そこにはブルー・ティアーズを纏ったセシリアさんが床を殴り割っていた。
「助かりたい気持ちはわかりますが、人を足蹴にしてまで助かろうなんて愚者のすることですわ!」
その言葉でみんな冷静になったのか、地面に倒れている僕に気づいたみたいだ。
「やなしー、大丈夫?」
布仏さんがトテトテと近づいて抱き起こしてくれる。
「うん、大丈夫」
このままというわけにはいかない。腕を拡張領域にしまい、義足をつけ立ち上がる。
「みんな、少し避けてくれるかな?」
入り口付近に固まっている人たちにそう伝えると、みんな黙って避ける。
僕はテムジンを纏い、セイバーで隔壁を切り裂いた。
「落ち着いてアリーナから出て!前の人を押さないように!」
呼びかけながら、生徒たちを避難させる。
他の隔壁は……すでにセシリアさんが向かっている。
あの球体は……一夏と鈴が足止めしている。でも、球体の攻撃は全方位。一夏と鈴を同時に攻撃している。それに、二人ともさっきまで試合をしていたからシールドエネルギーが少ないはず。誰かが加勢に行かなきゃ……。
僕は通信をつなげる。つなげたのは管制室、織斑先生がいるはずだ。
『織斑だ』
「柳川です。織斑先生、お願いがあるんです」
『なんだ?』
「観客席のシールドを一瞬だけ解除してください。一夏と鈴の援護に行きます」
『駄目だ、危険すぎる!今教員が準備をしてこちらに向かっているから、それまで……』
「それまで一夏と鈴が持ちません!お願いします!」
織斑先生は少し間を空け、わかったと言った。
『10秒後にシールドを解除する。カウント、10、9……』
僕はシールドの近くで待機する。いつでも瞬時加速できるように、スラスターにエネルギーをためる。
『5、4、3、2……シールド解除!』
シールドが解除された瞬間に加速。競技場に入り、そのまま球体に向かっていく。
「このぉ!」
エネルギー弾を連射。そのまま接近し、セイバーで斬りかかる。
しかし、球体の反応が早かった。横一列に無数開いた穴の一つからビームが放たれる。
「くっ!?」
体を捻ってかわすが、避けきれず脇腹を掠める。
それだけでシールドエネルギーが大幅に削られる。
「反応速度おかしいでしょ……」
「将冴!大丈夫か?」
「うん。2人は?」
「まだなんとか大丈夫よ。でも、私も一夏もシールドエネルギーがそんなにないわ」
やっぱりか……さっきまで試合していたんだ。しょうがない。
この球体、わかったのは全方位に同時攻撃できること。恐ろしいくらいの反応速度。高出力ビーム兵器。あとは……V.コンバータ。
お父さんとお母さんの研究が、なぜこの球体に……。
いや、今考えるべきはそれじゃない。
どうやって倒すかだ。
「3人で同時攻撃しよう。囲むように立ち回って!」
「わかった!」
「了解!」
球体を囲み、一斉に接近する。
さぁ、どう反応する?
《……ミツケタ》
「!?今のは?」
声?誰の?なんの?
「将冴!危ない!」
鈴の声がした瞬間、目の前にビームが迫っていた。
「将冴ぉー!!」
次回に続く。
ふぇぇ、書けねぇよ……