ここからほのぼのを心がけていきます。
6話
クラリッサさんとお話しした次の日、朝早くに扉をノックする音で起きた。
「んん……はい?どちら様ですか?」
もちろんのこと、体を動かすことができない僕は少し声を張って顔を扉の方に向けた。
ガラッと扉が開き、入ってきたのはクラリッサさんと同じ軍服らしきものを着た銀髪で左目に黒い眼帯をつけた僕と同じくらいの歳の女の子が入ってきた。
『失礼する』
ドイツ語で話された。ちんぷんかんぷんだ。
「えっと、君は?」
『ドイツ軍所属、ラウラ・ボーデヴィッヒだ』
駄目だ、なんとかラウラっていうのが名前なんだと感覚的にわかるくらいだ。
んー、どうしたものか……
「えっと。きゃ、キャンユースピークジャパニーズ?」
ドイツ語はわからないけどから、英語で聞いてみる。これを英語と言っていいのかわからないが……
するとラウラさんはポンと手を叩き、一回咳払いする。
「すまない。お前は日本人だったな。読み書きは難しいが、話すことはできるぞ」
「よかった。何を言ってるかわからなかったから」
「すっかり失念してた、謝罪する」
「いいよ。母国語は大切だから」
そう言いながら、椅子に座るよう促そうとしたが……。
「あっ……」
「ん?どうした」
手がなくて、座ってと勧めることができなかった。いや、言葉で言えば済む話か。
「なんでもないよ。どうぞ座って」
「うむ、失礼する」
ラウラさんは椅子に腰掛ける。
立ち居振る舞いがピシッとしていてかっこいい。
「それで、ラウラさんはどうして僕のところに?」
「ああ、これを渡しにきたんだ」
ラウラさんはポケットから、ペンダントを取り出した。見覚えのあるそれに、僕はすぐにピンときた。
「これ、お母さんの……」
「私はクラリッサ中尉と同じく、あの作戦に参加していた。その時、お前の両親を看取った。そのペンダントを渡してくれと、お前の母親に頼まれた」
「そっか……」
遺品なんかは全部軍とかに回収されたと思っていたから、これは嬉しい。手がないから受け取れない。ペンダントの中身を見たかったが……しょうがない。
「ラウラさん。お手数なんだけど、ペンダントの中身を見せてくれないかな。僕、開けれないから」
「ああ」
ラウラさんはゆっくり壊さないようにペンダントを開いた。中には家族3人で撮った写真が収められていた。蓋の裏には、家族の名前。やばっ、ちょっとウルっときた。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとうラウラさん。そこの棚に置いてくれるかな?」
「ああ」
コトっとペンダントを棚に置いたラウラさんは時計を見た。
「おっと、そろそろ訓練開始の時間だ。すまないが、これで失礼する」
「うん。忙しいときに来てくれてありがとう。よければまた来てください」
ああ、と答えたラウラさんは少し駆け足で部屋を出て行った。
さて、僕はもう一眠りするとしようかな。
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「そこまで!」
目の前で訓練をする少女達にそう声をかけた。
今日は全員揃っていた。クラリッサは、まだ迷いがあるものの区切りはつけたというところだろう。
「少し早いが、今日はこれで終了だ。各自、しっかり体を休めること。解散」
『イエス、マム!』
敬礼とともに全員からそう帰ってくる。
どうも、こういうのは慣れないな。
第一訓練場を出ようとすると、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえた。
息を切らしながら近づいてきたのは、クラリッサだった。
「織斑教官。昨日は、ありがとうございました」
「その様子だと、将冴と会ってきたのだな」
「はい。なんとか自分の気持ちに区切りはつけれたと思います」
「そうか……将冴はどんな様子だった?」
柳川家には、本当に世話になっている。将冴はもう一人の弟のようなものだ。話では、両手足を失ったと……もしかしたら、あいつの技術が必要になるかもしれないな。頼むのは癪だが。
「強がりかはわからないのですが……泣かないで、全てを受け入れていました。彼は強いです」
「ふむ……わかった。私も、これから会いに行ってみよう」
「あの、織斑教官。彼は……今後どうなるのでしょうか?」
今後か……昨日、日本の政府から連絡が来たな。どうも、柳川家を誘拐した組織の仲間と思われるものが日本にも潜んでいたと。倉持技研の研究員だった玲二さんと有香さん。二人の研究を盗もうとしていたらしく、倉持技研の二人の研究室と、自宅が荒らされていたという。
二人の研究は、日本でのIS技術を飛躍的に伸ばすものだと政府は言っていた。しかし、二人は亡くなり、残ったのは息子の将冴。政府の決定は、将冴に対し重要人保護プログラムを適用させるということだった。
これは部外秘なのだが……まぁ、こいつなら大丈夫だろう。
「おそらく、日本に戻ったら施設を渡り歩くことになるだろう。重要人保護プログラムの適用が決まっている。無国籍になり、名前を変え、場所を変えて生きていくことになる」
「……っ!そう、ですか……」
拳を握り締めるクラリッサに、私は嬉しさを感じた。彼に対する政府の対応に、怒りを感じているのだろう。
「クラリッサ、将冴と仲良くしてやってくれ」
「……はい」
クラリッサは更衣室へ駆けて行った。
さて、私も将冴に会う準備をしよう。
千冬さんも結構好きです。
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