IS 〜偽りの腕に抱くもの〜【本編完結】   作:sha-yu

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リアルが忙しい……しばらく不定期更新になってしまうかもしれません。なるべく更新できないときは前書きか後書きで報告いたします。

さて、今回はタッグトーナメント決勝への導入。
楽しんでいいただけたらと思います。


75話

タッグトーナメント3日目の朝。昨日のように束さんが隣にいるということはなく、先に起きていたクラリッサが自分のベッドの上で櫛で髪をとかしていた。

 

 

「起きたか、将冴。体調はどうだ?」

 

「ふぁ〜……。うん、問題ないよ」

 

 

大きく欠伸をして答える。クラリッサとこの部屋で過ごすのも慣れてきた。

 

車椅子を出すのも面倒なので義足をつけて洗面所まで行き顔を洗う。

 

鏡で自分の顔を見ると……少し疲れてる。そんな顔をしている。

 

 

「はぁ……」

 

 

シャルルのこととか、箒の特訓とかあったし、知らぬ間に疲れが溜まっていたみたいだ。

 

でも、トーナメントが終われば少し余裕ができるはずだし、頑張ろう。

 

 

「よし」

 

 

タオルで顔を拭きながら洗面所を出ると、すでにスーツに着替えたクラリッサがカップを二つ持って立っていた。

 

 

「コーヒー飲むだろう?ミルクと砂糖は入っているぞ」

 

「ありがとう、クラリッサ」

 

 

コーヒーを受け取り一口飲む。甘めのコーヒーが美味しい。

 

ほっと一息ついていると、クラリッサがコーヒーを口にしながらこちらをじっと見ている。

 

 

「クラリッサ?僕の顔に何かついてる?」

 

「いや、少し疲れた顔をしているなと思ってな。本当に体調は大丈夫なのか?」

 

「うん。それは大丈夫だよ。試合にも問題はない。まぁ、まだ試合するとは決まってないけどね」

 

「そうか……将冴、あまり抱え込まず、私にも相談してくれ。織斑先生から聞いたが、デュノアの件に首を突っ込んでいるのだろう?」

 

「まぁ、ね……でも、僕が直接動いてるわけじゃないから、そこまででもないよ」

 

 

ほとんど束さんに任せちゃったから……それだけが心苦しい。

 

 

「……私にも頼ってくれ。将冴のためなら、なんでも……」

 

「僕はいっぱいクラリッサに頼ってるよ。申し訳ないくらいにね」

 

「将冴……」

 

「朝ご飯食べに行こう。もう今日の試合のこと決まってるかもしれないから、織斑先生のところにも」

 

 

クラリッサにも、束さんにも、千冬さんにも僕は頼りっぱなしだ。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

クラリッサに車椅子を押してもらい食堂へ行くと、丁度良く織斑先生がいた。

 

織斑先生は簪さんと何か話している。

 

 

「……そうか、わかった。報告ご苦労」

 

「いえ。……あ、将冴君」

 

 

簪さんが僕に気づき、織斑先生もこちらを見る。

なんの話をしていたんだろう?

 

 

「簪さん、織斑先生。おはようございます」

 

「おはようございます」

 

「将冴にクラリッサか。丁度良かった、今日の試合についてなんだが、将冴とラウラの個人戦になりそうだ」

 

 

個人戦に……今簪さんと織斑先生が話をしていたことが関係しているのかな。

 

 

「簪さんはそれでいいの?」

 

「うん。実は私の打鉄弐式にシステムエラーが出ちゃって……今日のトーナメントは出場できそうにないの」

 

「そうだったんだ。弐式の方は大丈夫?」

 

「調整すれば大丈夫。姉さんにも手伝ってもらうから」

 

 

このタイミングでエラーとは、良かったのか悪かったのか……。

 

 

「そういうわけだ。1年の決勝は将冴とラウラの一騎打ち。異論はないな?」

 

「はい。ありがとうございます、織斑先生」

 

「礼をされることはしていない。しっかり準備して挑め」

 

 

織斑先生はそう言って食堂から立ち去って行った。

ラウラと真っ向勝負……負けられないな。

 

 

「将冴君と戦ってみたかったけど……今回は見送る」

 

 

簪さんが少し悔しそうに呟いた。僕も日本代表候補生と手合わせしてみたかったから、残念でもある。

 

 

「今度、模擬戦しようよ。一夏達もいるから」

 

「うん、是非。それじゃ、私は弐式の調整に行ってくるからこれで」

 

「うん。また」

 

 

朝から調整か……あまり無理しすぎて倒れないといいけど、僕が言えたことじゃないか……。

 

 

「ご飯食べようか、クラリッサ」

 

「ああ。ときに将冴、ラウラ隊長と戦う時に……」

 

「絶対に嫌」

 

「まだ全部言ってないのに……」

 

 

どうせフェイ・イェンで戦ってくれとかそんなだろう。絶対にフェイ・イェンは使わない。

 

……まぁ、あのモードを使わなければいけないかもしれないけど、ほぼ確実にフェイ・イェンは使わないから!

