IS 〜偽りの腕に抱くもの〜【本編完結】   作:sha-yu

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本日二つ目。

今回視点変更が多くなります。ご了承いただけたらと思います。


78話

将冴の動きを予想し、AICを展開した。あの速度だ。反応などできない。そう思っていた。

 

だが、将冴は瞬時加速を直前で止め、AICの効力圏外で止まった。

 

瞬時加速をキャンセルするなんて、聞いたこともない。そこからは、私の意識も追いつけなかった。気がついたら将冴が背後にいた。

 

レールカノンとAICの連発で、エネルギーを酷使しすぎた。この一撃が決まれば、私は負ける。

 

1年ぶりに楽しい試合ができた。

将冴の2勝リードか……取り戻すのは大変そうだ……。

 

 

『力が欲しいか?』

 

 

声?なんの声だ……

 

 

『何者にも負けぬ力が欲しいか?」

 

 

お前は一体……

 

 

『全てをねじ伏せる力が欲しいか?』

 

 

いらない……私は自分で強くなりたいんだ……

 

 

『だが、心の奥では望んでいる。力を』

 

 

望んでないそんなもの……

 

 

『私が与えてやろう。新たな力を』

 

 

やめろ……

 

 

『さぁ、受け取れ』

 

 

ヤメロォ!

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

謎のエネルギーに吹き飛ばされて、壁に激突した。今日二回目だ。

 

 

「ぐっ、がはっ!?」

 

 

激突した衝撃と、さっきの急停止やターンで体に蓄積していたダメージが限界を迎えたようだ。さっきみたいに咳に混じって血が出たわけじゃなく、本当に吐血した。

 

フルスキンのISだから、頭の部分の内側が血で真っ赤になってるだろう。

 

それよりも、さっきのエネルギーは一体?

 

 

「ラウラ!」

 

 

ラウラのISから黒い何かが出てきている。

なんなんだ、あれ……

 

黒い何かは、ラウラをISごと包み込み、何かを形取っていく。

 

あれは……

 

 

「千冬……さん?」

 

 

モンドグロッソで見た、千冬さんの姿をしていた。

 

なんだよ。なんでそんなものに……

 

 

『将冴、聞こえるか!将冴!」

 

 

千冬さんの声。管制室からか?

 

 

「千冬さん、あれは一体……」

 

『……憶測だが、あれはVT(ヴァルキリートレース)システムだ。モンドグロッソの部門受賞者の動き名前のトレースし、操縦者に反映するシステム。アラスカ条約で使用を禁止されている』

 

「では、あれは千冬さんをトレースしたものだ、と?」

 

『ああ。おそらく、ドイツで組み込まれて、ラウラが負けそうになったときに発動するようになっていたんだろう。将冴、今すぐ離脱しろ。今教員と専用機持ちであれを……』

 

「……さない……」

 

『将冴?』

 

「ゆる……さない……」

 

 

僕とラウラの試合を邪魔して、千冬さんの強さを冒涜し、束さんの発明であるISを汚す……。

 

ドイツで組み込まれたということは、軍が仕組んだことか。

 

もう、僕も我慢ならない。政府やら企業やら軍やらが好き放題やって、シャルルやラウラが巻き添えをくうんじゃないか。

 

シャルルは普通の女の子として過ごしたかった。ラウラは僕との試合を楽しみにしていた……

 

大人のゴタゴタに巻き込まれるのはもうたくさんだ。

 

 

『将冴、どうしたんだ?』

 

「許してたまるか……」

 

《感情値、規定指数に達しました。EVL(イヴィル)バインダー起動。強制フォームチェンジ『スペシネフ』》

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「あれは……」

 

 

管制室から、私……千冬は山田先生とアリーナの様子を見ていた。

 

ラウラがVTシステムに囚われ、将冴は……

 

 

「スペシネフ……ドイツで何度か見たが、使えないはずじゃ……」

 

「将冴君のISにあんなものが……なんだか怖いです」

 

 

山田先生は将冴の姿を見て怯えている。

なんなんだ、あのフォームは。私でさえ、恐ろしいと感じてしまう……。

 

怖気付いている場合ではないか……

 

 

「山田先生、観客の避難誘導を。私は放送で呼びかける。誘導が終わり次第、ISで事態の収拾を」

 

「わ、わかりました!」

 

 

山田先生は管制室から出て行く。

 

それと同時に、私は避難のアナウンスを入れる。

 

幸いにも、以前の無人機襲撃のように、隔壁が降りているわけではない。避難は問題ないだろう。

 

再びアリーナを見ると、ピットからISが一つ飛び出していく。あれは、白式?一夏か……あの馬鹿者が。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

ピットのモニターから将冴とラウラ隊長の様子を見ていた私……クラリッサは、胸が苦しくなった。

 

試合前からしていた嫌な予感はこれだったんだ。

 

ラウラ隊長はアラスカ条約で禁止されているVTシステム。将冴は禍々しいまでのプレッシャーを放つスペシネフ。

 

今の私では、どうにもすることができない……

 

 

「あれは……千冬姉?なんなんだよ、あんなの、千冬姉の模倣じゃねぇか!」

 

「VTシステム……条約で禁止されているシステムですわ。まさか、ラウラさんの機体に組み込まれていたなんて……」

 

「どうすんのよこれ!将冴は試合でエネルギーをかなり減らしてるし、トレースしてるのが千冬さんなら、あっという間に……」

 

「でも、将冴のあのフォーム……何か普通と違う。もしかしたら……」

 

 

確かに普通とは違う……怒りを体現したかのような雰囲気を醸し出している。危険だ。私の中でずっと警鐘がなっている。

 

 

「あんなもの……千冬姉じゃない!」

 

 

一夏がISを纏った。

 

くっ、今は不用意に近づいてはいけない!

 

 

「一夏、待て!今の二人に近づくな!」

 

「止めないでくれ、ハルフォーフ先生!あれは、俺が止めないと!」

 

 

そう言ってピットから飛び出して行ってしまった。

くそっ、教員の言うことを聞けというのに……!

 

 

「お前たち3人は待機だ。織斑先生に状況を確認する」

 

 

将冴……お前はどうしてしまったんだ……。

 




スペシネフ、怒りの覚醒。

暴走するラウラ。

突撃する一夏。

胸を痛めるクラリッサ。

困惑する千冬。

次回、死神。

※なんとなく次回予告風にしたかった。
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