 

 

「将冴、クラリッサ。おはよう」

 

 

後ろから声をかけられたので振り返ると、ラウラが立っていた。表情を見ただけで嬉しいそうな雰囲気を醸し出しているのがわかる。

 

 

「おはよう、ラウラ」

 

「隊長、おはようございます」

 

「うむ。将冴、さっき織斑きょ……先生と会って聞いたぞ。お前と一対一で戦えると」

 

「うん、簪さんがマシントラブルで出れなくなっちゃったからね。箒も、体調不良で休んでるから」

 

「箒か……昨日の試合の映像を見たが、ずいぶん強くなったではないか。将冴が直接鍛えたのなら、当然という気もするがな」

 

 

僕が鍛えたからというよりも、箒の力というのが正しいと思うかな。正直、そんなに大層なことは教えていない。瞬時加速くらいだ、しっかり教えたのは。

 

 

「まぁ、今日は楽しみにしているぞ。お互い本気でな」

 

「うん、本気で」

 

 

そう言葉を交わし、僕たちは朝食にありつくために注文をした。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

朝食を食べて数時間後、僕はピットでテムジンを纏い動きを確認していた。

 

僕の他にクラリッサ、一夏、セシリアさん、鈴、シャルルが来てくれた。箒はまだ保健室にいるらしい。

 

 

「将冴、俺とシャルルに勝ったんだから、負けたら承知しねぇぞ」

 

「一夏に勝ったのは箒だけどね」

 

「うっ……」

 

 

みんながカラカラと笑う。

 

一度ISを戻し、義足で地面に立つ。

 

 

「でも、一夏の言う通りだよ。僕にあんなことしてまで勝ったんだから、絶対に勝ってね」

 

「わかった、シャルル」

 

「私達の時も、卑怯な手を使って勝ったんだから、負けんじゃないわよ!」

 

「将冴さん、頑張ってくださいまし」

 

「うん、頑張ってくるよ。セシリアさん、鈴」

 

 

みんなに激励される。これほど心強いものはない。

 

 

『これより、1年の決勝を始めます。選手はアリーナへ』

 

 

山田先生のアナウンス。

時間か……

 

 

「それじゃ、行ってくるね」

 

「将冴!」

 

 

アリーナに出ようとすると、クラリッサが僕を呼び止める。

 

 

「なに……むぐっ!?」

 

 

唇に、柔らかい感触。1年ぶりの感触……。

 

 

「……っはぁ……。無理はするなよ」

 

「……わかった。行ってくるね、クラリッサ」

 

「ああ」

 

 

みんなに見られた恥ずかしさから、僕はテムジンを纏い足早にアリーナに飛び出した。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

アリーナに飛び出していく将冴を見て、私……クラリッサの胸中は不安にかられていた。

 

嫌な予感がする。何か、良くないことが……

 

 

「は、ハルフォーフ先生……」

 

 

一夏が話しかけてくる。見ると、一夏やここにいる全員が顔を真っ赤にしている。

 

 

「その……先生と生徒で、アレは……」

 

「ん?何かおかしいか?」

 

「え、いや、その……」

 

「なんていうかさ……小学からの知り合いが、すごい大人になってしまったっていうか……」

 

 

一夏と凰が気まずそうに顔を背ける。そういえば、この2人は将冴と付き合いが長かったか。

 

 

「先生と生徒の禁断の恋……ああ、背徳な感じがしますわ」

 

「はは……最初に言ってた将冴の嫁っていうのは、本当だったのかな……」

 

 

そこで気がつく。

全く気にしていなかったが、生徒の目の前で将冴に……

 

 

「……忘れてくれ」

 

「「「「ちょっと無理です」」」」




久々にクラリッサがやらかす。

明日は更新できますので、お楽しみください。
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